「この子と話ができたらいいのに」という愛犬家の願いが叶う?
「言葉で教えてくれたらいいのにねえ」「話ができたら聞いてみたいことがある」犬と暮らしている人の多くが考えたり口にしたりする言葉ですよね。そんな願いが叶うかもしれない技術が研究されています。犬の吠える声を人間の言葉に置き換える翻訳技術の開発についてご紹介します。
夢の研究の概要は?
この心躍る技術を研究しているのはアメリカの北アリゾナ大学の生物学者スロボドチコフ教授です。様々の動物のコミュニケーションについての専門家で、30年以上にわたってプレイリードッグの言語とコミュニケーションについての研究を続けています。
プレイリードッグのコミュニケーションはとても高度で、彼らが危険を察知した時に仲間に発する警報では、捕食者のサイズや種類まで伝えているというのです。博士はコンピューター科学者と協力して、まずはこのプレイリードッグの発声を英語に置き換えるアルゴリズム(問題を解くための手順を明確に定義したもの)を開発しました。次に、羊が苦痛を感じているかどうかを、口、目、耳の位置に基づいて判断するアルゴリズムが開発されました。
つまり動物が発する声だけでなく、表情や動作も「翻訳」が可能だということです。
犬の声やシグナルも翻訳できる!
さて、お待ちかねの犬の言葉です。
教授と研究チームは、犬が吠えたり唸ったりして音声を発したり、様々な動作でコミュニケーションを取っているビデオを何千種類も収集し、分析しています。この分析に基づいて犬語の翻訳アルゴリズムが開発されています。前述したプレイリードッグの音声コミュニケーションと羊の表情から読み取るコミュニケーションの組み合わせバージョンですね。
皆さんも既にご存知の通り、犬は声の他に表情、耳や尻尾の動き、体の動作などで様々な感情を伝えようとします。しかし、それらの動きが本来の意味と違って人間の目に可愛らしく映ってしまう時、人間はしばしば自分にとっての都合の良い解釈をしてしまい、コミュニケーションを台無しにしてしまうことがあります。音声や動作が技術によって正確に分析され、そのような誤解が少なくなれば、咬傷事故などの予防にもなり、犬と人がより円滑にコミュニケーションができるようになりそうですね。
犬語の翻訳はありがたいけれど、心しておかなくてはいけないことも
「犬語の翻訳」という研究は魅力的でうれしいものと感じる人が多いですよね。けれども人間の言語同士でも、翻訳を通すことである種のニュアンスが失われたり微妙に意味が違ってしまうというのはよくあることです。コンピューターの自動翻訳で余計に混乱してしまった経験のある方も多いでしょう。けれども元の言語について完璧ではなくても知っていれば、翻訳で失われた部分を補うことができます。ましてや人と犬という異種間コミュニケーションでは、自分でも知識を持っておくことはより大切なことです。
どんなに技術が発達しても、犬と人間のコミュニケーションの根本は「見て、聞いて、感じて、正しい知識と照らし合わせること」だと心に留めておきたいと思います。
まとめ
長年にわたって動物のコミュニケーションを研究している生物学者とコンピューター学者によって、犬の発する音声やシグナルを人間の言葉に置き換えるアルゴリズムが開発されています。
犬語を科学技術で翻訳するためには、一番最初の段階では犬が伝えようとすることを人間が目と耳で受け取って過去の経験や研究と照らし合わせるというアナログなプロセスが必要です。このプロセスのために、犬のシグナルに関する理解がより深くなることも期待できそうです。
科学技術が発達しても、人間が犬のコミュニケーション方法について知識を持っておくことは変わらずに大切なことですが、新しい技術は犬とのより良いコミュニケーションの羅針盤になってくれるのは確かなことでしょう。犬語の翻訳技術の実用化、楽しみですね。
《参考》
https://thebark.com/content/what-if-your-dog-could-talk-you