手術が必要な場合…どんな病気が考えられる?
現代では医療も進歩してきたため、病気の程度や発見した段階によっては内科的治療や外科的治療の両方が選択できるケースも増えてきています。
麻酔をかけて行う処置の中でも、内視鏡などの体への負担が少なくて済む方法なども選択肢の一つに挙げられる場合があります。
病気によっては、命を救うために手術という選択肢が不可欠な場合もあります。どのような病気の場合が考えられるのでしょうか。
一部になりますが、手術が必要とされることが多い病気について挙げさせていただきました。
腫瘍
まずよく知られているのが腫瘍です。
腫瘍の中でも化学療法と呼ばれる内科的な治療や放射線治療と呼ばれる治療方法で処置を行う場合と選択ができる場合もありますが、腫瘍の種類によっては周囲の細胞への侵襲性があるものや、転移するリスクがあるものなど、手術という治療方法が第一選択となる腫瘍も存在します。
まず腫瘍の種類を把握するために、腫瘍に針を刺して細胞を採取して検査を行う場合もありますが、より腫瘍組織を正確に判断するために、腫瘍を切除したうえで組織検査を行い、治療方針を立てることもあります。
切除範囲も腫瘍の種類によって様々で、腫瘍のみを切除する場合や、広がるスピードが速い場合は広い範囲で切除が必要な場合など様々です。
おうちのわんちゃんの場合はどのような手術になり得るかをきちんと聞くことが、安心にもつながります。
尿路結石
膀胱や尿道にできた結石が尿道をふさいでしまう病気です。
程度によっては閉塞が起こってしまうため、尿毒症などにつながる危険性があり、注意が必要です。
砂状のものであれば、カテーテルを通して膀胱洗浄をする場合やサプリメント・療法食などによって溶かす内科的治療を行う場合もありますが、大きな石状になっている場合であれば手術によって摘出する治療が第一選択になります。
尿が排出されないと、尿毒症になるだけでなく、腎臓にも大きな負担をかけ、わんちゃんへの負担だけでなく命の危険に直結することもあるため、早急に決断しなければなりません。
異物の誤食
異物を誤食することで腸閉塞が起こる危険性があります。
完全にふさがってしまう完全閉塞や、部分的な閉塞が起こり通過できるものとできないものとが生じる不完全閉塞があります。
完全閉塞の場合、激しい嘔吐などの症状が見られることがあり、異物の除去を早急に行わないとならないケースが多いです。
不完全閉塞の場合、一部は通過できるため、症状の発言や見られる変化も緩やかであり、発見が遅くなることがあります。
異物によっては中毒症状も併せて起こる場合や腸の壊死などのトラブルにつながる危険性があり、命の危険に直結する怖いトラブルです。
異物の大きさや場所によっては内視鏡で摘出できる場合もありますが、胃や腸を切開して摘出する必要があるケースもあります。
手術を行う際に考えられるリスク
手術は基本的に麻酔を使用して行います。
手術そのものに対するリスクはもちろんありますが、麻酔をかけることによって全身に負担がかかることもリスクになり得る場合もあります。どのようなリスクを獣医さんたちは考えているのでしょうか。
全身状態による影響
その子の全身状態によって、麻酔をかけたり、手術によって出血をさせることがリスクになり得る場合が考えられます。
栄養失調状態で体力の消耗が見られる状態、貧血がすでに起きていてさらなる出血が起こると貧血の程度が進んでしまい危険な状態、呼吸の異常が見られていて呼吸数がさらに低下することが体に負担をかけるであろう状態などが命の危険に直結するため、手術を踏みとどまる場合や輸血の準備などリスクを軽減するための準備が必要となることもあるでしょう。
肥満状態の場合も、体内に蓄積された脂肪と麻酔は結びついてしまうことが多く、麻酔から醒めにくくなるというリスクもあるため、手術前にダイエットを計画することも。
安全に手術を行うために、正しく全身状態を把握することはとても大切です。
持病による影響
持病によって、手術をすることに大きな影響を与えることもあります。
例えば、凝固系と呼ばれる止血に働く機能が問題がある場合、手術で出血をした際に止まらなくなってしまうリスクがあるため、充分な対処が必要となります。事前に検査を行って、問題がないことを確認することもあるでしょう。
他にも薬剤の代謝に関連する肝機能や酸素供給を全身に行うための呼吸器、循環器の持病も手術時に考えられるリスクを軽減するために、事前に状態を把握し、投薬などで少しでも良い状態で維持することが大切です。
