物の名前を覚える犬たち
数回の繰り返しだけで物の名前を覚えることは、人間に特有の能力だと考えられています。けれども時折りだくさんのおもちゃの名前を覚えているスーパードッグがニュースなどで取り上げられて話題になることがあります。
過去の例で言えば、ドイツのマックスプランク研究所が発表した、200以上の単語を学んだボーダーコリーのリコ、アメリカで心理学者である飼い主自身が論文を発表した、1022のおもちゃの名前を覚えたボーダーコリーのチェイサーがいます。どちらもボーダーコリーであるのが興味深いですね。
このたびハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学の動物行動学の研究チームが、犬が物の名前を覚える能力についての実験の結果を発表しました。
この実験に参加したボーダーコリーのウィスキーは以前にも同研究者の「犬は物の分類を理解できるか」という実験に参加しており、今回はその研究を見直したものでもあります。
以前の研究内容はこちら
犬は物を分類できるか?という研究ですごい結果を見せたボーダーコリー
犬に新しいおもちゃの名前を覚えてもらう
実験に参加したのはボーダーコリーのウィスキーとヨークシャーテリアのヴィッキーニーナです。2匹ともすでに数十個のおもちゃの名前を覚えています。2匹が新しいおもちゃの名前を覚えることについて、2種類の実験を行いました。
1つ目は、犬と新しいおもちゃで遊びながら、そのおもちゃの名前を4回繰り返します。同じことを2種類のおもちゃで繰り返した後に、その2つのおもちゃを床に置いてどちらかの名前を言い該当するものを持ってくるというものです。
4回繰り返しただけで新しいおもちゃの名前を覚えられるかどうかの調査ですが、ウィスキーもヴィッキーニーナも7割以上の正答率を出しました。2匹は4回という短い学習時間で新しいおもちゃの名前を覚えることができました。
もう1つはおもちゃを7つ床に置きます。そのうち1つが新しいおもちゃで犬たちが初めて名前を耳にするもので、他の6つはおなじみのよく知っているものです。飼い主がおもちゃの名前を言うと犬がそれを持ってくるという設定です。
この実験では犬たちは初めて聞く名前のおもちゃを持ってくることを要求されるので、初めて聞く言葉が出てきたときには他の名前を知っているおもちゃを除外して正解を特定するというスキルが必要です。
この実験ではウィスキーは40回の試行で正答率100%を出しました。ヴィッキーニーナは52%の正答率でした。2匹の犬が共通して7割以上の正答率を出した「飼い主と遊びながら学習する」という方法がより効果的だと考えられます。
人間の子供も他者と遊びながらというスタイルが学習効率が良いことが知られています。ただし、犬と子供の脳内のメカニズムが共通しているかどうかは未だ分かっていません。
他の犬も同じように学習できるだろうか
このように、短時間で物の名前を覚えることは人間以外の動物にも可能であることが分かりました。しかし他の犬ではどうでしょうか。
研究チームは「おもちゃを使ってモッテコイ遊びをすることが大好き」という条件で一般の家庭犬を募集して同様の実験を行いました。実験に参加した犬は20匹で、ボーダーコリー、オーストラリアンシェパード、ゴールデンレトリーバー、ベルジアンマリノア、オーストラリアンケルピーなどが含まれます。
実験の結果、20匹全員が「名前を覚えた」と言える行動を示しませんでした。このことから、物の名前を短時間で覚える能力が全ての犬に備わっているわけではないと考えられます。
研究者は今後さらに研究を進めて、この能力が一部の犬の飛び抜けた才能によるものなのか、それともウィスキーやヴィッキーニーナのように、過去に名前を覚える学習をしてきた経験から来るものなのかを調査すると述べています。
まとめ
たくさんのおもちゃの名前を覚えている2匹の犬に新しいおもちゃの名前を紹介する実験をしたところ、飼い主と遊びながらという社会的な状況では効率的に学習できたという実験の結果をご紹介しました。
他の犬との比較では、やはりこの2匹のスーパーぶりが明らかになったようですが、今後の「才能か、経験か」の研究にも注目したいと思います。
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