そのテストで犬の攻撃性、本当にわかりますか?

そのテストで犬の攻撃性、本当にわかりますか?

アメリカのシェルターで行われる犬の気質審査のためのテストがあります。ニューヨークタイムズの記事がそのテストの正確性に疑問を投げかけました。「犬を読み取る」ということ、ちょっと考えてみて下さい。

犬の攻撃性を審査するためのテスト、本当に正確なのでしょうか?

2017年7月末、アメリカのニューヨークタイムズ紙にアニマルシェルターで行われている犬の気質審査のためのテストに対して「ちょっと待って」と一石を投じる記事が掲載されました。
長年に渡って行われてきたテストの方法で本当に犬が攻撃的かどうかがわかるのか?というものです。シェルターで行われるこの種のテストは、犬が譲渡に適するかを判定するために行われ、結果によってはその犬への死刑宣告になることもあります。犬を正しく読み取ることの大切さにもつながるこの問題、ぜひ考えてみてください。

20年前から行われてきたテストとはどんなもの?

フードを被っている人

アメリカ動物虐待防止協会をはじめ、多くの動物保護施設で犬の気質や譲渡への適性を調べるために行われてきたテストがあります。

テストのための部屋に連れて来られた犬に、幼児と同じくらいのサイズの精巧な人形、フードをかぶった知らない人、初めて会う犬を近づけて、攻撃をしてくるかどうか?犬にフードを入ったボウルを与えて、食べている時に模型の手を使って邪魔をすると攻撃をしてくるかどうか?を観察するというものです。

以前に日本でも放送されていたアニマルポリスの番組などでも、このようなテストのシーンがよく登場しましたのでご存知の方もいるかと思います。近年はその傾向は弱くなりつつありますが、もしも攻撃性を見せてしまうと譲渡には適さないとされて殺処分の対象になってしまうという施設も多い厳しいテストです。

テストに疑問を投げかける獣医師や動物行動学者たち

疑問に思っている獣医師

実はこのテスト、最初に考案した動物行動学者自身も「あまり正確とは言えない」としており、犬のことを良く知る専門家の間では取りやめる人や施設が増えて来ています。
アニマルシェルターという所は、よく整備された場所であっても犬にとってはストレスの多い場所です。人手や予算の都合によっては、十分な運動や遊び時間が与えられない場合もよくあります。そんな状況で、人形や知らない人や犬を近づけられたらイラッとしてしまう犬がいても不思議ではありません。ましてや、一度与えられたフードを取られそうになれば犬が怒るのも当然です。たった一度のそんなテストで攻撃的な行動を見せてしまったからと言って殺処分にされてしまうなんて理不尽だというのがテストに反対する人々の意見です。

どんなテストならきちんと審査できるのか?

散歩をしている犬

それでは反対派の人々はどんなテストなら、犬の気質をきちんと審査できると考えているのでしょうか。それはたった一度のテストではなく、普段の散歩、遊び時間、給餌の時間などの日常生活の中で人間や犬に対する態度をよく観察して総合的に判断することとされています。観察をするのは犬のボディランゲージをきちんと読み取るための訓練を受けたトレーナーや動物行動学者が含まれることというのも大切な条件です。

近年は先に紹介したようなテストは廃止したり、目安としてテストを行ってもそれだけではなく普段の様子も含めて総合的に判断するという施設、少なくともフードボウルのテストは取りやめにするという施設が増えてきました。

犬の攻撃性をきちんと見極めることは、譲渡した先の家庭だけでなく社会全体の安全のためにとても重要なことです。そしてもちろん審査を受ける犬の命のためにも、です。保護施設での犬の心と身体の健康のための、ペット動物とは違う視点の獣医学=シェルター獣医学の普及も正確な審査のための大切な要素です。

「犬を読み取る」ことの大切さ

楽しんでる犬

犬がストレスを感じている時のボディランゲージを読み取ることや、どのように対応するべきかという訓練は、保護されている犬の命を左右する事柄です。犬の命だけでなく、周囲の人々の安全にもかかわることですので、ニューヨークタイムズ紙という大きなメディアが投げかけた疑問を、多くの人が共有してくれると良いなと思います。

まとめ

子供の手と舌を出している犬

アメリカの多くの保護施設で行われている犬の気質審査のためのテストにニューヨークタイムズ紙が疑問を投げかける記事が掲載されました。

すでに多くの犬の専門家が「推奨しない」と発表していたテストですが、現在もまだ多くの施設で実施され、そのために殺処分とされる犬も多くいます。反対に、本来は譲渡に適さないのに一般家庭に送り出されてしまう犬もいます。犬の気質や行動をきちんと読み取ることは社会全体が関係する問題であるという認識は広まらなくてはなりません。

アメリカでの失敗例と改善策が、日本で保護活動に携わっている行政や団体にもきちんと伝わって欲しいものだと思います。

《参考》
https://www.nytimes.com/2017/07/31/science/dogs-shelters-adoption-behavior-tests.html?em_pos=large&emc=edit_sc_20170731&nl=science-times&nlid=47716293&ref=headline&te=1

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ユーザーのコメント

  • 投稿者

    女性 白身

    譲渡か殺処分かの2択というのが厳しいですね。譲渡かトレーニングか、にして、トレーニングしても無理だったら仕方ないのかも知れませんが。うーん、仕方ないとも言いたくないですが。現場の人たちはきっと痛恨の思いで働いていらっしゃるんでしょうね。
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