犬用の「抗生物質」使いどころと副作用のリスクは?正しい知識と注意点を獣医が解説

犬用の「抗生物質」使いどころと副作用のリスクは?正しい知識と注意点を獣医が解説

犬の感染症治療で欠かせない抗生物質。しかし使い方を誤ると効果が薄れ、副作用のリスクも伴います。正しい知識と注意点を解説します。

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東京大学動物医療センター内科研修過程修了。一般診療と皮膚科専門診療を行い、国内・国外での学会発表と論文執筆も行う。現在は製薬会社の学術担当を務めながら、犬猫について科学的に正しい情報発信を行っている。Syneos Health Commercial 所属MSL、サーカス動物病院 学術、アニー動物病院 非常勤獣医師。

抗生物質が必要になる場面とは

薬を差し出す飼い主と首を傾げる犬

犬は毎日の生活の中で、土や水、食べ物、他の犬との接触を通じてさまざまな細菌にさらされています。普段は免疫の力で病気を防いでいますが、体力が落ちていたり、病気やケガがきっかけで細菌が増えすぎると、感染症を発症してしまいます。

感染症には皮膚や耳、尿路、消化管、呼吸器、目などさまざまな部位に起こるものがあり、膿や発赤、発熱、下痢、咳などの症状を引き起こします。抗生物質はこうした「細菌が原因の病気」を治療するために使われる薬です。細菌を殺したり、増殖を抑える働きを持ち、犬の回復を助けます。

代表的な薬にはアモキシシリン、セファレキシン、エンロフロキサシン、ドキシサイクリンなどがあり、病気の種類や感染部位、原因菌に合わせて選ばれます。たとえば膀胱炎ではアモキシシリンがよく処方され、腸炎や下痢にはメトロニダゾールが用いられることがあります。点耳薬や塗り薬として使うケースもあり、獣医師の判断に基づいて処方されます。

ただし重要なのは、抗生物質は「どんな感染症にも効くわけではない」という点です。ウイルス性の病気(パルボウイルスやジステンパーなど)には効果がなく、真菌や寄生虫による病気も抗生物質では治せません。抗生物質が効くのはあくまで細菌感染が原因の場合に限られるのです。

副作用とリスクを知っておくことの大切さ

不安げな表情で床に伏せている犬

抗生物質は命を救う薬ですが、副作用がまったくないわけではありません。多くの犬では安全に使用できますが、薬の種類や体質によっては体調の変化が見られることがあります。

比較的よく見られる副作用には、食欲不振、吐き気、下痢、だるさなどがあり、腸内細菌のバランスが崩れることで消化器症状が出やすくなります。長期間の使用や広域スペクトル抗生物質の投与では、健康な腸内細菌まで減ってしまい、下痢が続いたり体調不良を起こすこともあります。そのため、獣医師が整腸剤やプロバイオティクスを併用することもあります。

また、まれにアレルギー反応が起こることもあります。皮膚の発疹やかゆみ、顔の腫れ、呼吸が苦しそうな様子が見られたら、すぐに動物病院を受診する必要があります。

もうひとつ大きな問題は「耐性菌」です。抗生物質を使いすぎたり、中途半端にやめてしまったりすると、細菌が薬に慣れて効かなくなってしまいます。これを抗生物質耐性と呼びます。一度耐性菌が体内に定着すると、次に同じ薬を使っても効かず、より強い薬が必要になったり、治療が難しくなったりします。人間医療でも社会問題になっている耐性菌は、犬の世界でも同様に深刻なリスクなのです。

そのため、飼い主が独自の判断で市販薬や人間用の抗生物質を使うのはとても危険です。人間と犬では体格や代謝が異なるため、同じ薬でも安全な量は違います。

正しく使うためにできること

獣医師が差し出す薬を見つめる犬

抗生物質を安全に、そして効果的に使うためには、飼い主と獣医師の連携が欠かせません。まず、感染症が疑われるときは必ず動物病院を受診し、原因を調べてもらうことが第一歩です。

獣医師は症状や検査結果をもとに、適切な抗生物質と投与量、期間を決定します。処方されたら、指示通りに最後まで投与を続けることが重要です。途中でやめると、症状が治ったように見えても細菌が残って再発したり、耐性菌を生む原因になります。

また、投与中は犬の様子をよく観察することも大切です。食欲の変化や下痢、発疹など気になる症状があれば、すぐに獣医師に報告しましょう。薬の種類を調整したり、整腸剤を併用することで副作用を軽減できる場合があります。

抗生物質は「万能薬」ではありませんが、正しく使えば犬の健康を守る強力な味方です。逆に誤った使い方をすると、犬自身だけでなく社会全体にとっても耐性菌というリスクを広げてしまいます。飼い主ができる最も大切なことは、「自己判断で使わず、獣医師と相談して正しく使う」ことに尽きます。

まとめ

犬に薬を飲ませようとしている光景

抗生物質は犬の細菌感染に欠かせない薬ですが、副作用や耐性菌のリスクもあります。必ず獣医師の指示に従い、正しく使うことが愛犬を守る鍵です。

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