45犬種について体型と心理学調査結果の相関性を調査
シドニー大学の研究では、一般的な45犬種の体高(地面から背中までの高さ)、体重、性別、頭長/頭幅の比(CI値といい、短頭種か、長頭種かということ)のデータと、45犬種(約7万頭、平均年齢約2才)に対して1997年から2014年にかけて行われた心理学的評価の結果について比較し、相関性を調べました。
心理学的評価は、人によってハンドリングされた犬に対し、何らかの行動を引き出すようなしかけをさまざま行い、犬がどのように反応するかを観察したものです。
例えば、人と遊ぶ(追いかけっこ、おもちゃ遊びなど)、ダミー人形が突然現れる、幽霊の恰好をした人が現れる、金属音を聞かせる、銃の発砲音を聞かせる、といったことです。けっこう刺激的なものも含まれますよね。
こうした刺激に犬たちがどんなリアクションをとるかということを調べ、それが犬の体高、体重、性別、CI値と関連性があるかどうかを調べたわけです。
小さな犬は攻撃的?
調査の結果、概して体高の高い犬、つまり背の高い犬は陽気で、人に対しより愛情深く協力的であることがわかりました。その一方、体高の低い犬、つまり背の低い犬は、背の高い犬よりも攻撃性を示すことが多かったそうです。
また、背の低い犬、体重の軽い犬ほど問題行動(社交的でない、過活動、飼い主の関心を求める行動)が増加する傾向にありました。
なんだか小型犬が良い子ではないような結果ですよね。このような小型犬の特徴については以前の研究からも指摘されていて、繁殖の際、より小さなサイズの犬が作られる過程で何らかの神経の変容があり、それによって同じ刺激でも小型犬がより強く反応してしまうことが原因といわれています。しかも小型犬の場合、攻撃性があったとしても大型犬ほど危険ではないため、許容されてきたことも一因と考えられます。
短頭犬種は人好き?
短頭犬は、基本的に人に対して社交的、対話的でより愛情豊かでした。特に背の高い短頭種のオスは非常に社交的で、遊び好きなことがわかりました。これは、短頭種が愛玩犬として人気が高く、人にアピールする性格と幼児的な顔が好まれたために、そのように繁殖されるようになったからと研究チームは考えています。一方、体重の軽い長頭種の犬は、知らない人に対する恐怖心がより強く、金属音やダミー人形に対し、かなり用心深かったとのことです。長頭犬はその頭の形から、短頭犬よりも中央の視界が悪く、ものが突然現れたりすることが苦手なためにより用心深くなるからと説明しています。
オスは所有欲が大きい
オスは、メスよりも引っ張り合いをする遊びが好きなのだそうです。引っ張り合いっこには所有ゲームの側面があり、社会的序列を決めたり、強さを確認する意味があります。特に体重の重いオス犬はこの性質が強く、軽い犬よりもおもちゃをずっと離さなかったようです。
残念ながらここで全てを紹介できませんが、この研究では、例えば短頭犬で背が高く体重が軽いメスは金属音に好奇心を示し、銃の発砲音を最も怖がった、など、さまざまな身体的特徴の組み合わせと性格・行動について詳細な結果が得られています。それらの因果関係にすべて説明があるわけではありませんが、犬種がある目的をもって繁殖されていることを考えれば、体型の違いが性格や行動に影響するのは自然なことなのでしょう。
研究の意味
犬が家畜化というプロセスを通して、人間のさまざまなニーズに応えるために品種改良された結果、肉体的な面だけでなく、性格や行動も変わったことを、この研究は科学的に証明したといえます。今まで「なんとなく」で終わっていた犬の体型と性格のイメージが、実際に科学的に解明されていけば、将来、特定の役割を担う労働犬を繁殖する際にも、役立つのではないかと考えられます。
《参考》
H. R.Stone他(2016)Associations between Domestic-Dog Morphology and Behaviour Scores in the Dog Mentality Assessmen. PLoS ONE 11(2): e0149403. doi:10.1371/journal.pone.0149403
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0149403