犬が人間関係にもたらすポジティブな影響
犬の散歩中だと見知らぬ人とも気軽に挨拶ができるとか、人と親しくなりやすいと感じた経験はないでしょうか。犬が人間関係にポジティブな影響を与えることについて、さまざまな実験やリサーチが発表されています。
犬を飼っている人は良い印象を与えやすい
犬を飼っているということが、周りの人に対して「親しみやすい」とか「信頼できる」という印象を与える傾向が強いというリサーチ結果は過去にいくつか発表されています。
例えば、人間が一人だけで立っている時と、リードにつないだ犬といっしょに立っている時では、犬がいる時の方が挨拶など声をかけてくる人が多いことがわかっています。たとえその人の身なりが多少悪くて、連れている犬が強面であっても、やはり犬といる人の方が声をかけられやすいのだそうです。
また別の実験では、道端で知らない人に小銭を貸して欲しいと頼む、道端で小銭をうっかりばらまいてしまう、男性が女性に電話番号を聞く、などのシチュエーションを作り、それぞれ犬といっしょの場合と人間だけの場合を比べると、犬といっしょの場合は助けてもらったり願いを聞いてもらえる率が高くなったそうです。犬がよくしつけされていたり、子犬だったりする場合にはさらに印象が良くなる傾向が強いようです。
犬といっしょにいると何となく「いい人」だと感じてしまう、さらに犬の行儀が良いと信用してしまうというのは、確かにわかる気がしますね。(反対に言えば、ガードが甘くなってしまうので気をつけなくてはいけない点でもありますね。)
犬がその場にいるだけで、人間関係が良くなる!
先に挙げた例は「犬を飼っている人」に対するポジティブな印象ですが、2017年に発表されたアメリカのセントラルミシガン大学の研究は、さらに面白いことを示しています。
この研究のための実験では、4人1組のグループを複数作り、架空の広告制作や問題解決のゲームなどのメンバー同士の協力が必要な課題を与えます。課題のためのグループには訓練された友好的な犬が同席する組と、人間だけの組が作られ、課題に取り組む様子がビデオで撮影されます。実験に参加したメンバーと犬はみな初対面です。
こうして撮影されたビデオが人間の行動を観察する専門家によって検証された結果、犬が同席したグループでは、メンバー間での協力的な姿勢や親しみを表す様子が多く確認されました。そこにいる犬とメンバーの間に特別な絆が無くても、犬の存在がその場の空気を友好的なものにすることがわかったのだそうです。
犬が良く訓練されていてフレンドリーであるという条件が付くとは言え、犬がいるだけでその場にいる人々が協力的になるってすごいことですよね!
セラピードッグが有効な理由
セラピードッグは行儀良くフレンドリーでいるように訓練された犬で、介助犬などのような長期間の特別な訓練を受けた犬ではありません。けれども、セラピードッグが様々な場面で人々の役に立つ理由は、この実験の結果から説明することができます。治療やカウンセリングが必要な時、セラピーの場に犬がいることでセラピストと患者が協力的になり、互いの信頼関係が築きやすくなると言えるでしょう。
また職場に犬がいることで、人間関係が円滑になり効率が上がったという報告を聞くこともあります。警察が事件の被害者に事情を聴取する時に、心を和らげるためにセラピードッグを同席させる場合もあります。
セラピードッグが人間の心にどのように働きかけるかがわかることで、その世界はさらに広がりそうですね。
まとめ
犬といっしょにいると周りの人の目が友好的になる。さらには犬がその場にいるだけで、そこにいる人々が互いに協力的で親しい雰囲気になる。きちんとした研究の結果としてわかったことですが『犬マジック』とでも呼びたくなるような効果ですね。
犬には、私たちをほんのちょっと「いい人」にレベルアップしてくれるパワーがあるようです。犬と人間の長い歴史がしみじみと感じられますね。そんな犬のパワーに応えられる人間にならなくては!と思います。
《参考》
https://www.psychologytoday.com/blog/pets-and-their-people/201711/dogs-can-promote-friendliness-just-hanging-out
http://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/08927936.2017.1270595