夏になるとどんなことが起こる?
夏になると、私たち人間も暑さで体調不良になったり、いわゆる「夏バテ」になることもあります。わんちゃんも夏になるとなんとなく元気がないなと感じている飼い主さんも多いのではないでしょうか。
毎年同じような時期に下痢をしたり体調を崩して受診するというお話もよく聞きます。夏になるとどんなことが起こって食欲不振につながるのでしょうか。
散歩量の低下などによる運動不足
夏は暑さにより、熱中症の危険性があるため昼間のお散歩はおすすめできません。そのため、お散歩時間が普段よりも減り、運動不足により体力の発散が不充分と感じ、ストレスを感じる場合もあります。
お散歩が大好きな子には、大きなストレスとなって元気がなくなり、食欲不振につながることも考えられるでしょう。
中・大型犬の子は特に普段の運動量も多いため、夏場の急激な運動量の低下は精神的な負担になり得るので、何か他の発散などの方法が必要になる可能性が高いです。
わんちゃんは暑さに弱い…なぜ?
わんちゃんは暑さに弱いと言われていますが、それはなぜなのでしょうか?
まず人間と異なり、夏の暑い季節も被毛に覆われています。犬種や個体差がありますが、被毛の量によってはより体温が上がったままでこもりやすい環境を作ってしまう危険性があります。
また、人間は汗をかいて体温調節をすることが可能ですが、汗腺の分布がわんちゃんは人間と異なるため、汗をあまりかかず、汗による体温調節が苦手です。そのため体温を放散することが苦手なため暑さが苦手な子が多いです。
夏場の食欲不振
夏の暑さによる体力消耗や、発散不足、運動時間の短縮による腸運動の変化などにより、食欲不振が見られる場合があります。
一時的なものであったり、持続するわけではなく、その日によって波があるなどの変化が見られることも多いです。
特に夏になると毎年繰り返すという子もいるため、何年も一緒に暮らしていると、おうちのわんちゃんの夏の傾向も見えてくることもあるでしょう。
しかし、季節性のものと決めつけることも望ましくありません。病気のサインである可能性もあるため、併せて見られる症状や食欲不振の程度などを見て評価するよう心がけましょう。
夏場の食欲不振対策
夏場に比較的よくみられる食欲不振ですが、お家で対策をとることも大切です。
食欲不振で何も食べないままでいることや、好むおやつばかり与えることは健康面でもトラブルにつながる危険性があります。
ではどのような対策をとればよいのでしょうか。
食欲の確認
日常的な食欲の確認はとても大切です。
まったく食べなくなるとわかりやすいですが、その状態は食欲廃絶と呼ばれ、あまり全身状態もよくない状況です。その前に食欲が落ちていることに気づけることが理想でしょう。
食べる量が少なくなっていることはわかりやすい徴候ですが、他にも食欲不振とみられる徴候は挙げられます。
例えば、ごはんを完食するまでの時間がかかることやおやつは食べるけれど普段のごはんは食べないなども食欲不振の徴候の一つです。日常的に気を付ける習慣をつけましょう。
おいしいものを少しプラス
総合栄養食としてドッグフードを主食で与えることはとても大切です。しかし、食欲が少し落ちているときにどの程度落ちているのかということを確認するために、おいしいものを少しプラスしてあげても問題ありません。
おいしいものだけを与えてしまうと、ご飯を食べなくなってしまうなどの懸念点はありますが、きっかけとしておいしいものをトッピングすることで、食欲が復活する可能性もあります。
食欲不振のときにこれなら食べる!というものを探しておくことも大切です。
ひんやりするなどの触感の変化や嗅覚への刺激を
暑さに弱いわんちゃんたちに、体も冷やせるようなひんやりする触覚の変化や、おいしそうと感じさせるような嗅覚への刺激を与えることも、食欲不振を解消することにつながる場合もあります。
だし汁やウェットフードなどを凍らせたり、凍らせたものをかき氷状にしてトッピングするなども良いでしょう。
しかし、冷やしてあるものの場合、においがしづらく、鼻が詰まっている子や食欲不振の子にとっておいしさを感じにくくなることもあります。
食欲を刺激したい場合、わんちゃんたちは味覚よりも嗅覚を頼っておいしさを感じるため、人肌程度に温めるなど、においをより感じられるようにすることもおすすめです。
夏場の食欲不振で考えられる健康トラブル
夏場の食欲不振は暑さのせいではと結び付けて考えてしまいがちですが、実は健康トラブルの可能性もあり得ます。
夏場に起こりやすい、または悪化しやすい健康トラブルについてお話させていただきます。
熱中症
最も考えられるのが熱中症です。
熱中症は屋外でのみ起こるトラブルではありません。室内でも、高温や多湿になった場合、熱中症に陥る危険性があります。
重度の熱中症は意識の消失や神経症状などの死の危険につながるわかりやすい症状で気づきやすい傾向がありますが、軽度の場合は他の疾患との区別がつけづらい傾向もあります。
例えば、食欲不振、元気消失、下痢や嘔吐などの消化器症状、呼吸促拍および開口呼吸なども熱中症の初期症状や軽度の場合の症状として挙げられます。疑わしい場合、すぐに室温を下げ体を冷やすことや、受診を検討しましょう。
便秘などの消化器トラブル
暑さなどによる体力の消耗や、疲労などでわんちゃんは消化器症状を起こしやすい傾向があります。
下痢や嘔吐、併せて食欲不振などが見られる場合は食事の質や量の調節、環境の見直しなどを行いましょう。続く場合や、程度が悪化する場合は受診をすることをおすすめします。
また運動不足や腸運動の低下などにより、便秘が起こることも考えられます。その場合、食欲不振や食べた直後の吐出などが見られる場合もあるでしょう。
しかし、便秘の有無はお腹の触診やレントゲン検査でないと確定することが難しいです。疑わしい場合は受診をしましょう。
暑さによる心疾患の悪化
夏場などの急激な温度変化や体に負担のかかるような環境への変化で起こりやすいのが心疾患の発覚や持病の心疾患の悪化です。
食欲不振や運動不耐性と呼ばれるあまり運動を好まない変化が見られることが多いです。
併せて発咳や呼吸の変化なども見られる場合があります。心疾患を持病として持つわんちゃんや好発犬種のわんちゃんは注意して観察しましょう。
程度によっては死に至る危険性もあります。できれば早めの受診を心掛けましょう。
まとめ
人間でも体力を消耗する高温多湿な日本の夏は、わんちゃんにとっても体に大きな負担をかけ、食欲不振などのトラブルとして変化が起こる場合があります。
季節性の一時的なものなのか、重大なトラブルの徴候なのかということを見極めることはとても大切です。
お家でできる対策も把握したうえで、試してみても変化がないようであれば早めに受診をする準備をしておくと、悪化する前に対処することが可能です。
夏の準備としてわんちゃんの体に起こることを知っておくと安心です。