犬は自分の身体と周囲の物との関係を理解しているという研究結果

犬は自分の身体と周囲の物との関係を理解しているという研究結果

私たちは自分自身の身体が周囲の物や人に対して邪魔になることがあるというのはごく当たり前に認識しています。犬にはこのような認識はあるのだろうか?という研究結果が発表されました。実験と研究の内容をご紹介します。

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犬の自己認識

鏡に映る自分の姿を見ている白いテリア

自己認識という言葉、何となく分かるような分からないような曖昧な感じですよね。ビジネス書や啓発系セミナーなどで「自己認識を高めよう」というと自分の性格や能力を客観的に評価して足りないところを高めて自信を持とうというような意味ですが、犬の場合はもちろんこういうことではありません。

心理学の分野での自己認識を簡単に説明すると、自分が周りの環境や周囲の生き物とは別の存在であると認識する能力のことを言います。動物が自己認識を持っているかどうかを確認するための手法の1つに、ミラーテスト(自己鏡像認知テスト)というものがあります。

ミラーテストとは、動物の顔に小さく赤い印をつけた後に鏡を見せて、赤い部分を気にして触ったりすると鏡に映っているのが自分であると認識しているとするものです。

チンパンジーやイルカ、ゾウなどはミラーテストでの自己認識があるとされていますが、犬では鏡に映った自分の顔の赤い印を気にすることがなく、犬には自己認識がないとされていました。

しかし近年の研究では、犬は自分自身の匂いについて他者の匂いと明確に違う反応を示すことなどから、鏡像とは違う形で犬も自己を認識していると言われています。

先ごろ発表されたハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学の動物行動学の研究者による論文では、犬が自分自身の身体と周囲の物とを明確に分けて認識しているかどうかという「身体認識」についての実験と結果が報告されています。

犬の身体認識を確認するための実験

ボールを咥えたシェルティ

大人にとっては自分の体が明確に独立した物体であるというのは当たり前と感じる認識ですが、これは生まれついてのものではなく、通常12〜18か月齢で理解するのだそうです。

人間の幼児に対する自己認識テストは、子供が毛布の上に座っている状態のときに「その毛布をちょうだい」と言ったとき、子供が立ち上がって毛布を手渡すかどうかという方法が使われてきました。

毛布から離れる=自分の身体が毛布に対して障害物であると理解しているということです。今回紹介する研究では、犬に対してこの方法が応用して使われました。

研究チームは犬の服従訓練大会などで「ハンドラーから指示を受けるとおもちゃを咥えて手渡すことができる」という要件を満たした犬をスカウトしました。犬のサイズや犬種は様々で最終的に32匹の犬が実験に参加しました。

犬はマットの上に座り、同じくマットの上に置かれたおもちゃを手渡すよう指示を受けます。ただしおもちゃはマットに縫い付けられており、指示に従っておもちゃを手渡すためには犬がマットから降りる必要があります。

犬たちは「おもちゃがマットに縫い付けられている」条件の他に、比較として「おもちゃは縫い付けられていない」「おもちゃがマットではなく地面に固定されている」「おもちゃは置かずマットを引っ張って揺らす」という条件でテストを受けました。

こちらは実験の様子を録画したビデオです。

実験の結果からわかったことは?

首を傾げたラブラドールレトリバー

多くの犬たちはマットに取り付けられたおもちゃが持ち上がらないと分かったとき、マットから降りておもちゃを咥えてハンドラーに渡しました。その割合は32匹中27匹でした。自分がマットの上に立っていることと、おもちゃが持ち上げられないことの関係を理解していることを示しています。

地面に固定したおもちゃはマットから降りても持ち上げられないのですが、マットから降りて試みた犬は32匹中14匹でした。しかし、降りた犬たちもマット縫い付けのときと比べると降りるまでに時間が長くかかっており、自分が立っていることとおもちゃが持ち上げられないことに関連がないと理解したことが示されました。

マットに縫い付けたおもちゃを持ち上げようとすると犬が座っている足元のマットが動いて不快なのでマットから降りたのではないかを検証するため、おもちゃは置かずマットだけを揺らす実験ではマットから降りた犬は5匹でした。縫い付けられたおもちゃを引っ張ったためにマットが動いたことで降りたというのではないことが分かります。

つまり犬たちは「自分の身体は障害物である」ということを認識しており、それがおもちゃが地面に固定されているような単なる障害物とは区別していることも示されました。これらは犬の身体認識についての証拠として最初のものだそうです。

まとめ

一緒に遊ぶシーリハムテリアとゴールデンレトリーバー

犬の自己認識のうち身体認識を確認するために「障害物としての自分の身体テスト」を実施した結果、犬は自分の身体と周囲の物体の関連を理解し認識しているということが判ったという研究をご紹介しました。

動物が自己を認識するのは鏡に映った姿だけではないということが、この実験から分かります。犬が何をどのように認識しているかを知ることは、犬の福祉を守るために非常に大切です。今後さらに犬の自己認識の研究が進み、犬の意識が理解できるようになるのが楽しみです。

《参考URL》
https://www.nature.com/articles/s41598-021-82309-x

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