「純血種」の犬のDNA比較研究
現在、純血種として国際畜犬連盟に認められている犬種は約340種類あるのだそうです。それらの犬種は数万年前に古代オオカミを家畜化したところから始まり、人間にとって都合の良い能力を持つ犬を選択的に交配して作られてきました。
特に19世紀半ばには多くの新しい犬種が作り出されました。現在私たちにとって身近な犬種の多くはこの時代に作られたものだそうです。
新しい犬種を作るに当たり好ましい特性を強化したり、望ましくない特性を希釈するために異なる系統の犬種が意図的に交配されました。
これら複雑な交配の過程は文書として残っているものもありますが、記録のないものも多いのだそうです。
遺伝子研究が進んだおかげで、これら複雑に絡み合った多くの犬種が互いにどのように関連しているか把握することができました。
アメリカの国立ヒトゲノム研究所は犬ゲノムプロジェクトとして、様々な犬のDNA研究を行なっています。そしてこの度161犬種のDNAを分析して、ある犬種に他のどの犬種が関連しているかという「犬種の家系図」を発表しました。
犬種の特徴を作るわずかなゲノムの違い
ご存知のように犬という生き物は同じ種でありながら、サイズ、形、行動などに他の動物種よりもずっと豊富なバリエーションがあります。これらの違いを作っているのは犬のゲノムの中のほんのわずかな違いです。
研究者はこれらの違いを作るブロックの何千箇所ものゲノム配列を決定しました。そのブロックのゲノム配列が2つの異なる犬種間で同じだった場合、過去の歴史でその犬種同士の交配があったことを示します。
ゲノム配列の比較から、過去の文書の記録が裏付けられた面もあれば、文書化されていないけれど予想していたことが確認できたこと、さらに全く予想外の交配の証拠が現れた面もあったのだそうです。
ジャーマンシェパードのDNAから分かった驚きの結果
中でも研究者を驚かせたのはジャーマンシェパードのDNAだったそうです。
まずジャーマン(ドイツの)という名と裏腹に、ジャーマンシェパードに最も強く関連していた3つの犬種は全てドイツ以外の犬でした。1つはカーネ・パラトーレというイタリア特有の犬種で白っぽいジャーマンシェパードという感じの大型犬です。次に関連が強かったのはベルガー・ピカールというフランスの牧羊犬です。3つめはチヌークというアメリカ原産のソリ犬でした。
さらに意外なことに、この3犬種の次にジャーマンシェパードとDNAの共通点を多く持つ犬種はメキシカンヘアレスドッグでした。
ジャーマンシェパードは共通するDNAを持つ犬種が最も多い犬種のひとつで、この犬種を作るために様々な異系交配があったことが伺えます。
反対にダックスフンドやダルメシアンには他の犬種との関連が見当たりませんでした。その理由はいくつか考えられるのだそうですが、この研究で特定した交配の証拠は過去200年くらいの範囲であり、ダックスフンドやダルメシアンはその時点で現在の形で完成していた可能性があります。また今回分析した161犬種の中に対応する犬種が含まれていなかった可能性もあります。
同研究チームは今後さらに他の犬種を追加して犬種家系図を完成させていく予定だそうです。特に地域特有の犬種を重視しているとのことです。
まとめ
161犬種のゲノム配列の比較から、どの犬種同士が共通のDNAを持っているかを明らかにした犬種家系図を作成する研究についてご紹介しました。ある犬種を作り上げるためにどれほどの時間と手間と費用がかけられたかが伺えるような結果でもあります。
ある犬種の元祖となる犬種が明らかになることで、遺伝病や不自然な形状の改善に役立てられる可能性もあります。
愛犬のDNAに予想外の犬種が入っている可能性を考えるのもまた興味深いものですね。今後のさらに深い研究を楽しみに待ちたいと思います。
《参考URL》
https://www.theguardian.com/news/datablog/ng-interactive/2020/oct/25/interactive-see-how-your-favourite-dog-breeds-are-related-to-each-other#doggraphic
https://research.nhgri.nih.gov/dog_genome/