犬と飼い主に共通して見られたアレルギー性疾患に関連する要因

犬と飼い主に共通して見られたアレルギー性疾患に関連する要因

犬と飼い主は、同じ要因によってアレルギー性疾患になりやすくなっている可能性があることが分かったそうです。犬と飼い主がアレルギー性疾患を持つかどうかは生活環境やライフスタイル、体の微生物叢と関連しているとの研究結果が報告されました。

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記事の監修

東京農工大学農学部獣医学科卒業。その後、動物病院にて勤務。動物に囲まれて暮らしたい、という想いから獣医師になり、その想い通りに現在まで、5頭の犬、7匹の猫、10匹のフェレットの他、ハムスター、カメ、デグー、水生動物たちと暮らしてきました。動物を正しく飼って、動物も人もハッピーになるための力になりたいと思っています。そのために、病気になる前や問題が起こる前に出来ることとして、犬の遺伝学、行動学、シェルターメディスンに特に興味を持って勉強しています。

都市環境と農村地域、犬と人のアレルギー発症リスク

体を掻くラブラドールの子犬

犬と人の両方において、都市部の生活環境はアレルギーを発症しやすくさせることはこれまでにも様々な研究で報告されています。また今回の論文を発表した研究者たちの過去の研究では犬と飼い主の両者がアレルギー性疾患を発症しているケースと犬と飼い主の両者ともにアレルギー性疾患を持っていないケースは、犬と飼い主のどちらかだけがアレルギー性疾患を発症しているケースよりも多いこと、そして犬においても人においても生活環境と皮膚の微生物叢はアレルギー性疾患と関係があることが示されたそうです。

これらの研究はフィンランドのヘルシンキ大学とフィンランド環境研究所そしてフィンランド保健福祉研究所、その他フィンランドの関係施設の研究者たちによって行われました。今回の研究では、犬と飼い主に共通するアレルギー性疾患発症のリスクを高める要因について、特に両者の皮膚または腸内の細菌叢が共通要因として関連しているかどうかが調査されました。

犬と飼い主の皮膚と腸内に住む微生物を調査

フィニッシュラップフント

この調査には農村部と都市部の環境に住む犬と飼い主の168匹組のペアが参加しました。

フィンランドの農村部でも都市部でもポピュラーな犬種であり、血液を採取しやすい大きさであるとして、犬種はフィニッシュラップフントとラブラドールレトリーバーを調査対象として選び、2012年から2013年に生まれた犬のブリーダーおよび子犬の譲渡先の飼い主に協力してもらいました。

皮膚の微生物叢の調査には人間の手首の内側と犬の前脚の手根関節内側を綿棒で拭って採取したサンプルが使用され、腸内微生物叢は人と犬それぞれに便のサンプルからの抽出物を使用しました。

犬と飼い主の生活環境やライフスタイル、アレルギー性疾患の有無、どんな症状があるかなどについては、飼い主にアンケート調査を行って調べました。

生活環境の違いと微生物叢の違い

都市の街の中を散歩する犬と女性

採取されたサンプルと飼い主へのアンケート結果を実際に比較していくと、犬と飼い主が同じ生活環境、ライフスタイルを共有していることとその両者がアレルギー性疾患を発症していることには関連があること、人間の場合も犬の場合も農村部と都市部という生活環境、そしてライフスタイルの違いによって皮膚の微生物叢が異なることが分かりました。

また、農村部の環境では都市部よりも皮膚の微生物叢が多様性に富んでいる、逆に言うと都市環境は犬と人間の両方の皮膚の微生物叢を均質化することが同じ研究者らの過去の研究によって分かっています。またこれまでにも、自然環境や農業や畜産が行われている環境にいる微生物に暴露することが、アレルギー性疾患の発症リスクを低くするという研究結果もあります。

これは、都市部の人や犬でアレルギー性疾患の発症リスクが高い、と言うこともできます。

また犬と飼い主は、皮膚の微生物叢はお互いに似通ることも分かりました。しかし、腸内の微生物叢にはお互いの影響は見られませんでした。犬と飼い主ではない人との間には皮膚の微生物叢に関連は見られなかったので、犬とその飼い主の皮膚の微生物叢はお互いに大きな影響を与えることが示されました。

研究者らは今回の結果から、犬と人間の両方において微生物への暴露がアレルギー性疾患の発症と関連がある可能性が示されたと述べています。ただ、今回の結果からは分からないこともまだ多く、アレルギー性疾患を発症している犬と人間で多く見られた微生物の種類は異なっていたということです。

まとめ

羊とピレニアンマウンテンドッグ

犬と飼い主の皮膚の微生物叢は生活環境とライフスタイルによって変わる、アレルギー性疾患の発症率も生活環境とライフスタイルの違いが関連している、農村部の環境では皮膚の微生物叢の多様性が高くなり、都市部の環境では皮膚の微生物叢の多様性が低くアレルギー性疾患の発症リスクを高くしている可能性があると示された研究をご紹介しました。また腸内微生物叢は生活環境やライフスタイルによる違いよりも犬と人という動物種による違いが大きいことも分かりました。

アレルギーの発症は様々な要因が複雑に絡み合っていると言われていますが、こうして1つずつ原因や関連している要因が明らかになって行くのは心強いことですね。

今回の研究は、アレルギー性疾患を発症している人の数が少なかったこと、犬におけるアレルギー性疾患の有無は飼い主によるアンケート調査だけから判断されていることなどから、統計学的には弱い点もあるそうですが、犬でも人でも多く見られるアレルギー性疾患について、人よりは食べているものや生活パターンが限られている犬で研究が進むことは、犬と人の両者にとって良いことだそうです。

《紹介した論文》
Lehtimäki, J., Sinkko, H., Hielm-Björkman, A. et al. Simultaneous allergic traits in dogs and their owners are associated with living environment, lifestyle and microbial exposures. Sci Rep 10, 21954 (2020).
https://doi.org/10.1038/s41598-020-79055-x

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