探知犬の安全を守るための研究をする人々
驚異的な嗅覚と高い訓練を受けて爆発物や麻薬を探知する犬たちの活躍は広く知られています。彼らの能力は最先端のテクノロジーをも超えるほどで、捜査の大きな助けとなっています。
探知犬を捜査に使うことの課題の1つに犬の訓練の安全性があります。本物の爆発物や麻薬などの有害物質を使って犬を訓練するのは不便で危険です。
アメリカの工業技術や産業、国防などに関連する規格の標準化を行なっている米国立標準技術研究所では、探知犬を安全に訓練する方法の研究を続けています。
爆発物や麻薬を犬に直接嗅がせないために
爆発物を訓練の場に持ち込むのは安全上の問題がありますし、麻薬の類を犬に嗅がせることは犬やハンドラーの健康を損なう可能性があります。
この問題について科学者はポリジメチルシロキサンと呼ばれるゼリー状の物質が利用されています。この物質は臭気を吸収し、時間をかけてゆっくりと吸い取った臭気を放出します。爆発物や麻薬と同じ容器の中でポリジメチルシロキサンを数週間保存して、臭気が’移ったもので安全に訓練を行います。
また数週間の保存期間が取れない場合には、爆発物に含まれる化合物を温めて蒸気を発生させ、低温に保たれたポリジメチルシロキサンで蒸気を捕えることで、数日で訓練用の臭気物質を作る方法も開発されています。
科学者をも驚かせる探知犬の正確性
爆発物は次々に新しいタイプが作られるため、研究者はそれに合わせて訓練用の臭気物質を作る方法の開発を継続しています。
出来上がった訓練用臭気物質をテストするのも探知犬たちの役目です。テストを行う際は、その場にいる犬のハンドラーも記録係も含めた全ての人が与えられたサンプルのうちどれが嗅ぎ当てるべき正解か知らされない二重盲検法が採用されています。
二重盲検法が使われる理由は、ハンドラーや記録係のボディーランゲージや目線で犬にヒントを与えることを防ぐためです。つまり犬たちはそのような些細な手がかりにも鋭敏に反応するということですね。
これらのテストでの結果は、臭気物質の開発に携わる化学者たちをも驚かせる結果を出しているそうです。ある研究者は探知犬たちの能力を「最も洗練された分析用機器の1万〜10万倍の高さの感度」だと評しています。
まとめ
爆発物や麻薬などから公共の安全を守るために働いている探知犬を安全に訓練する方法についてご紹介しました。
探知犬の能力の精度の高さや、職業犬の訓練にまつわるほのぼのしたエピソードなどは一般のニュースなどでも時々取り上げられますが、人間のために働く犬の福祉のための科学的な研究について私たちが知る機会はあまり多くありません。
このように政府機関の中で科学者が研究を継続して、探知犬やハンドラーの安全が追求されているのは喜ばしいことです。
米国立標準技術研究所の基準は様々な分野で国際基準となるため、アメリカ以外の国の探知犬の訓練にも適用されているのではないかと推測します。
空港などで見かける働く犬に心を動かされる愛犬家は多いと思います。このような研究がなされていることを知ると、少し気持ちが軽くなるのではないでしょうか。
《参考URL》
https://www.sciencedaily.com/releases/2020/12/201203133909.htm