匂いを嗅いでいる時の犬の心理という研究
今さら言うまでもなく、犬の嗅覚がたいへん優れていることは皆が知っています。そのことを証明したり、さらに何かに役立てるための研究も数多く行われ発表されています。けれども、犬が匂いを嗅いでいる時に何を考えているかなどの心理面での研究は今のところとても少ないのだそうです。
先ごろドイツの2人の研究者によって「犬が何かの匂いを追跡している時、匂いの元になっているものが何なのかを思い描いたり、自分は何を見つけようとしているのかを予測したりしているのだろうか」という研究が行われました。
興味深い実験の様子と結果をご紹介します。
実験に参加した犬たち
匂いを辿っている時の犬の心理を探る実験に参加したのは48匹の犬でした。そのうちの25匹は警察犬または探知救助犬として特に匂いを辿っていく高度な訓練を経験のある犬で、残りの23匹はそのような経験のない普通の家庭犬でした。
実験の前準備として、それぞれの犬が好きなおもちゃが2種類ずつ用意され、実験に使用されました。
実験の概要
実験に使われたのは『期待違反法』と呼ばれる手法です。赤ちゃんの発達心理などを研究する時など「期待と違うことが起こった時の反応」を見るために使われます。
それぞれの犬は各4回の実験セッションを行います。
あらかじめ調べられたお気に入りのおもちゃのうちの1つを使って匂いのルートを作り、犬はその匂いを辿って行って、その先にあるおもちゃを探します。
期待違反法を使った実験とは、犬のお気に入りのおもちゃAで匂いのルートを作り、その先におもちゃAではなく別のおもちゃBを置いて犬の反応を分析するというものです。
4回のセッションの最後には匂いと同じおもちゃが見つかるというパターンが設定され、犬は安心してセッションを終えることができます。
犬たちの反応はどんな風だった?
おもちゃAの匂いを辿っていったはずなのに、おもちゃBが見つかった時、犬たちははっきりと驚いた様子を示したそうです。中には「匂いがしていたんだからおもちゃAがあるはず」とばかりに、また匂いを嗅いで探索を始めた犬もいたそうです。
過去に高度な訓練を受けたことのある犬たちは、匂いを辿っておもちゃを探し出すこと自体は素早く上手にできましたが、その後の違うおもちゃが見つかった時の反応は家庭犬との間に違いはなかったとのことです。
これらの反応から、犬は何かの匂いを嗅いでいる時に、その匂いの元になっているものが何であるのかを頭の中でイメージできていると結論付けがされました。
シンプルな実験ではありますが、これは犬がごく近い未来のことを予測しながら行動していることを示します。このような観察や分析に基づいて統計を取っていくことで、働く犬の福祉や犬の訓練理論などの向上に役立ち、犬への理解がより深まっていきます。
まとめ
ドイツの研究者による犬の予測に関する研究で、犬は自分が嗅いでいる匂いがどんなものであるのか、頭の中で思い描いて予測しているらしいということがわかりました。
例えば、災害救助犬などは探し当てた人間の命が助かった場合はさらにモチベーションが上がると聞いたことがあります。これなども犬が匂いを嗅ぎながら見つかるものを予測している例なのかもしれませんね。
実際に匂いを嗅いでいる時の犬の脳の中で何が起こっているのかをもっと詳しく知るためには、脳機能のイメージング技術などを使う必要があるそうですが、犬に負担のない実験で犬の心理がわかったこの研究の意義は大きいと言えます。