クローン動物と暮らすことは、もうSFの世界の話じゃない
世界で初めて哺乳動物のクローンとして羊のドリーが生まれたのが1996年。それから21年の時間が経ち、クローン技術は進化しクローンビジネスは人々の生活に近づいてきました。
韓国のクローン技術の研究所では既に、ペットのクローンの注文を請けており、クローン技術で生まれた犬を軍用犬などの職業犬に使う試みも始めています。
そして今回アメリカでクローンビジネスを開始した企業が、また一歩クローン犬を身近なものにしようとしています。
ペットのクローンを請け負うViagen Pets
アメリカのテキサス州でペットのクローンの注文を請けているのはヴァイアジェン・ペッツという会社です。15年以上に渡って、家畜動物や犬猫のクローンを作ることに成功しています。
先行である韓国のスアム研究所はペットのクローンに10万ドルの金額をつけていますが、ヴァイアジェン・ペッツは半分の5万ドル(日本円にして約560万円)で犬のクローンを、猫については2万5千ドルと金額を設定しており、さらに手が届きやすくなっています。(いえ、もちろん十分に高額なのですが)
ヴァイアジェン・ペッツには多くの注文が寄せられ、現在は順番待ちの状態になっているのだそうです。その大多数はごく普通のペットの飼い主だということです。
ペットのクローンを作るための手順
ペットのクローンが欲しい場合、まずペットのDNAを含む細胞を保存しておかなくてはなりません。(犬が亡くなってしまった後に遺骨や残った毛からクローンを作るということはできません。)獣医師が採取したサンプルから細胞を培養し、それを凍結保存施設で保管しておきます。
次にドナーから提供された未受精の卵子に、冷凍保存されていた細胞核を移植し、胚を作ります。胚は代理母の犬に移植され、通常の妊娠と同じように胎内で育ち出産されます。生まれた子犬は通常の出産で生まれた犬と全く何も変わらないと言われています。
引っかかること、心配なこと
韓国やアメリカの企業を通じて、クローンペットは既に一般の家庭で飼われています。中にはクローンとして生まれてきた犬が、普通の生殖方法で次世代の父親になっている例もあります。費用の面でも、従来の半額にまで値が下がり、クローンペットは思っている以上に身近になりつつあるのかもしれません。
筆者は個人的には自分の愛犬のクローンを作りたいとは思わないのですが、どうしても愛犬と同じ犬が欲しいと思う人の気持ちはわかるような気がします。
でもクローン動物のプロセスを読んで「ん?」と思ったことがありました。
卵子や代理母はどこから?
「ドナーから提供された卵子」や「代理母」という言葉が出てきましたが、それはどこから来るのだろう?
人間の不妊治療でも、卵子を取り出したり、胚を移植するというステップは肉体的にとても負担が大きいと聞きます。
人間と違って、自分で希望したわけでもなく、何もわからないままに負担の大きい処置を受けなくてはいけないドナー犬や代理母犬のことを思うと「それはどうなんだろう?」と疑問を感じます。
ヴァイオジェン・ペッツ社のサイトのQ&Aでもドナーや代理母についての詳しい説明は書かれていません。
遺伝子的に同じでも、生まれてくるのは別の犬
一卵性の双子が別々の人格で、育つ環境が違えば性格や健康状態も大きく変わるのと同じで、クローンとして生まれてきた犬も見た目はそっくりでも、元の犬とは違う犬です。それでも無事に生まれて来れば、深く愛されて幸せになることと思いますが、万が一妊娠中に何か支障があって健康でない状態で生まれてきたりしたら?
病気を抱えて生まれて来ても、きちんと育てますという飼い主さんなら良いのですが、何しろ大金を払って誕生させたクローン動物です。余計なお世話は承知の上ですが、やはり心配になってしまいます。
まとめ
犬なら560万円、猫なら280万円の費用でクローンを注文することができる時代になっています。実際に注文してクローンとして生まれてきた動物と暮らしている人もいます。
現代のクローンペットの問題は技術的なことよりも、技術開発のために使われる立場の動物に関する倫理的な問題や、人間の心理的な問題を解決していく段階に移っているのかもしれませんね。
クローンを注文したいくらいにペットを愛している人々を否定する気持ちはありませんが、個人的にはそんな大金を動物に使うなら、動物の病気治療の研究施設か動物の保護施設に寄付したいなあという気がします。
皆さんはどんなふうに思われますか?
《参考》
http://www.chicagotribune.com/lifestyles/pets/ct-dog-cloning-20171116-story.html
https://viagenpets.com