犬にとって危険なイネ科植物のノギ
毎年夏から秋にかけて犬の健康のために注意するべきこととして挙げられるものの1つにイネ科植物のノギがあります。
どこにでも見かけるスーッと細長く先のとがった葉の雑草の多くはイネ科植物で、その多くは春先にフサフサした穂をつけます。エノコロ草やチカラシバはその代表的なものです。
これらの雑草の穂は夏から秋にかけて茶色く枯れ、穂の中にできるトゲ状の突起や尖った種子が「ノギ」と呼ばれるものです。服などにくっつくとなかなか取れないトゲトゲやチクチクしたものと言えばおなじみですね。
このノギが犬の被毛にくっつくと表面の細かいトゲのせいで皮膚に近い方にどんどん入り込んで行き、皮膚に刺さったり目や耳に入ったりする危険性があります。
皮膚や耳の中でも奥に進んでいくため、化膿して手術が必要になったり、鼓膜を傷つけてしまったりすることがあります。どこにでも見られるありふれた雑草の小さな穂が思いがけない危険を孕んでいるわけですね。
ノギが引き起こす可能性がある重篤な感染症
このようにイネ科植物のノギというのは犬にとってかなり危険な代物なのですが、稀ではありますが重篤な感染症である破傷風を引き起こすこともあるそうです。
アメリカのカリフォルニア大学デイビス校獣医学部が実施した研究で、35例の犬の破傷風が調査されました。破傷風は切り傷や刺し傷から土壌に潜む破傷風菌が入り込んで感染します。
この調査された犬たちのうち4分の1強に当たる27%が感染の原因となったと考えられる傷がノギによるものだったそうです。また全体の50%にノギによる傷があり、はっきりとはしないものの破傷風感染の原因となった可能性があるそうです。
つまり35例の破傷風のうち約4分の3にノギが関連していた可能性があるということです。
破傷風と言えば、地面に放置された古い釘を踏んでしまったり、動物に咬まれて感染するものとしてよく知られているのですが、イネ科植物のノギという意外な感染経路もあるということです。
犬にとっての破傷風
破傷風は破傷風菌が分泌する神経毒によって神経系に影響を及ぼし、全身の筋肉を硬直させます。よく見られる症状は次のようなもので、異常を感じたら早急に病院での診察を受けましょう。
- 瞬きができない
- 瞳孔が収縮する
- 光や音に対して過敏になる
- 笑ったまま固まったような特徴的な表情になる
- 垂れ耳の犬でも耳が直立する
- 口を開くことができない
- 尻尾や四肢がピンと硬直する
- けいれん
- 呼吸困難
神経毒による症状は他にも毒のある植物や虫やカビなどが原因のこともあるので、たとえ小さなものでも怪我がある場合には獣医師に伝えることが正しい診断のために重要です。
人間や草食の家畜と違って、犬には破傷風のワクチンがありません。しかし幸いなことに犬は人間よりも破傷風への感受性が低く、感染の可能性はそれほど高くないそうです。
犬が怪我をした時には傷を土壌に接触させない、ノギがくっつくような野原などに行った後は念入りに全身のチェックをするなどして、予防のための注意をしましょう。
まとめ
犬の身近にある危険として注意するよう言われることの多いイネ科植物の「ノギ」によって破傷風に感染することもあるという報告をご紹介しました。
事例自体はそれほど多くはないのですが、重症になれば命に関わることもある感染症ですから知識を持っておくことは大切かと思います。
破傷風以外にもノギの被害は侮れないので、屋外で遊んだ後には耳や足指の間を始めとして全身のチェックを念入りになさってください。
《参考URL》
https://thebark.com/content/tetanus-not-just-bites-and-rusty-nails
https://www.marvistavet.com/tetanus-in-pets.pml