手術後の経過
手術後の経過をどの程度見るかということも、その後の寿命の長さや体調の改善につながります。
消化管の切開をしたのであれば自力でご飯を食べて排泄ができるようになること、膀胱切開をしたのであれば術後自力で排泄ができるようになることなど、術前に問題となってできなかったことが、術後自力でできるかどうかということも退院後の生活に大きく影響を与えます。
器官を切除した場合も、切除後の器官の数値が維持されているかということや、わんちゃんの生活に大きな負担がかかっていないかということが大切です。
腫瘍によっては、顎などを大きく切除しなければならない場合、断脚をしなければならない場合などもあり得るため、術後の生活がどのように変化するかということも考えなければなりません。
手術を行うにあたり、飼い主さんが気を付けたいこと
治療を行うにあたり、決断するのは飼い主さんですが、選択肢を提示するのは獣医療の知識のあるかかりつけの先生や手術を行う先生しかいません。
手術を決断するにあたり、リスクを軽減して手術に臨むために飼い主さんができることはどんなことでしょうか。
日常的に健康診断を行って全身状態を把握する
わんちゃんの全身状態は見た目だけではわからない部分もあります。
体内の器官が問題なく機能しているのか、見えないところでトラブルが起こりかけているのかということは血液検査やレントゲン検査、超音波検査などでしかわからないこともあります。
病気の時に検査を行うことで、その時の全身状態は把握できますが、健康な時はどのような状態だったかということはわかりません。
健康なときに、その子の持つ体の機能の状態を把握することや、麻酔をかけるという判断をするにあたって健康な時の健康診断で問題ないかということの評価をすることが、手術をするかどうか迷ったり、麻酔を本当にかけても問題ないか考える際にとても大切です
かかりつけの先生としっかり相談できる信頼関係を築く
手術をするしかないケースであっても、本当にしても大丈夫なのかということや、自分の決断が間違っていないかということが不安になることもあるでしょう。
手術をするかしないかどちらかを選べたとしても、一般の飼い主さんが最善の策を自分一人で考えて選択するということは簡単なことではありません。
手術をするという選択肢をとった場合、どのようなメリットがあってどのようなリスクがあるのか、なぜ先生はその選択肢をおすすめするか、飼い主さんがどんなことを不安に思っているかということをたくさん話をすることが大切です。
そのために、かかりつけの先生や手術を行う先生と充分な信頼関係を築き、不安のない状態で選択することが、どんなことがあっても後悔を少なくすることにつながるでしょう。
麻酔をかける以上、リスクを0%にすることは難しいとされています。起こり得る様々なことを考えたうえで、後悔の少ない選択をすることが大切と思います。
目先のことだけでなく手術後のことまで考える
手術を行うことは麻酔をかけて行うため、大きな不安も伴うでしょう。しかし、手術を行うことでおうちのわんちゃんのどんなメリットがあるのか、寿命が延びるなどの大きなことにつながる可能性も考えられます。
また、定期的な受診や処置による治療がおうちのわんちゃんにとって大きな負担となっている場合、手術を行うことで除去できるため、軽減されるというケースもあるでしょう。
手術後におうちのわんちゃんがどんな生活をすることになるのか、その時に負担となり得ることや得られる大きなメリットをよく考えることで、手術を行うかどうかという決断もしやすくなる可能性が高いです。
まとめ
麻酔をかけて行う手術が必要と診察されたときに、恐怖や不安で頭が真っ白になる飼い主さんも多いでしょう。しかし、手術によって大きなメリットを得たり、負担が軽減されることもたくさん考えられます。
飼い主さんにできることを普段から行いながら、一人で悩まず、かかりつけの先生などとタッグを組んで相談を充分に行いながら決断できると安心です。
手術が必要になることは、どんな子にも起こり得るため、おうちのわんちゃんには絶対に無関係とは言い切れません。
おうちの子がそのようなケースになった時に、飼い主さんもパニックにならないよう、シミュレーションをしてみても良いでしょう。その際にこの記事がお役に立てたらうれしいです。