子供のためのプログラムとセラピードッグ
子供のためのセラピードッグには病気療養中の子供を訪問するプログラムの他に、本を音読する子供の隣にジッと座って聞き手になったり、子供の学習セッションの場に参加したりするようなプログラムがあります。
このような子供の学習の場に犬が参加するタイプのプログラムでは成果の部分に目が向けられがちで、子供の感情面のデータが今まであまりなかったのだそうです。
カナダのブリティッシュ・コロンビア大学の教育学の研究者が、子供のための社会的スキルトレーニングのプログラムにセラピードッグが参加したときの子供たちの反応についてリサーチを行い、その結果を発表しました。
犬に見守られながらの社会的スキルトレーニング
このリサーチでは5歳から11歳の22人の子供たちが、社会的なスキルを身につけるためのトレーニングプログラムに参加してデータが収集されました。プログラムの期間は6週間で、子供たちは自己紹介の仕方や他の人に指示をする方法などのスキルを学びます。セッションには訓練を受けたセラピードッグがハンドラーとともに同席します。
プログラムの中で新しい課題が与えられたときには、グループの他の子供たちの前で実践する前にそれぞれに割り当てられたセラピードッグを相手に練習をします。
最終的には子供たちはセラピードッグとハンドラーを伴って大学生の前で習ったスキルを披露しました。かなり高度な社会的スキルのトレーニングですね。研究者はセッション中の子供たちの様子を観察、プログラム終了後にインタビューを行ってデータを収集しました。
学習に効果的なだけでなく感情面でのプラスも
研究者はセッション中の観察から、セラピードッグがいることで場の空気が和み子供たちに脅威を感じさせない雰囲気を作るのに役立っていることを目にしました。また研究チームのメンバーの87%が「子供たちは犬に対して非常に強い結びつきを感じている」と評価しました。
6週間のプログラム終了後のインタビューでは、子供たちはプログラムでの経験を楽しかったと答えています。プログラムに犬が参加していたことは大きな意味があり、欠かすことのできない部分だったと話したそうです。
ある参加者は、他の子供たちが通常のケアプログラムに参加しているときよりもセッションでの行動が良くできていることに気づいたと述べ、それは犬がいることが好きだったからだと思うと答えました。
また、犬がいることで「責任感を持ち、ふざけ過ぎるのを抑えることができた」という回答もあったそうです。学習プログラムの場にセラピードッグがいることで、子供たちのストレスが軽減され、気持ちが落ち着くことで成果が上がり自信を高めるという利点があること、そして何より子供たちは犬がその場にいることを歓迎し楽しんでいるという結論が得られました。
まとめ
子供のための学習プログラムにセラピードッグが参加することで成果が向上するというメリットだけでなく、子供たちは犬と一緒にいることを楽しんでいるというリサーチ結果をご紹介しました。
子供が犬と一緒にいることを楽しむのは当たり前ではないか?と思われる方は多いと思います。しかし研究者は、犬好きな人々は誰もが犬が好きで犬がセッションに参加することは効果的であるに決まっていると思い込んでいる傾向を指摘しています。
このような固定観念を抜きにして、犬が参加した学習プラグラムを客観的に観察し、参加者である子供たちからの聞き取り調査をしたのが今回の結果です。
思い込みではない客観的なデータとしてのセラピードッグのメリットという点で、このリサーチには大きな意味があると言えます。
《参考URL》
http://dx.doi.org/10.1080/02568543.2020.1846643
https://news.ok.ubc.ca/2021/02/17/friends-fur-life-help-build-skills-for-life/