保護犬のためのリサーチとその重要性
アメリカのテキサス・テック大学の動物行動学者二人が、保護犬に関する大切なレポートを発表しました。二人の博士は犬の保護活動に携わっており、何をすれば譲渡率が上がるのか、何に気をつけると譲渡後に施設に戻される犬が少なくなるのかを統計を取ってレポートにまとめています。
こうしてエビデンスに基づいた保護活動をすることで、一匹でも多くの犬に幸せな家庭を見つけられるようにというのがレポートの目的です。
アメリカの事例ですが、日本でも参考になることがたくさんありますので、ぜひご一読くださいね。
犬と対面!心を決めるまでの時間は大きなポイント
保護施設に訪問したり、譲渡イベントに行って保護犬たちと対面!ワクワクする楽しい瞬間ですね。
このような場面で「この子に決めた!」と決心したり「この犬はやっぱりちょっと違うなあ」と決めたりするのに人々がかける時間の典型的な長さは8分なのだそうです。
そして「この犬!」と決める(または「この犬じゃない」)要素というのは、ほとんどが犬種も含めた犬の外見だとか。全体の傾向としては、長い時間をかけて決めた場合の方が譲渡後に施設に戻される率が低くなります。
外見以外に犬のどんなところを見て決めるのが大切なのか?
長い時間をかけて決めると言っても、犬のどんなところに注目すれば良いのでしょうか?それは外見よりも犬の「行動」なのだそうです。どの程度落ち着いているのか?人に対して、他の犬に対して、どれくらいフレンドリーか?活発さはどの程度なのか?こういう点を注意深く観察するだけでも答えが変わってくることがあります。
初対面の人と会う場面や譲渡会など特殊な環境ではない、普段の行動の様子を施設のスタッフやボランティアの人に積極的に質問することも大切です。特に犬初心者の方は犬が見せている仕草の意味などを誤解してしまう場合も多いので、質問や対話は大切です。
譲渡率アップと、良い縁組に役立つこと
過去の研究によると、引き取り希望者が保護犬と遊ぶ時間を取った場合、譲渡率が約2.5倍にアップしたのだそうです。希望者が犬と自由に遊ぶのではなく、犬のことをよく知っているスタッフやボランティアが犬のお気に入りのおもちゃや遊び方を示したり、犬にリードをつけて希望者の隣でしばらく伏せやお座りをさせておくなどの適切な介入が、良い縁組の手助けになるそうです。
譲渡後に犬が施設に戻される時の傾向はつかめるか?
アメリカの場合、保護施設などから譲渡された犬のうち「やっぱりダメだった」とか「事情が変わって飼えなくなった」という理由で戻されてくる犬の割合は約15%なのだそうです。(2週間程度のトライアル期間などの後に断るというのではなく、本格的に飼い始めた後でのことです。)
施設に戻される犬の多くは若い犬ですが、具体的な理由は引っ越しや離婚など人間側の事情であったり、犬の問題行動など犬側の事情であったりと様々です。(犬の問題行動と言っても、ほとんどの場合は運動不足から来る吠えや破壊行動など、最初の縁組の時点で予想されることが多いようですから、最初に「行動」の観察をして遊んでみたりすることの大切さがよくわかります。)
保護犬を送り出す側が、戻されやすい犬の傾向を把握してトレーニングをしたり注意ぶかく縁組をしたりということはできるのですが、犬を施設に戻す人の傾向というのは、今後いっそうのリサーチをして把握することが必要とされているそうです。
まとめ
保護犬を家族に迎えるというのは、ちょっとしたコツのいることでもあります。気を付けるポイントを知っておくことでトラブルをあらかじめ防いだり心構えをしておくことが可能です。保護犬の譲渡率アップは命を大切にするということはもちろん、殺処分などに税金が使われることを防ぐ社会全体の利益でもありますから、きちんとリサーチをして伝えていくということが重要になります。
犬の外見だけでなく、どのような行動を取る犬なのかということを遊びを通じて体感したり、犬の世話をしてくれている人たちに積極的に質問して理解した上で縁組を決めることが必要です。
一匹でも多くの犬が幸せな家庭に迎えられて、ハッピーな犬と家族が増えていくように願ってやみません。
《参考》
https://www.depts.ttu.edu/afs/hail/ProtopopovaGunter2017AnimalWelfare.pdf