椎間板ヘルニアとは
「ヘルニア」とは臓器が正しい位置から外へ飛び出してしまうことを言います。椎間板ヘルニアは、脊髄という神経の束を押しつぶしてしまう神経の病気です。神経がダメージを受けることで痛みや、足、排泄機能の麻痺など、さまざまな症状が表れます。
動物病院ではこの症状の重さによってグレードをⅠ~Ⅴまで段階的に分け、それぞれのステージに合わせ治療をしていくのが一般的です。椎間板が脊髄へ圧迫を起こす場所や程度がちがいますので、その子の痛みがどこで起きているのかに注意する必要があります。例えば首のヘルニアでは首から前足への症状が見られますが、胸、腰のヘルニアでは後ろ足に症状が出ます。
程度により手術が必要だと判断されることもありますが、その際はリハビリを十分に行うことが大事だとされています。では、どうして椎間板ヘルニアになってしまうのでしょうか。原因と症状を見ていきましょう。
椎間板ヘルニアの原因1.加齢
ひとつ目の原因は、加齢によるもの。ヘルニアが起こる仕組みは不明な点も多いですが、加齢により椎間板の性質が変性し、脊髄(せきずい)が圧迫されることで麻痺などの症状が起こります。
椎間板ヘルニアの原因2.遺伝的要素
2つ目の原因は、遺伝的な要素によるもの。「軟骨異栄養症」と呼ばれる遺伝子を持っている犬は、本来ゼリー状である髄核(ずいかく)が生まれつき固くなりやすいと考えられます。衝撃を吸収するクッションの働きをするはずの髄核が、水分を失うことで弾力性を失い脊髄を圧迫するため、椎間板ヘルニアの症状が現れ始めます。
「軟骨異栄養症」とは一体何でしょうか。これは骨格が作られる際に通常大きく伸びるはずの骨に障害が起きて骨が伸びなかったりする遺伝子のことで、この遺伝子を持つ犬種にはダックスフンド、コーギー、バセットハウンド、フレンチブルドッグ、ペキニーズ、ビーグル、シーズなどがあげられます。
骨の成長期(生後6ヶ月~2歳)の段階から椎間板の変性が始まり、若年齢期(2~7歳)に椎間板ヘルニアを発症する場合も。シニア世だけでなく、若いうちから発症することもあるということを前もって知っておけばいざという時も落ち着いて対処できますね。
椎間板ヘルニアの原因3.過度な運動
3つ目の原因は、過度な運動によるもの。人でも部活の練習中に椎間板ヘルニアになったという話をよく聞きますね。ワンちゃんの場合も同じように、ドッグランで激しすぎる遊びを長時間した後や、高さのあるところからジャンプなどをした際に注意が必要だと言われています。
運動はワンちゃんにとって日々の楽しみのひとつ。思わぬ衝撃で背骨などにダメージを与えてしまわないように、適度な運動を心がけましょう。また、室内で運動した場合でも、床が滑りやすかったり、高すぎる段差を飛ばせたりするのは少し危険かもしれませんので、家族全員で気を付けてあげたいですね。
こんな症状が見られたら気を付けて
椎間板ヘルニアを発症しても、初期には痛みがわずかであったり、たまに痛みがある程度だったり。そんなとき、話すことができないワンちゃんの様子を観察し、いち早く飼主さんが愛犬の変化に気づいてあげられたらいいですね。
椎間板ヘルニアの症状には、以下のようなものがありますので、どうぞご参考になさってみてください。
- 歩きたがらない
- 背中に触れると痛がる
- ソファなどに飛び乗らなくなった
- 抱っこすると「キャン!」と悲鳴をあげる
- 腰が立たない
- 排泄のコントロールができない
などなど。
軽度であれば、「なんとなく激しい運動をしなくなった」と感じる程度で、なかなか症状に気がつかないこともあります。病状が進行してくると、足元がふらついたり引きずるような歩き方になります。
さらに病状が進行し重度となると突然立ち上がれなくなったり、自身の力で排尿・排泄のコントロールできなくなることもあります。骨折、脱臼、腫瘍、脊椎炎などでも椎間板ヘルニアと似た症状が見られることがあるので、気になる症状が出ている場合は早めに病院で検査を受けましょう。
まとめ
椎間板ヘルニアは麻痺や強い痛みなどがみられる怖い病気ですが、早めに診察をし、適切な治療をすることが大事です。家庭でも、腰や首に負担をかけないように配慮してあげてください。
また上記に加えて、抱っこの仕方も注意したい点のひとつです。最近よく見かけるのですが、いわゆる「縦抱き」と言ってワンちゃんの両脇の下だけを持き上げる抱き方です。これは脇を痛めるだけでなく、背骨にも相当な負担をかけますので、やはりワンちゃんは、包み込むように横向きで抱っこをするのが良いでしょう。