ツイッターによって注目された過去の犬の研究
犬という生き物は家畜化された動物の中で最も多様性に富んだ姿形をもっています。仔馬のようなサイズのグレートデーンから体重2kgにも満たないチワワ、マズルも手足もすらりと長いグレーハウンドから鼻ペチャのブルドッグまで、同じ種類の生き物とは思えないほどの違いがあります。
これほどまでに見た目が違う者同士、お互いを自分と同じ犬だと認識できるのでしょうか?猫やネズミなど他の生き物と区別することはできるのでしょうか?
この件についての研究が2013年に発表されたのですが、それが7年も経った2020年に改めて注目を集めることになりました。きっかけになったのは、ある臨床心理学の研究者がTwitterで「最高に可愛くて興味深い研究を見つけた!」と熱心に紹介したことでした。
この研究者ベンジャミン・カッツ氏は「全ての認知心理学の教科書には”人間はあれほどまでに見た目に大きな違いがある様々な犬をどうやって犬であると認識するのか”という章があります。この研究はその犬版。”犬はどうやって’他の犬を犬だと認識するのか??”」とツイートしました。
犬が他の犬や他の動物を区別して認識しているか?というリサーチ
2013年に発表されたこの研究はフランスのパリ大学の研究者によるものでした。
社会的な関わりの中では、動物は他の動物が自分の種に属しているものかどうかを判断する必要があります。他の生き物に比べて飛び抜けて外見の多様性に富む犬は、その見た目の違いを超えて他の犬を犬として認識できるかどうかを判断するというのが、このリサーチの目的でした。
リサーチのための実験には9匹の家庭犬が参加しました。犬たちはあらかじめクリッカーとトリーツによるトレーニングを受けた上で、目の前のスクリーン上に表示された2つの画像のうちのどちらかを選ぶよう指示されます。
2つの画像のうち1つは犬の顔写真、もう1つはハムスターまたは猫または人間の顔写真です。犬の画像はさまざまな犬種で見た目がそれぞれに違うもので、角度も正面顔や横顔などさまざまです。
最初の実験では犬の顔写真を選ぶと報酬のトリーツが与えられました。2度目の実験では反対に犬以外の顔写真を選んだ時に報酬が与えられました。どちらのセッションでも12回のテストで10回正解すると合格とされます。
9匹の犬たちの正解率は?
2つの実験セッションの結果はどのようなものだったでしょうか?なんと9匹の犬全員が犬の全ての画像を識別することができました。外見的に大きく違って見える犬種を含んでいたにも関わらず正解率は100%でした。
この実験では犬が嗅覚を使う機会はなかったので、犬は視覚的なイメージのみで自分の種を識別する能力を持っていると結論付けられました。
テレビに映った動物を見て喜んだり興奮したりする犬がいますが、それはこの研究が示す通り画面の中の生き物をきちんと認識しているせいかもしれないですね。
まとめ
犬は視覚的な画像だけで他の犬を犬だと認識し犬以外の生き物と区別することができるという2013年の研究結果と、それが注目されるきっかけになったのがTwitterだったという話題をご紹介しました。
実験や論文というと敷居が高い印象がありますが、一般の犬の飼い主にとっても興味深く面白いものが沢山あります。SNSがきっかけで過去の研究が一般の人にも広く知られるというのは嬉しい話題ですね。
《参考URL》
https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs10071-013-0600-8
https://www.zmescience.com/science/the-most-adorable-study-of-the-year-shows-how-dogs-recognize-each-other/