「元気そう」な今だからこそ、健康診断が大切です
犬は言葉を話せないだけでなく、本能的に不調を隠してしまう動物です。私たち人間のように「ちょっとお腹が痛い」と訴えることはなく、日常生活では元気に見えていても、実は内側で病気が進行していることも珍しくありません。
さらに犬は、私たちよりもずっと早く年をとります。よく「1年で7歳年を取る」と聞きますが、実際にはそれよりも早く、特に成長期の子犬では1年で人間の15歳ほどに相当します。
その後も犬種や体の大きさによって違いはありますが、毎年およそ4〜5歳分ずつ年を重ねていきます。小型犬では6歳ごろから中年期に、大型犬であれば同じ年齢でもすでにシニア期に差し掛かっているのです。
こうした背景から、若いうちは年に1回、シニア期に入ったら年に2回の健康診断がすすめられています。見た目に異常がなくても、将来の病気を防ぐためには「今」の健康状態を知っておくことがとても大切なのです。
健康診断では、全身を丁寧にチェックします
健康診断では、まず獣医師から普段の生活について飼い主に詳しい情報が求められます。食事の内容、飲み水の量、トイレの様子、運動量、日々の行動や気になる変化など、些細なことでも健康状態のヒントになります。
その後、身体検査が行われます。体型や筋肉のつき方、毛づやや皮膚の状態を見て、脱毛やフケ、乾燥・ベタつきなどの異常がないかを確認します。
目の充血や涙、耳の汚れや炎症、鼻や口のにおい、歯石の有無なども細かくチェックされます。心臓や肺の音を聴診し、異常なリズムや雑音がないかも確認されます。
さらに、お腹の中にしこりや違和感がないか、内臓の大きさや位置に異常がないかも触診で確かめます。
こうした検査はとても自然な流れで進められるため、飼い主自身が気づかないうちに完了していることもあるほどです。
また、年齢や体調に応じて、血液検査や尿検査、便の検査も行われます。血液検査では貧血や内臓の働き、感染の有無などを調べることができます。尿検査では腎臓や泌尿器の健康状態を確認できますし、便の検査では寄生虫の有無などがわかります。
中高齢の犬では、甲状腺ホルモンの検査や、レントゲン検査によって関節や内臓の状態を詳しく調べることもあります。これらの検査により、見た目では分からないごく初期の異常を見つけることができるのです。
早期発見は、愛犬の命と家計を守ることにもつながります
健康診断には費用がかかりますが、それでも受ける価値は十分にあります。なぜなら、多くの病気は早期に発見できれば、シンプルな治療や生活改善で管理できることが多いからです。
たとえば、慢性腎臓病や心臓病といった進行性の病気も、初期に見つかれば内服薬や食事療法で進行を遅らせることができます。しかし、症状が出てからではすでに手遅れになっていたり、治療費が高額になったり、愛犬にとっても体の負担が大きくなってしまいます。
また、健康診断ではワクチン接種のタイミングや寄生虫予防のプランも相談できます。これにより、生活環境に合った予防を効率よく行うことができ、トータルの健康管理がより確かなものになります。
「今は元気そうだから大丈夫」ではなく、「今元気なうちに、しっかり確認しておこう」と考えることが、愛犬の未来を守る第一歩です。
まとめ
犬は人間より早く年を取り、不調も隠してしまうため、健康診断は早期発見と予防のためにとても重要です。将来の病気や不安を減らすためにも、定期的なチェックを習慣にし、愛犬と健やかな時間を長く楽しみましょう。