シニア犬だからとあきらめてはダメ!老いたって新しいことを学べるのです【研究紹介】

シニア犬だからとあきらめてはダメ!老いたって新しいことを学べるのです【研究紹介】

私たち人間は、年を取ると「物覚えが悪くなったな」とか「新しいことを覚えるのが苦手になったな」と感じますよね。これって犬にもあてはまるのでしょうか。なんとなく「うちの子はもうシニアだから新しいしつけは無理かも」と思っている人も多いでしょう。でも、それはどうやら間違いのようです。

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記事の提供

  • 博物館アドバイザー(元自然史博物館学芸員)
  • 碇 京子
  • ( 博物館アドバイザー(元自然史博物館学芸員))

20年近く自然史博物館学芸員として恐竜をはじめとする古生物の展示に携わってきました。専門は古生物学と地質学で、博物館教育を通して化石生物とその進化に関する研究成果の普及に努めてまいりました。現在は個人で博物館などの恐竜・古生物展示のアドバイザーをしています。動物の体のしくみ、生態や行動に関する科学的知識をわかりやすく情報発信していきたいと考えています。

今回は、オーストリア、ウィーン獣医大学の研究所のチームが行った、年齢と認識能力(学習能力、推理能力、記憶力)の関係ついて調べた研究報告をご紹介します。

さまざまな年齢のボーダーコリーの「学習能力」「論理的推理能力」「記憶力」を調査

2匹のボーダーコリー

ボーダーコリーは、羊追いのためにつくられた犬種で、彼らは人から発せられるたくさんの命令をきかなればなりません。そのため、何世代にもわたって、新しいものごとを素早く学習できるよう交配されてきました。実際、他の犬種に比べて訓練が容易であるとされている犬種です。
そのような理由から、今回の犬の認識能力の研究にボーダーコリーが選ばれました。
ペットとして飼育されている子犬からシニア犬まで(生後5か月~13才)の、95頭のボーダーコリーが実験に参加しました。彼らを5つの年齢層に分け、それぞれタッチスクリーンを使って学習能力、論理的推理能力、記憶力の3つの能力をテストしたのです。

学習能力をテスト:シニア犬でも新しいことを学習できた

シニアのボーダーコリー

テスト方法

タッチスクリーンで合計8つの画像から「4つの正解の画像」を選ぶ、という学習テストを行いました。
例えば、スクリーンに四角形と円の図形を1つずつ同時に映し、どちらが四角形かを犬がスクリーンに鼻でタッチして示します。四角形を選ぶとご褒美がもらえ、円を選べばご褒美はもらえず、タイムアウトとなります。テストは図形の色を変えたり、左右逆にしたりと何度も繰り返し行われました。

結果

年上の犬は、若い犬よりも全問正解するまで多くのテストをこなさないといけませんでした。このように述べるとシニア犬はやっぱり学習が難しいのかな、と思ってしまうかもしれません。しかし裏を返せば、加齢によって学習速度は若い犬よりも遅くはなるものの、正解にたどりつくことはできる、つまりシニア犬でも新しいことを学習できるということがわかったのです。ただし、シニア犬は柔軟性には欠け、一回学んだことを変えることは若い犬よりも難しいということでした。

論理的推理能力のテスト:シニア犬のほうが好成績

3匹のボーダーコリー

テスト方法

学習テストのあとに、論理的推理能力をテストする実験が行われました。再びタッチスクリーンに2つの画像を映しどちらが正解かを選ぶのですが、この2つの画像のうち、1つは犬たちがまったく知らない新しい画像で、もう1つは学習テストで使った不正解だったほうの画像です。このテストでも、学習テストで不正解だった画が不正解となります。つまり、犬たちはすでに知っている画像を「不正解」として除外し、知らない絵を正解として選ばなければなりません。そのためには、論理的推理が必要です。

結果

このテストの結果は意外でした。若い犬たちが悪戦苦闘している間に、年上の犬たちは、着々と正解していったのです。学習テストでシニア犬は柔軟性に乏しいことがわかりましたが、それを証明するように、シニア犬たちは前のテストで不正解だったものをこの実験でも変わらず不正解だと考え、比較的容易に新しい絵、つまり正解を選ぶことができたのです。頑固なことが、論理的推理を促しやすくしたということでしょう。

長期記憶力のテスト:年齢による差はなかった

テスト方法

学習テストが行われて6ヵ月後に、その時と同じ8つの画像を使ってタッチスクリーンテストを再び行い、彼らが画像を覚えているかテストしました。

結果

ほとんど全ての犬が6ヶ月前に正解した絵を覚えていて、長期記憶力については年齢差がほとんどないことがわかりました。

この研究の意味

青空と犬

今まで類似の研究が人や研究所の犬たちで行われてきましたが、異なる家庭環境で暮らすペットの犬たちを使ったことはほとんどありませんでした。この研究では、さまざまな環境下で育った犬たちを調べたことで、環境に左右されない犬の普遍的な傾向を示すことができたといえます。なにより、シニア犬でも新しいことを学べ、推理能力では若い犬よりも優れているという研究結果は、シニア犬に対する私たち飼い主の意識を変える必要があることを示唆してくれたのだと思います。

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ユーザーのコメント

  • 投稿者

    20代 男性 わんこマスター

    ここで大事なのはシニア犬の結果ではなくボーダーコリーのシニア犬の結果ということです。

    ボーダーコリーのシニア犬がこのような 結果になったというだけで全ての犬種にあてはまるわけではありませんので誤解がないようにお願いします。
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