『殺処分ゼロ』は見せかけの幸せ?犬猫のために目指す本当のゴールとは

『殺処分ゼロ』は見せかけの幸せ?犬猫のために目指す本当のゴールとは

保健所やセンターの犬や猫の殺処分をゼロに!という訴えは、最近ではすっかりおなじみになった感があります。でも、それは手放しに素晴らしいことでしょうか?一緒にじっくり考えてみませんか。

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『殺処分ゼロ』で犬や猫が本当に幸せになれた?

0を示す手

保健所や愛護センターで保護されている犬や猫、ひと昔前ならばほとんどが殺処分となっていました。けれど近年は、動物愛護法の改正、各自治体と動物保護団体の協力、一般市民の意識の変化などから新しい家族の元に譲渡される例も増え、殺処分数は減少しつつあります。
それに伴って「○○県を殺処分ゼロに!」とか「殺処分ゼロ運動」と言った言葉や活動を見聞きする機会も増えてきました。言うまでもなく捨てられた犬や猫が新しく家庭に迎えられて命が救われるのは素晴らしいことです。けれど、それは『殺処分ゼロ』とイコールなのでしょうか?『殺処分ゼロ』を目標そのものにすることに問題はないのでしょうか?多くの方に考えてみていただきたいと思います。

『殺処分ゼロ』のからくり

鉄格子に入っている犬

2012年に動物愛護法が改正され、都道府県の保健所や愛護センターは動物取扱業者からの引き取りや、繰り返しての引き取り、「年をとったから」「病気になったから」などの理由の引き取りを拒否できるようになりました。その結果、動物の殺処分を行わずに済む『殺処分ゼロ』を一定期間達成した自治体も出てきました。
一見素晴らしく思えます。けれど冷静に考えてみれば、最初からそんな安易な理由で長年一緒に暮らした犬や猫を保健所に連れてくる人が、きちんと里親探しをしたり、心を入れ替えて動物を終生可愛がったりするでしょうか。保健所にひきとってもらえないなら、と山などに動物を捨てるかもしれないし、捨てないまでも適切な世話もしないまま飼い殺し状態になる可能性の高さを想像するのは難しくありません。
極端な話、自治体が引き取りを完全にシャットアウトしてしまえば殺処分ゼロは達成できます。引き取った後、ずーっと檻に入れて最低限の世話しかしない状態でも処分さえしなければ殺処分ゼロです。

殺処分を免れても不幸になる可能性

撫でられている犬

引き取った犬や猫の新しい家族としての里親募集をするのはとても大切なことです。譲渡活動に取り組む自治体が増えているのもたいへん喜ばしいことです。自治体の活動だけでは限界がある部分を、民間の動物保護団体や個人活動家と協力する自治体も増えてきました。多くの場合、協力関係はうまく行っており、日本の動物保護の流れが良い方向に向かいつつあります。
けれども動物保護団体の中には団体のキャパシティを超えてまで、次から次へと自治体から犬や猫を引き出し続ける例もあります。引き出した動物の世話だけで手一杯になれば、新しい家族を探す活動はおろそかになり、譲渡率は下がります。そして何よりも心配されるのは、保護団体での動物たちの生活のクオリティです。殺処分を実施しないためだけに、別の場所で犬や猫に苦しい思いを強いるのは本末転倒です。

『殺処分ゼロ=不幸な動物ゼロ』ではない

網に穴を押し付けている犬

保健所の処置室で処分される犬や猫の数が減っても、山野に捨てられたり、つながれたままだったり檻に閉じ込められたまま惨めな一生を過ごす動物の数が増えては意味がありません。殺処分ゼロという数字のみにこだわり過ぎると、こういう歪みが出てくるということは多くの人に知っていただきたいと思います。『殺処分ゼロ』という言葉は人々の目を惹きつけ関心を持ってもらって不幸な動物を減らすためのツールのひとつであって、決してそれ自体が目標になるべきゴールではないのです。
『殺処分ゼロ』も『終生飼養』も、その状態を作り出すことだけが目標ではありません。犬が犬らしく猫が猫らしく健全に過ごす結果としてつながっていく状態でなければなりません。

犬や猫のために目指すべき本当のゴールとは?

