アニマルシェルターなど保護施設の犬種表示
アメリカのアニマルシェルターなどの保護施設にいる新しい飼い主募集中の犬たちは、犬種や推定年齢、性別などがインターネットや犬舎のラベルに基本情報として開示されています。
しかし過去の研究では、保護施設にいる犬の犬種表示の7割以上が誤りであるという報告があります。これは保護施設に来る犬にはミックス犬が多く、表示のための犬種は施設の職員が「これはラブのミックスかな?」「チワワっぽいね」と目で見た感じと直感で決めているせいです。
しかし犬種によっては偏見があったり人気がなかったりして、なかなか貰い手が見つからない場合があります。それは犬の生活の質はもちろん、施設の方針によっては命にも関わることになります。
そこで、いくつかの保護施設では犬種の表示を廃止するという決定をしました。この決定がどの様な影響を及ぼしたのか、ニューヨーク大学の研究者がリサーチを行い、その結果が発表されました。
犬種を表示しなくなったことの効果とは?
このリサーチにはニューヨークの本拠を置く保護団体がデータを提供しました。この団体では2017年から段階的に犬種の表示を廃止しています。
データは犬種表示廃止前後の16ヶ月間で比較されました。
データ分析の結果は、犬種が表示されていた頃と比較して、表示廃止後はシェルターでの滞在期間の中央値が11日短縮と大幅に減少したことが分かりました。
一旦譲渡された犬が戻って来る率は表示中も表示廃止後も6%と変化はありませんでした。
アメリカではピットブル系の犬には闘犬のイメージがあって敬遠するという人も少なくありません。また賃貸住宅ではピットブルは飼育禁止というポリシーをあげている所も多いです。
犬種表示を無くしたことで、イメージだけで敬遠していた人、直感で決められただけの犬種表示なのにその名が付いただけで住宅の条件に合わなかった人などが譲渡先の候補となったのも理由の1つと考えられます。
犬種の代わりに表示したものは?
この保護団体では犬種を表示しない代わりに、犬たちの行動を評価して4段階に分けて、その評価を色で表示することにしました。
行動の評価は難易度の低い順に、緑、青、黄、赤で表示されました。緑の表示がされた犬は赤の犬に比べて、譲渡先が決まる確率が4.5倍高かったということです。
この行動評価をするために、シェルターの職員は以前にも増して犬としっかりと向き合うことが求められます。
しかし行動評価は定期的に行われるため、トレーニングなどを続けるうちに良い評価に変わっていくことができます。一度決められると変更されることのない犬種とは大きく違う点です。
この点でも保護されている犬たちのチャンスが増え、譲渡率のアップにつながっていると考えられます。
まとめ
ニューヨークにある犬の保護施設での犬種表示を廃止したら譲渡率がアップしたというリサーチ結果をご紹介しました。研究者はアメリカの他の地域の公営シェルターや保護団体でも犬種表示廃止が役立つ可能性があると述べています。
日本の愛護センターや民間の保護団体などは、アメリカとは事情の違う部分もありますが、行動評価の色分け表示などは役に立つアイデアかもしれません。
私たち一般の飼い主がこの報告から心しておきたいことは、犬種というラベルではなく個々の犬と向き合う大切さです。犬種はその犬の1つの要素ではありますが、犬は1匹1匹みな違う個性を持っているので、固定観念にとらわれずに目の前の犬を理解する努力を忘れないようにしたいですね。
《参考URL》
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0238176