自動車に乗ることと犬のストレス
皆さんの愛犬は自動車で出かけるのが好きでしょうか?自動車が大好きで自主的に飛び乗る子もいれば、乗り物酔いしてしまうので車で出かけるのは犬も人も憂鬱という場合もあり、その反応は様々です。
自動車に乗った時の犬のストレスレベルはどの程度のものなのかというリサーチは過去に無かったのだそうですが、この度オーストリアのウィーン獣医大学の研究者が、初めて自動車に乗ったビーグル犬たちがどのような反応を示したかを調査しました。
「自動車での移動は犬にとってストレスであるが、何度かドライブを繰り返すことで慣れていく」という仮説が立てられ、それが検証されました。
ビーグルたちが参加した実験の内容
犬が自動車で移動することとストレスの関連を調べる実験には18匹のビーグルが参加しました。ビーグルは研究用に大学で飼育されている犬たちで、全員が自動車での移動を経験したことがありません。
犬たちは6匹ずつ3つのグループに分けられ、実験は計6週間にわたって実施されました。自動車での移動は、ミニバスの床に設置されたバリケンネルのクレートに犬が入った状態で行われました。
グループ1の犬たちは1週目には犬舎の中で、平常時心拍数などのストレス指標となるデータが測定されました。その後2〜4週目に週1回1時間のドライブ、6週目に2時間のドライブに出かけました。
グループ2の犬たちは1週目に指標となるデータ測定をした後、2週目に静止したミニバスに設置されたクレートの中で過ごし(ドライブは無し)6週目に2時間のドライブに出かけました。
グループ3の犬たちは指標となるデータ測定をした後、6週目に初めてミニバスに乗って2時間のドライブに出かけました。
このようにグループ分けすることで、自動車での移動に徐々に慣れていった場合と、いきなり長いドライブに出た場合のストレス反応を比較します。
ストレス反応の指標となるのは、唾液と血液中のコルチゾール(ストレスホルモン)心拍数、心拍変動、好中球とリンパ球の比率、ストレスを示す行動の観察です。
これらはドライブの1時間前、ドライブの最中、ドライブの2時間後に測定されました。
ドライブが犬に及ぼしたストレスの結果は?
ストレス反応を示すコルチゾール値の濃度は全てのグループでドライブの最中に増加を示しました。これはグループ1のように徐々に慣らして経験を重ねても同じでした。
心拍数も全てのグループでドライブ開始後に増加しました。好中球とリンパ球の比率で示される白血球の状態も全てのグループでストレス反応を示しました。
犬たちの行動では、ドライブ中に頻繁に口の周りを舐めるストレスを示す行動が見られました。これは自動車が静止している時には見られませんでした。
このように自動車での移動がストレスを引き起こすことは明白でした。ドライブの経験を重ねることで自動車に慣れていくという仮説も成立しませんでした。
ただし、この実験はドライブに出かけてどこにも立ち寄ることなく犬舎に戻って来るというものでした。つまり犬たちにとってドライブの後に到着するのが「嫌な場所でもないが、特別に楽しい場所でもない」ところです。
研究者は、ドライブの後に公園や森など普段とは全く違う楽しい経験を何度も重ねるとどのような反応になるのかを調査してみたい旨を述べています。
まとめ
ドライブの経験のない犬にとって、自動車での移動はストレスになることが身体反応や行動観察によって示されたという研究結果をご紹介しました。
「うちの犬はドライブが大好きだけど?」と思う方も多いかもしれませんが、全く白紙の状態の犬にとって自動車に乗るというのはストレスなのだという基本的な認識は大切です。認識しておくことで、正しい対応や経験を積み重ねていく助けになるからです。
自動車での移動中に過剰な刺激を与えないようクレートを使用する、車内での安全を確保する、楽しい目的地に行くことで良い経験を増やしていくなどは、犬のストレスを軽減するのに有効だと言えるでしょう。
愛犬は自動車が苦手だという方も「それは犬として普通のことなのだ」と認識した上で、獣医師やプロのトレーナーに相談すると、より良い結果を得られる可能性が高くなるかと思います。
ユーザーのコメント
50代以上 男性 ただ犬