セラピー犬を養成するためにフロリダ州で行われている素敵なプログラム
アメリカはフロリダ州のブリバード郡保安官事務所が州立大学獣医学科と共同で行っている犬のための素敵なプログラムがあります。その名は『パウズ・アンド・ストライプス・カレッジ』
アメリカ国旗はスターズ・アンド・ストライプスと呼ばれるのですが、スターズの部分を肉球を表すパウという言葉に置き換えた可愛らしい名前です。
このプログラムは保護施設に収容されている保護犬の中で適性があると思われる犬に訓練をしてセラピー犬として養成するというものです。
保護犬をセラピー犬に育て上げるために
さて、この『パウズ・アンド・ストライプス』のプログラムは保護施設で引き取り先が決まらないままだと殺処分になってしまう保護犬が対象になっています。
セラピー犬として適性があると思われる犬に8週間の訓練を受けさせ、基準に達した犬は、犯罪に巻き込まれたなどの理由でPTSDを患っている人の家庭に譲渡されます。
犬を希望する人は専用の申請を行い、審査に合格すると無料で犬を貰い受けることができます。
犬の訓練プログラムは専門の訓練施設のプロが指導をするのですが、個々の犬の訓練ハンドラーは刑務所の受刑者が担当します。犬たちは殺処分を免れて新しい家族に迎えられ、PTSDに苦しむ人はセラピー犬を迎えることができ、受刑者は犬のトレーニングのスキルを身につけて出所後の職探しに役立てることができるというwin-win-winのプログラムと言われています。
2006年にスタートしたこの取り組みで、今までに300匹以上の犬たちが命を救われて活躍しているのだそうです。
残念ながらセラピー犬としては不合格になった犬も、きちんとした訓練を受けることで普通の家庭犬として引き取られるチャンスはグンと高くなります。
またセラピー犬候補生たちは保護施設からプログラムのための施設に移されるので、保護施設のスペースに余裕ができ殺処分率を低下させるという、候補生以外の犬たちにとってもメリットがあります。
セラピー犬リリー
※写真はイメージです。
『パウズ・アンド・ストライプス・カレッジ』の卒業生の中には一般家庭のセラピー犬ではなく、警察組織で働き始めた犬もいます。5歳のビーグル×コーギーのミックス犬リリーは、2017年5月にフロリダ州マリオン郡の保安官事務所に譲渡されセラピー犬として活躍しています。
警察では犯罪捜査のために被害者にも事情聴取をしないとなりません。
しかし多くの場合、犯罪の被害者は恐ろしい思いをして心的トラウマを負っており、事情聴取が大きな負担になることも少なくありません。特に被害者が子供の場合、よりデリケートな対応が必要になります。
リリーの仕事は、そういう事情聴取の場で被害者に寄り添って、気持ちを落ち着け心の負担を軽くすることです。実際にリリーが事情聴取に参加するようになってから、被害者の表情は目に見えて和らぎ、捜査に大きく貢献しているそうです。
セラピー犬が働く場と言えば病院や介護施設、最近では学校や空港などで働くセラピー犬の話題も目にするようになりましたが、警察で被害者の心を癒す役割と言うのは確かに深く納得しますね。
まとめ
フロリダの保安官事務所が行っている保護犬をセラピー犬に養成するためのプログラム。
保護施設の犬を訓練施設に引き取って、刑務所の受刑者の手で訓練を行い、PTSDに苦しむ人たちのもとに届けるというものです。
またセラピー犬の活躍の場として、この記事で紹介したリリーのように警察の事情聴取の場で被害者の心の負担を和らげるために働く犬もいます。
保護施設で殺処分になるかもしれない犬たちや刑務所で罪を償う受刑者たち。彼らにセカンドチャンスが与えられることは、セラピー犬を貰い受ける当事者だけでなく社会全体の利益になることです。
こんな試みが世界中に広まっていけばいいなあと心から思います。
《参考》
https://iheartdogs.com/sheriffs-office-hires-adorable-therapy-dog-to-comfort-crime-victims/