抗生物質なしでも大丈夫?愛犬の下痢治療で「80%の飼い主」が満足した理由とは?【最新研究を獣医が解説】

抗生物質なしでも大丈夫?愛犬の下痢治療で「80%の飼い主」が満足した理由とは?【最新研究を獣医が解説】

犬が下痢をすると、多くの飼い主は「すぐに抗生物質が必要なのでは」と心配します。しかし最新の研究では、多くの犬が抗生物質を使わなくても症状が改善し、8割の飼い主が治療に満足していました。本記事ではその理由をわかりやすく解説します。

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記事の提供

東京大学動物医療センター内科研修過程修了。一般診療と皮膚科専門診療を行い、国内・国外での学会発表と論文執筆も行う。現在は製薬会社の学術担当を務めながら、犬猫について科学的に正しい情報発信を行っている。Syneos Health Commercial 所属MSL、サーカス動物病院 学術、アニー動物病院 非常勤獣医師。

犬の「急な下痢」には本当に抗生物質が必要?

人が差し出す薬を見つめる犬

犬が突然下痢をすると、多くの飼い主は不安になります。食べすぎ、拾い食い、ストレス、季節の変わり目など原因はさまざまですが、下痢を起こしたからといって必ずしも細菌に感染しているわけではありません。にもかかわらず、これまで動物病院では「まず抗生物質を使う」という治療が一昔前は一般的でした。

しかし近年、人の医療と同じように、動物医療でも「本当に必要な場合だけ抗生物質を使う」という考え方が広がっています。抗生物質をむやみに使い続けると薬が効きにくい耐性菌が増えてしまい、将来本当に必要なときに効かなくなる危険があるためです。

今回紹介する研究では、犬の急性下痢の治療で“抗生物質を使わない治療”がどれほど効果があるのかが調べられました。研究に参加したのは、急に下痢になった犬109頭。その犬たちを二つのグループに分け、一方には抗生物質を投与し、もう一方にはプロバイオティクス(善玉菌のサプリ)を投与しました。犬の状態は獣医師が定期的に診察し、飼い主の満足度も調査されました。

驚くべきことに、抗生物質を使わなかったグループの多くが、抗生物質を使った犬と同じくらい早く下痢が改善していたのです。さらに、多くの飼い主がその治療結果に満足していました。

つまり、急な下痢であっても、原因が細菌感染でない場合は、抗生物質がなくても問題なく治るケースが多いということが研究から分かってきました。

プロバイオティクスという方法――お腹のバランスを整える治療

仰向けでベッドに寝転ぶ犬

この研究で抗生物質の代わりに使われたのがプロバイオティクス、いわゆる“お腹の良い菌”を補うサプリメントです。善玉菌が腸の中で働くことで、乱れた腸内環境を整え、自然な回復を助けます。

抗生物質の場合、腸の悪い菌を殺すだけでなく、良い菌まで減らしてしまうことがあり、その結果、下痢が長引いたり再発したりすることがあります。一方、プロバイオティクスは腸の“味方”を増やす治療なので、体に余計な負担がかかりにくいのです。

さらに、この研究では“飼い主が治療にどれだけ満足したか”も調べられました。すると、プロバイオティクスを使った飼い主の約80%が「治療に満足している」と答えたのです。

飼い主が満足した理由として考えられるのは以下のような点です。

  • 副作用が少なく、安心して使えた
  • 薬を飲ませるストレスが少なかった
  • 症状の改善が早かった
  • 自然な治し方に納得できた

これらのポイントは、犬にも飼い主にもやさしい治療であることを示しています。

抗生物質を使わない治療が向いている犬・向かない犬

薬を差し出す飼い主の手と床に伏せる犬

今回の研究は、抗生物質がいつでも不要だと言っているわけではありません。むしろ「使うべきケース」と「使わなくてよいケース」を見極めることが大切だと教えてくれています。

抗生物質を使わずに治療できる可能性が高いのは、以下のような下痢のケースです。

  • 元気と食欲がほぼある
  • 水分がとれている
  • 血が混じっていない
  • 短期間で起きた軽い下痢
  • 嘔吐があっても一時的で重くない

こうした場合、腸の働きを整える治療だけで自然に回復することが多く、むしろ抗生物質を使うと腸内の良い菌まで減らしてしまい治りが遅くなることもあります。

一方で、抗生物質が必要になるのは以下のような時です。

  • ぐったりしている
  • 高い熱がある
  • 下痢に血が混じっている
  • 原因が細菌だと疑われる
  • 子犬や高齢犬で免疫が弱い
  • 何日も改善しない

このような場合は、感染症が隠れている可能性があり、抗生物質が必要になることがあります。

まとめ

ソファの上で飼い主になでられている犬

犬の急な下痢は、必ずしも抗生物質が必要というわけではありません。研究結果は、飼い主の「抗生物質を使わないと治らないのでは?」という不安を大きく覆すものでした。症状に合わせて適切に治療を選ぶことが、愛犬にとって最も安心でやさしい方法です。

(参考文献:Vet J. 2024 Dec;308:106243.)

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