『わんちゃん言葉』は犬にどんな影響を与えるかという研究
みなさんは自分の犬や、よその犬に話しかける時にいつもよりもちょっと高い声で、普段よりもおおげさな表現になってしまうことはありませんか?「わ〜!ボール持ってきてえらいでしゅね〜!」とか「ココちゃんはいい子いい子!かわいいね〜」という感じです。
こんな風になってしまうのは諸外国でも同じようで、イギリスのヨーク大学の研究チームがこのような感じで犬に話しかけることが犬にどんな影響を与えているかという実験を行い発表しました。
人間の赤ちゃんに同じような感じで話しかけるのを『赤ちゃん言葉』と呼ぶので、ここでは便宜上『わんちゃん言葉』という表現を使います。
さあ、当の犬たちはわんちゃん言葉をどう思っているのでしょうか?
『わんちゃん言葉』は『赤ちゃん言葉』と同じような効果がある?
今回のヨーク大学の研究の前にも、犬に高いピッチの声やおおげさな表現で話しかけることについての研究は発表されているのだそうです。
多くの人は人間の赤ちゃんに話しかける時に、高い声や普通以上に感情を込めた表現の赤ちゃん言葉を使います。高い声やおおげさな表現は赤ちゃんにとって聞き取りやすいため、赤ちゃんの注意を引きつけて早く言葉を発するようになり、そのように話しかける大人と赤ちゃんの結びつきが強くなるという研究結果が発表されています。
犬に関しては、以前の研究では話しかける対象が子犬の場合は人間の赤ちゃんと同じように人間との関係に良い影響を与えるが、成犬の場合には普通の声で普通に話しかけた場合と大差がないとされていました。
今回、ヨーク大学の研究者たちは成犬を対象にして、以前とは違う実験方法を使って、わんちゃん言葉は成犬にとって本当に特に有益なことはないのかをリサーチしました。
わんちゃん言葉と普通の話し方を使っての実験
実験に参加したのは37匹の家庭犬たちです。メスが17匹、オスが20匹。年齢は2歳〜10歳で、犬種は様々です。
実験の方法は、1匹の犬の1人の人間が同じ部屋に入り、人間が犬に向かって話しかけて犬の反応やボディランゲージを観察するというものです。人間と犬は実験以前にはみんな面識がありません。
まず最初の人は高い声でおおげさな感じのわんちゃん言葉を使って、犬に関連する言葉を含む話題を話しかけます。(例「いい子ね、いいワンコね〜」「お散歩に行こうか〜」)
そして次に別の人が同じ犬に向かって、普通の話し方で犬に関係のない話題を話しかけます。(例「昨夜は映画を観に行きました」)
また、別の組み合わせ=「わんちゃん言葉で犬に関連する言葉無し」「普通の話し方で犬に関連する言葉」で話しかけた時の反応も観察されました。
その後で、犬たちは話しかけた人のうち、どちらでも好きな方に近づくことが許されます。
実験の結果は?
さて、気になる実験結果です。
犬たちが一番強く反応して、明らかに「好きだ」という様子で近づいたのは、わんちゃん言葉で犬に関連する言葉で話しかけられた時だったそうです。
そして予想がつくかと思いますが、一番人気がなかったのが、普通の話し方で犬に関係のない話題で話しかけられた時だったとのことです。
人間の赤ちゃんと同様に、成犬も高いピッチの声でおおげさな表現の話し方に反応して、話しかけた人との結びつきが強くなるという傾向が確認できたようです。
「散歩」「ごはん」「かわいい」などのキーワードに犬が敏感に反応するという経験のある方は多いことでしょう。
わんちゃん言葉は犬の注意を引きやすく、そこに犬が気になるキーワードがあれば、犬は「この人は自分のために何かおもしろそうなことを話しかけてくれている」と認識するのかもしれませんね。
まとめ
イギリスの大学の研究から、犬は高いピッチの声やおおげさな表現の『わんちゃん言葉』で話しかけられると強く反応し、話しかけた人間との結びつきが強くなるという傾向があると発表されました。
以前は赤ちゃんや犬に、子供っぽいはしゃいだ感じで話しかけることは好ましくないという見方があったのですが、実際には反対だったようですね。(もちろん、見知らぬ人や子供が大きな声でキャーッと犬に駆け寄って来るというような限度を超えた場合は話が別です。)
研究者たちは、この結果が家庭犬と飼い主はもちろんのこと、獣医学や保護施設の現場で働く人々の役に立つことを望むと述べています。
私たちは、自宅で愛犬に話しかける時ついつい『わんちゃん言葉』で話しかけてしまいがちですが、それが良いことだという研究結果は嬉しいですね。
《参考》
https://www.sciencedaily.com/releases/2018/03/180306115803.htm