今これを読んでいる皆さんは、ほぼ間違いなく犬が大好きという方々ですよね。
そんな大の犬好きも含めて、人々は犬と人間のどちらに同情や共感を示すかという実験の結果がイギリスの新聞に掲載されました。
さて、実験の結果はどんなものだったと思いますか?
「○○を救うために寄付をお願いします」人と犬どちらが人気?
2年前、イギリスのハリソン基金という医療研究のためのチャリティ団体がある実験を試みました。
寄付をお願いする広告を2つ用意して、インターネット上で公開しクリック数をカウントするというものでした。
2つの広告はどちらも不治の難病の治療法を研究するための基金に寄付をお願いするという内容です。
文面は「ハリソンは現在は治療法の見つかっていない難病に侵され、命の危機にさらされています。
ハリソン基金はこの難病の治療法を確立するための研究をサポートする基金です。ハリソンのような患者を救うための研究に寄付をお願いします。」というものです。
ただし、1つの広告ではハリソンは犬で、もう一つの広告ではハリソンは人間という設定だったという違いがありました。
そしてその結果は「犬のハリソン」の広告の方がより多くのクリック数を得たというものでした。
犬好きとしては納得がいくような、けれどちょっと引っかかるような複雑な気持ちになりますね。
けれども同様の研究をしている研究者たちの間では、この結果は驚くものではなかったのだそうです。
犬と人、どちらの被害者に共感を示す?
研究者たちがハリソン基金の実験に驚かなかったのは、次のようなリサーチ結果が発表されていたからだそうです。
リサーチはボストンのノースイースタン大学の研究チームによって2013年に専門誌「ソサエティ&アニマル」に掲載されたものです。
240人の学生に対して架空の新聞記事が渡されました。
架空記事の内容は「野球のバットを持った襲撃者が被害者を暴行した。事件が起こって数分後に警察が駆けつけた時、被害者は脚を骨折して意識を失っていた。」というものでした。
そして、この架空の新聞記事もハリソン基金の広告と同じく、被害者が4つのパターンに分かれていました。パターンは「1歳の赤ちゃん」「30歳の成人男性」「子犬」「6歳の成犬」でした。
記事を読んだ学生たちには、共感度を測るために設計された規定の質問に答えてもらいました。その結果「赤ちゃん」「子犬」「成犬」はほぼ同じレベルで「気の毒」「怖かっただろう」「痛かっただろう」などの共感が集まりました。(正確には「成犬」が他の2つに比べてほんのわずか集めた共感レベルが低かったそうです。)
そして被害者が「成人男性」だった場合は他の3つに比べて共感の度合いが明らかに低かったのだそうです。この結果を聞くと、架空の記事とは言え被害者の成人男性が気の毒に感じてしまいますね。
まとめ
寄付を募る広告、被害者の様子を伝える架空の新聞記事、どちらも主体を犬にするか人間にするか別々のパターンを作ったところ、犬が主体である方が人々の共感が集まったという研究結果が発表されました。研究者たちは「人間はより無力だと思われる者に同情や共感を示す」と結論付けています。
そう言われると、確かに自分で言葉をしゃべれない犬や赤ちゃんが同じレベルで人々の共感を集めるというのも尤もだなと思います。
成人男性がバットで襲われたという場合「もしかしたら被害者側にも非があったのでは?」という感情もプラスされると言われています。
またもうひとつ「多くの人々は犬を単なる動物ではなく、家族や子供のように捉えている」という結論も出されています。これはもう「そりゃもちろんそうですよ。当たり前じゃないですか。」という気持ちになりますね。
皆さんはこの2つの実験に参加したとしたら、犬と人間どちらの方に共感を示すと思いますか?