犬の認知機能を高めるためのコンピューターゲーム
スマホやタブレットで犬や猫が楽しむためのアプリというのは既に人気になっていますね。ダウンロードして持っているという方も多いかと思います。
この度、オーストリア、ハンガリー、フランスの研究者がチームを組んで、犬の脳や精神に刺激を与えて認知機能を高めるためのコンピューターを使ったゲームやパズルを開発し、その研究結果を発表しました。
特にシニア犬の生活の改善に役立つと言われるこの研究をご紹介します。
人間のシニア認知機能研究を犬に応用!
犬が年を取るにつれて、外に出て他の犬や飼い主以外の人間と触れ合う機会が少なってくるのは残念ながら珍しくありません。犬自身の体調が理由という場合もありますが、飼い主の方が犬が若いころほど散歩や犬の遊びに熱心でなくなったり、年をとったら家のなかで静かに過ごす方が良かろうと思い込んでいるという場合もあります。
しかし人間と同じように、犬にとって家の中だけで刺激のない生活を送ることは老化を早くさせ脳の認知機能を衰えさせます。頭を使い精神的な刺激を得ることが認知機能に良い影響を及ぼすことは、数々の研究で明らかになっています。
また人間のための研究で、高齢による軽度の認知障害がiPadを使った記憶ゲームによる訓練で
改善したという報告があり、それを犬にも応用してみようというのがこの研究です。
研究のためのセッションの概要
セッションに参加したのは265匹の家庭犬と20匹の狼でした。
この研究のためのゲームプログラムは市販されているペット用アプリよりも少し複雑なため、犬たちはまず最初にスクリーンにタッチする訓練から始められました。
最初はスクリーンにタッチするだけ、次には指示された場所をタッチ、その次には示された画像と同じものを選択する、という具合です。正しい行動ができればスクリーンに取り付けられている装置からトリーツが落ちてきて、犬は正解すればトリーツが出てくるという関連性を学んでいきます。
この基本訓練を終えると、犬たちはより複雑な問題を解くように導かれます。タッチスクリーンが採用されたのは、体が動きにくくなったシニア犬でも楽に操作ができるようにとの配慮です。
飼い主たちが気づいた犬たちの変化
研究者たちは、この研究をさらに続けて、ストレスややる気の指標を示すホルモンレベルの測定などを考慮していますが、セッションに参加した犬たちの飼い主が既に犬たちの変化を報告しています。
ほとんどの飼い主は、セッションに参加するため研究室に通ってくることを犬たちが喜んでいること、普段の生活の中でも良い変化が見られるようになったと述べています。
訓練やセッションを受けた後の犬たちは、家に帰ってからたくさん運動をした後のように深い眠りについたそうです。脳をフルに使ったことで犬が心地よく疲れたことが伺えます。
精神的な刺激が犬にとってハッピーなものであることを目の当たりにした飼い主たちは、以前よりも犬と一緒に何かをする時間を増やすようになり、以前よりも犬との絆が強くなったと報告しています。
年をとって遠出や激しい運動が難しくなった犬でも、室内で飼い主といっしょにパズルをすることなら可能です。これは何もコンピューターを使ったパズルでなくても、従来からある犬用のパズルや紙コップやボールを使ったものでも良いのです。
しかし現代人にとっては、犬の脳を刺激するためのプログラムやゲームがタブレットにダウンロードできるなら、より手軽に犬との時間を作ることができるでしょう。それは犬の生活の質を向上させることにもつながります。
研究者は、彼らの研究が市販のタブレットゲームの開発につながることを期待しています。
まとめ
ヨーロッパの3カ国の研究者が共同で行っている、犬の認知機能を高めるためのコンピューターゲームの研究。今はまだ実用の段階ではなく、さらなる研究が必要とされていますが、セッションに参加した犬たちのポジティブな反応は明らかな様子です。
コンピューターを使ったパズルやゲームの刺激は、犬の脳や精神を心地よく疲れさせることも確認されています。
また、そういった犬たちの反応が飼い主にも良い影響となり、犬と人間の絆を深めるのにも一役買っているようです。
犬の脳を若々しく保つためのパズルやゲームがタブレットにダウンロードできるようになる日が来るの、楽しみですね。