犬の外耳炎が治らない!注意したい「耳のしこり」の種類と特徴【獣医師執筆】

犬の外耳炎が治らない!注意したい「耳のしこり」の種類と特徴【獣医師執筆】

外耳炎の治療を続けているのに、なかなか良くならない――そんなとき、耳の中に「しこり」が隠れていることがあります。本記事では、犬の耳のしこりの原因や症状、治療の考え方を初心者にもわかりやすく解説します。

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記事の提供

東京大学動物医療センター内科研修過程修了。一般診療と皮膚科専門診療を行い、国内・国外での学会発表と論文執筆も行う。現在は製薬会社の学術担当を務めながら、犬猫について科学的に正しい情報発信を行っている。Syneos Health Commercial 所属MSL、サーカス動物病院 学術、アニー動物病院 非常勤獣医師。

外耳炎が治らないときに疑うべき「耳のしこり」とは

芝生の上で耳を掻いている犬

犬の外耳炎は非常に多い病気で、かゆみや赤み、悪臭のある耳垢などが主な症状です。点耳薬や内服薬で改善することが多い一方で、「治療してもすぐ再発する」「片側だけずっと腫れている」といったケースもあります。こうした場合、単なる炎症ではなく、耳の中に隠れた異常が存在している可能性があります。

その代表が耳のしこりです。しこりと聞くと腫瘍を想像するかもしれませんが、実際には炎症性ポリープ、皮脂腺の嚢胞、耳垢が袋状にたまる嚢腫、さらには中耳に関連する病変まで、さまざまなものが含まれます。犬の耳のしこりには良性のものから悪性腫瘍まで幅広い原因があることも知られています。

外耳道はL字型に曲がった細い管で、内部は皮膚で覆われています。慢性的な炎症が続くと皮膚が厚くなり、分泌腺が過形成を起こし、しこり状に盛り上がることがあります。この状態では薬が奥まで届きにくくなり、いくら治療しても炎症がくすぶり続けるという悪循環に陥ります。

つまり、「治らない外耳炎」の背景には、耳道の中に物理的な障害物が存在している場合があるのです。

耳のしこりにはどんな種類があるのか

首を傾げて正面を見つめる犬

犬の耳にできるしこりにはいくつかのタイプがあります。比較的よくみられるのは皮脂腺嚢胞です。これは皮膚の分泌物が袋状にたまり、膨らんだ状態です。外耳炎を繰り返す犬では分泌腺の働きが活発になり、嚢胞形成が起こりやすくなります。

また、慢性炎症の結果として炎症性ポリープが形成されることもあります。これは粘膜や皮膚が増殖してできる良性の塊ですが、耳道を物理的に塞いでしまうため、通気性が悪化し、細菌や酵母が繁殖しやすくなります。

さらに注意が必要なのが中耳や鼓室に関連する病変です。たとえば真珠腫と呼ばれる病変は、角化物が中耳内に蓄積する状態で、慢性外耳炎が背景にあることが多いとされています。耳の嚢胞や中耳病変は、神経症状や顔面神経麻痺を引き起こす可能性もあります。

腫瘍性病変も忘れてはいけません。耳垢腺癌や扁平上皮癌などの悪性腫瘍は、とくに高齢犬で発生することがあります。初期には外耳炎と区別がつきにくく、出血しやすい、しこりが硬い、急速に大きくなるといった特徴がみられることがあります。

このように、耳のしこりと一言でいっても、その性質や重症度はさまざまです。大切なのは「いつもの外耳炎」と決めつけず、治療に反応しない場合は追加検査を検討することです。

検査と治療、そして飼い主ができること

獣医師に耳鏡で耳をチェックされている犬

外耳炎が長引く場合、まずは動物病院で耳鏡検査を行い耳道内を詳しく観察してもらいましょう。しこりが疑われる場合には、鎮静下での精査や画像検査が必要になることもあります。レントゲン検査やCT検査によって中耳まで評価し、病変の広がりを確認する必要性も検討されます。

治療法は原因によって大きく異なります。小さな嚢胞やポリープであれば外科的切除で改善することがありますが、慢性化して耳道全体が変形している場合には外耳道切除術が選択されることもあります。悪性腫瘍であれば、より広範囲の手術や追加治療が必要になることもあります。

重要なのは、単に点耳薬を繰り返すだけでは解決しないケースがあるという理解です。慢性的な炎症が続くと、耳道は次第に狭く硬くなり、薬が届きにくい環境が固定化してしまいます。早い段階で原因を突き止めることが、結果的に犬の負担を減らします。

飼い主としてできることは、症状の変化に敏感になることです。片側だけ腫れが引かない、触ると硬い塊を感じる、血が混じる耳垢が出る、顔を傾ける仕草が増えたなどの変化は重要なサインです。また、自己流の過度な耳掃除は炎症を悪化させることがあるため、指示された方法を守ることが大切です。

耳は外から見えにくい部位だからこそ、慢性化しやすい臓器です。「治らない外耳炎」は体からのメッセージかもしれません。その背景にあるしこりの存在を見逃さないことが、愛犬の快適な生活を守る第一歩になります。

まとめ

耳をなびかせながら走っている犬

外耳炎が治らないときは、耳の中のしこりが原因のことがあります。繰り返す炎症を軽視せず、早めの精査と適切な治療で愛犬の耳を守りましょう。

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