犬の変形性関節症の新しい診断ツールとなる可能性『足圧中心』の研究

犬の変形性関節症の新しい診断ツールとなる可能性『足圧中心』の研究

犬の変形性関節症は触診やレントゲンによって行われるのが一般的ですが、新しい診断ツールとなる可能性がある『足圧中心』に関する研究結果が発表されました。その内容をご紹介します。

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犬の足にかかる圧力の中心を分析する

立っている犬の足

人間の整形外科や神経疾患の診断のための指標の1つに『足圧中心』というものがあります。立った姿勢や椅子に座った姿勢など、様々な状態で床と足の裏との接触面に働く力の分布の中心点のことを指します。

足圧中心を分析することで患者の身体バランスが分かり、怪我や疾患を診断する手がかりとなります。現在のところ、犬の足圧中心に関するデータはほとんどありません。この度オーストリアのウィーン獣医科大学の研究者が変形性関節症の犬と健康な犬の足圧中心データを収集し、その分析結果を発表しました。

股関節と肘関節の関節症の犬の足圧中心データ

オンリードで歩く犬

この調査には3つのグループに分類された63匹の家庭犬が参加しました。

グループ1 股関節の変形性関節症を患っている犬

雑種7、ゴールデンレトリーバー3 、ラブラドール2、ジャーマンシェパード2、ロットワイラー2、チベットテリア1、サモエド1、アッペンツェラーマウンテンドッグ1の合計19匹がこのグループに分類されました。
犬の平均体重は約30kg、平均年齢は7.73歳、オス犬13匹、メス犬6匹が含まれます。

グループ2 肘関節の変形性関節症を患っている犬

雑種8、ゴールデンレトリーバー 5、ラブラドール3、ジャーマンシェパード1、アメリカンブルドッグ1、ニューファンドランド1、ビズラ1、ポインター1、イングリッシュコッカースパニエル1、ダックスフンド1、アメリカンスタフォードシャーテリア1の合計24匹がこのグループに分類されました。

犬の平均体重は約30kg、平均年齢は7.13歳、オス犬14匹、メス犬10匹が含まれます。

グループ3 健康な犬

雑種5、ゴールデンレトリーバー 4、ロットワイラー2、ラブラドール1、ジャーマンシェパード1、ダックスフンド1、ベルガーブランスイス1、ビーグル1、ドーベルマン1、フレンチブルドッグ1、セッター1、ダルメシアン1の合計20匹がこのグループに分類されました。

犬の平均体重は約27kg、平均年齢は4.4歳、オス犬10匹、メス犬10匹が含まれます。

それぞれの犬たちは測定用装置の上を自然に歩行することができるよう、実験室の中を探索する十分な時間を与えられました。

15,360個のセンサーが搭載された圧力分布測定のプラットフォームは滑らないようラバーマットでカバーされています。犬はリードを着けた状態で飼い主に導かれてプラットフォームの上を一定のペースで歩き、足圧中心のデータが収集されました。

足圧中心のデータ分析から判ったこと

後脚が弱いジャーマンシェパード

グループ1とグループ2の犬は関節症を患っている方の足とそうではない方の足とで有意な違いを示していました。またグループ3の健康な犬との比較分析も行われました。

股関節に症状のある犬の場合、足圧中心の位置の変化、両後ろ足の足圧中心領域の増加が見られました。肘関節に症状がある場合では、関節症を患っている前足と同じ側の後ろ足の足圧中心の位置の変化、関節症を患っている足の足圧中心の位置の変化がありました。

痛い部分をかばって歩くことで足への体重のかかり方やバランスが変わることから、それぞれに特徴的な変化を反映しています。

まとめ

犬の肉球クローズアップ

人間の整形外科の診断で使われる『足圧中心』というデータが、変形性関節症を患っている犬ではどのように変化するだろうかという、獣医学ではあまり前例のないリサーチが行われたことをご紹介しました。

この研究で収集されたデータと調査結果はさらに詳細な研究の基礎となり、将来的には犬の疾患の診断に使用できるようになる可能性があるそうです。

犬の関節疾患は生活の質に大きな影響を与えます。治療方法や遺伝子学など様々な方向から研究が行われていますが、この足圧中心の測定という新しいアプローチが将来より迅速な診断につながることを期待したいと思います。

《参考URL》
https://www.mdpi.com/2076-2615/10/8/1366/htm

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