短頭種の犬の健康問題についてのリサーチ結果と高まる危機感

短頭種の犬の健康問題についてのリサーチ結果と高まる危機感

パグやブルドッグなどの短頭種の犬に健康上の問題について、近年さらに危機感が高まり様々な研究が発表されています。英国で発表された新しいリサーチ結果をご紹介します。

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マズルの短い犬種に高まる健康リスク

伏せの姿勢の黒いパグ

パグやフレンチブルドッグに代表される短頭種の犬の人気は、過去10年ほどの間に劇的に上昇を続け、現在もその人気が翳る気配はありません。

その人気とは裏腹に、短頭種の犬の健康上の問題についても再三取り上げられ問題視されています。

ヨーロッパでは特に問題視する傾向が顕著で、獣医師、ブリーダー、犬種クラブが連携して立ち上がり行政による規制につながった国も出てきています。

イギリスでも大企業や広告業界に対してパグやブルドッグを広告に使うことを止めるよう呼びかける運動が行われたり、消費者向けの啓蒙活動も数多く行われています。

先ごろイギリスの王立獣医科大学から、短頭種の犬と他の犬種を比較した時、短頭種にどのくらい健康上の問題が多く発生しているか具体的な数字を示したリサーチ結果が発表されました。

コンパニオンアニマル獣医療監視システムによる調査

目薬の点眼を受けるフレンチブル

王立獣医科大学ではVeterinary Companion Animal Surveillance System(コンパニオンアニマル獣医療監視システム)という非営利研究プロジェクトを運営しています。システムはプロジェクトの頭文字を取って、VetCompassという名で呼ばれています。

犬や猫などコンパニオンアニマルに起きる健康問題について、その範囲や発生頻度を調査し、その問題を起こす最も一般的で重要な危険因子を特定することを目的としています。

調査のための医療データは、コンパニオンアニマルが一般の動物病院で診療を受けた際の臨床データがコンピューターに記録されたもので、研究のために匿名化された形式になっています。

このVetCompassによる調査で、イギリスで獣医療の診察を受けた犬18,079匹と、短頭種の犬4,169匹の全般的な健康状態が詳細に比較分析されました。

短頭種の犬の方が高リスクだった疾患は以下の通りです。

  • 1年間に少なくとも1つの疾患と診断されるリスクは、短頭種では1.3倍高かった
  • 角膜潰瘍(角膜の外傷から細菌が侵入して炎症を起こす)は8.4倍
  • 心雑音は3.5倍
  • 臍ヘルニア(へその下の部分の筋膜が閉じておらずお腹の脂肪や長などの一部が皮下にはみ出ている状態)では3.2倍
  • 足部の感染症は1.7倍
  • 皮膚嚢胞は1.5倍
  • 膝蓋骨の脱臼は1.4倍
  • 耳の感染症は1.3倍
  • 肛門嚢破裂は1.2倍

短頭種に多い健康問題と言えば、マズルの短さのせいで起こる呼吸障害や熱中症のリスクの高さがよく知られていますが、大きくて飛び出した目や、首や手足の短い体型が引き起こしやすい上記のような疾患も無視できない大きな問題です。

犬の購入者への呼びかけ、犬種クラブや動物福祉団体との協力

診察中のフレンチブル

研究者は、疾患を引き起こしやすい大きな目やコロンとした体型、そしてマズルの短さこそが、過去10年間イギリスでパグやフレンチブルが人気を博して来た理由の一部かもしれないと述べています。

また短頭種の犬は、そうでない犬種のグループに比べて問題行動と呼ばれるものが少ないことも分かっています。この点についても、呼吸や体型のせいで運動能力が低いことが関連している可能性があります。

愛らしい顔かたちや性格に魅了される人々が多いのは自然なことですが、人間の好みのために犬の健康や生活の質が低下することについて真剣に考えなくてはなりません。

研究者はパグやブルドッグの購入を考えている人に「購入の前にケネルクラブ、動物福祉団体、獣医師などが発表しているメッセージに耳を傾け、立ち止まってよく考えてみてください」と呼びかけています。

英国ケネルクラブの健康福祉責任者は、ケネルクラブのチャリティ財団を通じてこの研究を支援し、犬種特有の疾患や障害に対する効果的な治療法の開発、より健康な犬を生み出すために科学をベースにした繁殖などをサポートしていくと述べています。

短頭種の健康問題を軽減し、将来的には完全に無くしていくために、ケネルクラブと獣医師、動物福祉団体は協力しあって取り組んでいます。

これはイギリスでの事例ですが、短頭種の健康障害は日本の犬と飼い主にとっても同じく深刻な問題です。

残念ながら日本ではまだヨーロッパのいくつかの国で始まっているような団体間の協力などはありません。ですから犬を飼おうと思っている人が問題の存在を知ることがスタートです。

まとめ

パグと子猫

イギリスで短頭種の犬と他の犬種のグループの疾患データを比較したリサーチ結果が発表され、短頭種の犬の疾患リスクの高さが改めて明らかになったという報告をご紹介しました。

マズルの短さを可愛いとする風潮は、短頭種だけでなくチワワやポメラニアンにも波及しています。見た目の愛らしさのためだけの容姿の改変は犬の健康と福祉を損ないます。

犬だけでなく、猫のスコティッシュフォールドの折れ耳やマンチカンの短い足を作るために強引な選択育種を行い、その結果として遺伝病の他様々な疾患リスクが高くなっている例もあります。

このような猫や短頭種の犬のように、人間が「可愛い」と感じるためだけに動物の健康を害するような繁殖は「虐待繁殖」とも呼ばれます。

生まれながらに苦痛を強いられている犬や猫のことについて、知識を持ち真剣に考える人が増えていくことを心から願います。

《参考URL》
https://www.rvc.ac.uk/vetcompass/news/study-reveals-flat-faced-dogs-really-are-less-healthy-than-other-dogs

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