いろいろ哀しいことを書いてきましたが、数字に表れている犬猫の殺処分数は過去20年間減少の一途をたどっています(環境省統計資料より)
2005年と2015年を例に取ると、保健所での犬猫の引き取り数は39万2千匹だったのが13万7千匹と約3分の1に。譲渡数は2万8900匹から5万2700匹と、約1.8倍に増加しています。そして殺処分数は36万5千匹が8万3千匹と4分の1を下回る数字まで減少しました。犬猫の殺処分問題の一番最後の下流の部分は改善されつつあるのです。

問題なのは、一番最初の上流の部分、つまり生まれてくる犬や猫の問題です。今の日本では人間が受け入れられる数を大きく超える犬や猫が生まれているということです。

山野に捨てられて繁殖してしまい野犬や野良猫として生きる動物、パピーミルと呼ばれる工業製品のように命を軽視した繁殖をして商売をする悪質な繁殖業者、遺伝病や避けるべき気質の知識もないのに素人繁殖してしまう飼い主、これらの問題への真剣な取り組みこそが本当の意味での殺処分ゼロにつながるのです。
動物保護活動の目標は自治体の殺処分を実施させないことではありません。捨てられる動物の数を最小限に抑え、無理のない譲渡ができる状態にすることが現実的な目標でしょう。

まとめ

風船に囲まれている犬

『殺処分ゼロ』って口当たりの良い言葉ですよね。犬や猫を愛する人なら、実現して欲しいと思うのは当たり前のことです。でも『殺処分ゼロ』という数字を達成することは本当のゴールにはなりません。気をつけなくてはいけないのは、このインパクトのある言葉のせいで他の問題の本質まで目が届かなくなることです。数字ではなく、過剰に生み出される動物を減らして、幸せに生きる犬や猫の状態を目標にすること。そのために何をするべきかを考えていきたいものです。

《参考》
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2508b/full.pdf
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/dog-cat.html

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ユーザーのコメント

  • 投稿者

    40代 男性 ワンコ好き様

    殺処分〇賛成!ですが!根本的な問題の解決は無理なように思う?ペットショップブリーダー、個人間の里親募集などで家族を見つけるわけですが・・個人間里親に限って話します。自分は最近個人の里親募集からシニア犬を引き取りました。最初は元飼い主さんは高齢者で足腰が悪くなり、愛犬のケアも不十分で散歩も3年させてないと・実際に募集したのは娘さんからの依頼です。じゃ娘さんは飼えないのかな?飼おうとトライしたが子供がアレルギーで断念!よくある話です。それが年明けすぐで、トライアル的に我が家で過ごし飼おうとなり、春の狂犬病の時期に病院で元の飼い主さんの役所に引き取ると伝えれば新規登録ではなく引っ越しのような扱いになって登録料がかからないかも?それで元飼い主に連絡したら、驚き!狂犬病注射は一度も受けてない!!!理由が散歩しないし大丈夫だから!!感の良い方は気付いたはずです!高齢者で足腰悪く3年前くらいから散歩もしてないは嘘 ○ティや○カリなど簡単に取引できてしまう。サイトを見ると毎日どこかで新たに里親募集!そして、引き取る側もできるだけ若くて好みの犬種優先?なんか違う気がする。ペットショップのつもりかなぁ?とは言えワンコを救っているわけで? 現在そのワンコはウチで初の狂犬病登録をして元気に暮らしてます。今までこの世に存在してなかったワンコ 年齢は9歳すぐに10歳になりましたけど(笑)最後に団体の里親募集も一部疑問だなぁ 注射代やら飼育代やらと引き取る時にさらに金銭要求したり、どうなんだろネ 長々と失礼しました。 
  • 投稿者

    40代 女性 リボン

    この問題は本当に考え続けていかなければいけないですよね。すぐにゼロになるような簡単なことではないですが、できる限り急がなくていけない。法律改正、飼育するうえでの啓蒙、子供への教育…いろいろな方面からのアプローチが必要なのだと思います。
  • 投稿者

    女性 Ludy

    一緒に暮らし始めたら、ワンコが「虹の橋」に行くまで、ずっと一緒。
    そんな当たり前のことが、普通の事。
    ペットショップからのお迎え?
    保護犬からの出逢い?
    そんなことはどうでもいいです。
    このワンコと一緒に暮らすんだと決めた以上は, 唯々、最後の時まで一緒に過ごす事を考える。
    それが当たり前の事になればいいですけど。

    良くドイツがペットに優しい国だというけれど、狩猟地区があることを存じてない方がほとんどではないでしょうか?(実数では、日本の3倍以上と聞いた事があります。)
    マネできる所も多々あると思いますが、日本には日本なりの進化あればいいですね。
    一人一人が、我が家のワンコを愛する事ができれば、なんの問題もないはずなのに!
    「ワンコと暮らす資格」検定が必要だと考えられるような国は淋しいですね。
    Ludyの投稿画像
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