犬が注射で大暴れする気持ち
注射のたびに抵抗し大暴れしてしまう犬がいる一方で、注射が平気な犬がいることは確かです。この違いはどこにあるのでしょう。それは、犬の心理状態に大きく左右されると言っても過言ではありません。
では注射を嫌がる犬の心理とはどういったものでしょうか。犬の気持ちを想像しながら一緒に理解を深めていきましょう。
その1
「痛い」。犬は人よりも痛点の数が少ないことから、人に比べて痛みにはやや強い傾向にあると言われています。しかし、これには個体差があります。注射は針が体に刺さり、冷たい液体が流れ込む刺激がありますから、これを痛いと犬が感じるのは当然のことですね。
その2
「怖い」。人の子供が注射を怖いと感じるのには理由がいくつかあります。みなさんも幼少期の注射のシーンを思い出してみてください。例えば、消毒薬の匂い、白衣のお医者さんや看護師さん。光る医療器具…。
それに、いつもよりも緊張気味の親御さんの表情や仕草など...。そう。犬が注射を怖がる心理にはシチュエーションの他に、飼主さん自身の怖いという心理が犬に伝わってしまうことがあります。
「この子は注射を痛がらないかな」。「また泣き叫ばないかな」。などといった気持ちはよく分かりますが、そのような表情や声はなるべく抑え、犬がリラックスするように心がけると良いでしょう。
その3
「不安」。動物病院では注射時に看護師さんが犬を預かることが多いですね。看護師さんはプロですから「保定」と呼ばれる体勢で犬を抱き、安全な姿勢にした上で獣医さんが注射をします。
でも、看護師さんではなく飼主さんが犬を抱いた状態で注射をする動物病院もあります。この場合、飼主さんの抱き方が不安定で頼りなかったり、逆にギューッと必要以上に苦しい抱き方をされると、犬は不安に感じます。
ただでさえ安心できない状況の中、自身の体を支えてもらえないとなると、犬の不安は募るばかりです。そうなれば、不安の気持ちから「助けて~!」と、大きな鳴き声を上げるのも無理はありませんね。
ここでキーとなるのは「保定」という安全な抱き方です。どなたでもすぐにマスターできますから、健康診断などの際に看護師さんや獣医さんに教えてもらい、家で日ごろから練習しておくといいですよ。
記憶
ポイントをお伝えする前に、しっかり押さえておきたい犬の心理をもう一つ。注射の際に抵抗し大暴して仕方のない犬に共通するのは、注射の際に体験した嫌な記憶がある、ということ。
実は犬の記憶力については、あまり持続性が高くないというデータがあります。しかし、場所と気持ちを結びつけて記憶する力は強いと言われています。だからこそ、病院で注射=(イコール)痛い、怖い、不安といった要素が犬に刷り込まれてしまえば、同じシチュエーション下において再び記憶がよみがえることがあるようです。
フラッシュバックと言った方がしっくりくるかもしれませんね。そんな恐怖を植え付けないためにも以下のポイントを押さえ少しでも和らげてあげることが、飼主さんが愛犬にできることではないでしょうか。
注射の抵抗を和らげるポイント
• 注射時、まずは飼主さんがリラックス
• 待ち時間はマッサージなどで緊張から体をほぐす
• 保定の仕方をマスターし、練習する(このとき必ず褒める)
• 注射時、犬が不安になるような声や仕草を控える
• 散歩コースに何気なく動物病院の前を通るようにする
まとめ
いかがでしたか。大事なのはテクニックではなく、犬の気持ちを理解し恐怖を和らげることだということがお分かりいただけたかと思います。注射が怖くて毎回大暴れしてしまうと、平気な犬の違い。それは、犬の個体差の他に、飼主さんの気持ちや心構えも大きく関係しているのですね。
犬と暮らす上で、予防接種をはじめとする注射は避けては通れないもの。大暴れを中暴れに、中暴れを小暴れに。そしていつしか注射なんか平気!という子になるのは飼主さん次第なのかもしれません。