人間の感情を嗅ぎ取った時の犬の行動は犬の性別によって違う【研究結果】

人間の感情を嗅ぎ取った時の犬の行動は犬の性別によって違う【研究結果】

人間の感情によって汗などに含まれる化学物質のために匂いが変化する時、オス犬とメス犬ではその匂いに対する行動が違うという研究が発表されました。その内容をご紹介します。

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犬は人間の感情を嗅ぎ取ることができる?

手の匂いを嗅ぐハスキー

飼い主がハッピーな時、落ち込んでいる時、愛犬がその感情を読み取るというのはよく聞かれるエピソードです。

人間は、ストレスや嬉しいという気持ちを感じた時に、特定のホルモンなど化学物質を分泌するため汗や体臭が変わります。

人間には感じ取れないほどの僅かな差でも、犬がその違いを嗅ぎ取ることは容易に想像できます。

先ごろ発表されたイタリアのフェデリコ2世ナポリ大学生物学部の研究は、人間の感情を嗅ぎ取る犬の行動について、さらに踏み込んだものです。

感情の匂いを嗅いだ時の犬の行動パターンについて、年齢、犬種、性別などによって違いがあるかどうかを観察分析した時、犬の性別による違いが確認されました。

実験のために『感情の匂い』を収集

テレビを見ながら怖がっている男性

人間の感情によって分泌する化学物質が変化し、その違いを犬が嗅ぎ取るという実験のために、「感情の匂い」を収集する必要があります。

それは以下のような手順で行われました。

研究者は、8人の男子大学生に対してビデオを視聴するよう依頼しました。

8人は、「恐怖とストレスを感じさせるビデオ」と「幸福感とリラックスを感じさせるビデオ」を視聴し、その間脇の下に汗と匂い収集用のパッドを当てていました。

集められたパッドは冷凍保存され、全てのパッドはテストの前に4分の1にカットして、他の3人の同じ感情のサンプルと一緒に1つの容器に入れます。

これは、4人分のサンプルをミックスすることで、恐怖や幸福感などの匂いを平均化して個人差による違いを小さくするためです。

テストには、この「恐怖ストレス感情の匂いサンプル」と「リラックス幸福感の匂いサンプル」の他に、パッケージから出したばかりで全く使用されていないパッドが対照サンプルとして用意されました。

『感情の匂い』を嗅いだ犬たちの行動は?

困り顔のチョコラブ

観察のための実験に参加したのは、84頭のゴールデンレトリーバー またはラブラドールレトリーバーでした。全員が普通の家庭犬です。

実験室は、全ての犬にとって未知の場所で、部屋の真ん中に匂いのサンプルが入った装置、部屋の2つの隅に椅子が対角線上におかれ、1つの隅には犬の飼い主が、もう1つの隅には犬にとって未知の人である実験員が座りました。

犬が部屋に入ると、装置が開放されて匂いが嗅げるようになります。それぞれの匂いを嗅いだ時の犬たちの反応の違いは顕著でした。

恐怖ストレス感情の匂いを嗅いだ時、犬はストレスを表すパンティング、あくび、口を舐める、吠える、ウロウロするなどの行動を示しました。また、飼い主の側に来て注意を引こうとする行動も示されました。

恐怖ストレス感情については、犬の性別による違いは確認されませんでした。

一方、リラックス幸福感の匂いを嗅いだ時、オス犬は特に目につくような反応を見せませんでした。

その行動は、匂いを付けていない対照サンプルの時と変わらないものでした。

メス犬がリラックス幸福感の匂いを嗅いだ時には、飼い主と反対側に座っている見知らぬ実験員への関心を示す行動を見せました。

なぜオスとメスとで行動パターンが違うのだろう?

ゴールデンレトリーバー の母子

研究者は、なぜオス犬とメス犬では違う行動パターンを示すのだろう、という点を考察しました。

考えられる可能性の1つは、メス犬はオス犬よりも子育てにより多く関与するため、他者の幸福感に敏感に反応することが、社会的関係を強化するのに役立つからというものです。

社会的関係が強化されることで、子犬に対する寛容性および他の犬との関係が良くなり、子犬の世話における社会的協力が得やすくなります。

しかし、オス犬がリラックス幸福感の匂いに対して反応が小さかったことが、オス犬がこの匂いの化学物質の影響を受けた可能性を否定するものではないと、研究者は強調しています。

例えば、人間の男性では同じレベルの恐怖を感じた時に、女性よりも制御された反応を示す傾向が強いそうです。

オス犬の場合にも、幸福感の匂いに対する行動が知覚の違いによるものなのか、知覚のレベルは同じでも外に現れる反応の違いによるものなのかは、この実験からはわからないとのことです。

まとめ

カップルと3頭のラブラドール

人間の「恐怖ストレス感情」から来る匂いを嗅いだ時、犬は性別に関わらずストレス行動を示し、「リラックス幸福感」から来る匂いを嗅いだ時は、オス犬はあまり反応を示しません。対してメス犬は、未知の人間に対しオープンな態度で関心を示した、という実験の結果をご紹介しました。

メス犬が、幸福感にはっきりした反応を示すのは、子育てに関わることが多いメス犬の社会的関係の強化のためではないか、という仮説も含め色々な面で興味深く、また人間と重ねて考えさせられる研究結果です。

また、犬が嗅覚を通じて私たちの感情を感じ取っているという実験から、改めて犬と人間との距離の近さを思い知らされます。

《参考URL》
https://link.springer.com/article/10.1007/s10071-021-01473-9

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