ペットの所有と自己肯定感の関連についての調査
犬を飼うことが身体と精神の健康に良い影響を及ぼすという研究は数多く発表されています。それらの研究と共通する部分もあるのですが、この度ペットを飼っていることと『自己肯定感』の関連に焦点を絞った新しい調査結果が発表されました。
調査を実施したのはドイツのハンブルグ大学エッペンドルフ・メディカルセンターの研究者です。
自己肯定感とは、英語表現のセルフエスティームという言い方もされますが、自分が自分についてどのように考えたり感じたりしているかという感覚です。言い換えれば、どれだけ自分自身を尊重し、長所も短所も含めて受け入れているかということです。
自己肯定感の高い低いは精神の健康に大きな影響を与え、ひいては身体的な健康にも関連するので、心理学や精神医学では重きを置かれます。
ペットの有無や種類が自己肯定感に与えた影響は?
この調査の目的は犬の飼い主、猫の飼い主、ペットを飼っていない人、それぞれのグループで人々の自己肯定感に違いがあるかどうかを判断することでした。この調査以前には、ペットの所有と自己肯定感の関連について分かっていることは非常に限定的です。
調査のためのデータは、ドイツで一般的に行われている40歳以上の世帯を対象にした公的なアンケートで得たものが使われました。アンケートの回答から自己肯定感を定量化して、ペットの有無や種類、その他のライフスタイルなどと合わせて分析されました。
分析の結果、いくつかの興味深いことが明らかになりました。
- 犬を飼っている人はペットを飼っていない人と比較して自己肯定感スコアが高い
- 犬を飼っている男性はペットを飼っていない男性と比較して自己肯定感スコアがより高い
- 全般的に、ペットを飼っている人は飼っていない人よりも自己肯定感スコアが高い
- 猫を飼っている女性はペットを飼っていない女性と比較して自己肯定感スコアが低い
なぜ犬を飼う人は自己肯定感が高いのか?
この調査はデータの分析のみで実施されたため、犬を飼うことと自己肯定感の高さの理由までは分かっていません。
しかし、犬を飼って散歩に出ることが地域への帰属意識や孤立感の減少につながり、精神的な安定に関連しているのではないかと推測されます。
また散歩によって適度な運動をすることで、身体的な健康にも良い影響を及ぼすことも自己肯定感を高めるのかもしれないとも推測されます。
これらの推測を確認するため、また猫を飼っている女性の自己肯定感が低いことなどについてさらに研究が必要であると研究者は述べています。
犬や猫を飼うことが自己肯定感に影響を及ぼすのか、そもそも犬または猫を飼うという選択に自己肯定感が影響しているのかも調査が必要です。
高齢者の心身の健康に影響を与える要因を調査することで、どのような点を補ったりサポートすれば良いのかが明らかになります。今回の調査には社会全体を健全に保つための要点を探るという意味があります。
まとめ
ドイツの高齢者を対象にした調査で、犬を飼っている人はペットを飼っていない人よりも自己肯定感が高い傾向があるという結果が明らかになったことをご紹介しました。
自己肯定感に関する研究と言えば、従来は子供や若い人を対象にしたものが多かったそうですが、ペットと関連づけて高い年齢層の調査をするというのは新しい発想でもあるようです。
ドイツでも社会全体の高齢化が進んでおり、様々な側面からの高齢者の健康と福祉の低下を防ぐ研究が行われているそうです。日本でも高齢化の傾向はさらに顕著なので、このような調査結果が参考にされると良いですね。
《参考URL》
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2020.00552/full#h4