ペットのノミ駆除薬と河川の汚染
イギリスの環境庁がサセックス大学の生科学の研究者や獣医師と共同で、ペットのノミ駆除薬の成分がどの程度国内の河川を汚染しているかについて調査を行い、その結果が発表されました。
調査は2016年から2018年の期間に、イギリスの20の河川においてフィプロニル(およびその代謝物であるフィプロニルスルホン)、イミダクロプリドがどの程度流入しているかを明らかにするため実施されました。これらの化学物質は犬や猫のためのノミ駆除薬として、一般的に処方または市販されている製品に広く使用されている成分です。
真剣に取り組むべき調査結果
20の河川の水サンプルから検出されたノミ駆除薬に含まれる成分は看過できないものでした。フィプロニルはサンプルの98.6%、代謝物であるフィプロニルスルホンは96.5%、イミダクロプリドは65.9%に含まれていました。
フィプロニルはミツバチの大量死に関連していることが判っており、現在は農薬としての使用は禁止されています。農作物の種子への添加は許可されているため、この調査で検出された数値の全てがペットのノミ駆除薬から来ているわけではありませんが、これらの薬剤を使用している人はこの現実を知っておく必要があります。
ノミ駆除薬の成分はシャンプーなどの際に家庭の排水路から河川へ流入すると考えられます。これは河川付近に生息する昆虫に影響を及ぼします。昆虫だけでなく、それらを食べる魚、コウモリ、鳥、両生類などにも害を及ぼし、水生生態系への高い環境リスクとなります。さらに生態系の次の段階の哺乳類、そして最終的には人間にも影響が及ぶことは必至です。
私たちにどのような対策ができる?
とはいえ、愛犬のためにノミの対策は必要だし、どうすればいい?という大きなジレンマに陥りますね。研究者は可能な限りペットへのノミ駆除薬の使用頻度を減らしてほしいと述べています。大変基本的なことですが生活環境の清掃、ペットのベッドや毛布を定期的に洗濯すること、ノミ用コームの使用などが推奨されています。
また毒性の低い薬効成分ジメチコンを使った製品への移行を勧める研究者の意見もあります。そして消費者レベルだけでなく、この調査結果は規制当局によるこれらの製品と環境リスクの関連の再評価、製品の認可の際の環境リスク評価の必要性を示しています。
まとめ
犬や猫のノミ駆除薬に含まれる成分が河川に流入し水質汚染など環境破壊のリスクを高くしているという研究結果をご紹介しました。
これはイギリスでの報告ですが、日本においても決して他人事ではありません。高温多湿な日本ではペットの害虫は頭の痛い問題でその対策は必須ですが、愛犬や愛猫に使用しているものが私たちが生きている環境にどのような影響を及ぼすのかを知っておくことも飼い主の責任のひとつです。
ペットのために使用している薬剤の成分名などを把握しておくことも大切です。楽しい話題ではありませんが、一人一人の飼い主さんが考えるきっかけになれば幸いです。
《参考URL》
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0048969720370911?via%3Dihub