️去勢すると性格は変わるのか?最新研究でわかったこと

犬の去勢は、望まない繁殖を防ぐ目的だけでなく、問題行動の改善を期待して行われることがあります。
しかし近年発表された研究では、去勢後の行動変化は飼い主が想像するほど単純ではないことが示されています。
2024年に発表された研究では、230頭の雑種のオス犬を対象に、去勢犬と未去勢犬の行動や性格が比較されました。研究では、犬のストレス反応や攻撃性、社交性、学習性などが評価されています。
その結果、去勢犬は未去勢犬と比較してストレス関連行動が多い傾向を示しました。また、全体的な攻撃性や散歩中の攻撃的な反応も高くなる傾向が認められています。さらに、社交性や学習性、感情の安定性、外向性といった性格指標は低く評価される傾向がありました。
これだけを見ると、去勢は悪いことばかりのように感じるかもしれません。しかし、この研究はアンケート調査であり、去勢が直接原因であることを証明したものではありません。もともと不安が強い犬や問題行動を抱えた犬が去勢されている可能性も十分に考えられます。
つまり、この研究からわかるのは、去勢した犬に特定の行動傾向がみられたという関連性であり、去勢によって必ずそのような性格になるという意味ではありません。
️行動はなぜ変わるのか?ホルモンとの関係

去勢後の行動変化を考えるうえで重要なのが、男性ホルモンであるテストステロンです。
テストステロンは繁殖行動だけでなく、自信や積極性、探索行動などにも関与していると考えられています。
去勢を行うとテストステロンは大きく減少します。その結果、発情中のメスへの強い関心や、マーキング行動、マウンティング行動などは改善することがあります。実際に臨床現場でも、このような性ホルモンに関連した行動が減る例は少なくありません。
また、近年の研究では、犬の行動や気質には遺伝的要素や脳内神経系も深く関与していることが示されており、攻撃性や恐怖反応は単純に性ホルモンだけで決まるわけではないことがわかっています。
そのため、たとえば他の犬を見ると吠える、人を怖がる、留守番で不安になるといった問題がある場合、原因は社会化不足や学習経験、遺伝的気質などさまざまです。
こうした行動は去勢だけで改善するとは限らず、場合によっては変化がみられないこともあります。
実際に犬の飼い主同士の体験談から、去勢後に落ち着いたと感じる人もいれば、変化がなかったという人、不安や反応性が強くなったと感じる人もいます。非常に個体差が大きいことがわかります。
このことからも、去勢を問題行動の万能な解決策として考えるのではなく、その犬の性格や生活環境を含めて判断することが重要です。
️結局、去勢するべき?しないべき?

結論から言うと、すべての犬に共通する正解は現状ないといえるでしょう。
去勢には望まない繁殖を防ぐ効果があり、精巣疾患の予防にもつながります。また、マーキングや発情行動など、性ホルモンに関連する行動が改善する可能性もあります。
一方で、行動面については必ずしも良い変化だけが起こるわけではありません。
特に不安傾向の強い犬や神経質な犬では、ホルモン変化による影響を慎重に考える必要があります。近年の研究でも、ストレスや攻撃性、社交性などに関する複雑な関連性が報告されています。
また、犬種や体格によっても影響が異なる可能性があります。2024年の研究では、超大型犬と比べて、小型犬から大型犬の去勢群でストレス関連行動が目立つ傾向がみられました。
そのため、去勢を検討するときは、
- 繁殖予定があるかどうか
- どのような行動に困っているのか
- その行動が本当にホルモンに関連しているのか
- 年齢や犬種、性格にどのような特徴があるのか
といった点を総合的に考えることが大切です。
もし行動上の問題が主な理由で去勢を考えている場合には、まず獣医師や行動診療に詳しい専門家へ相談することをおすすめします。トレーニングや生活環境の見直しが、より効果的な場合も少なくありません。
️まとめ

いかがでしたでしょうか。
去勢は単なる手術ではなく、その犬の一生に関わる選択です。だからこそ、思い込みやイメージだけで判断するのではなく、科学的な情報を参考にしながら、その子に合った選択を考えることが大切です。
去勢をすると必ずおとなしくなるわけではなく、行動への影響は犬によって大きく異なる可能性があります。去勢の判断は、性格や生活環境、健康面を含めて個別に検討することが重要です。
*参考文献: Kolkmeyer CA et al., Animals (Basel). 2024 Aug 22;14(16):2445.



