ターメリック(ウコン)由来のぶどう膜炎治療薬
犬でも人間でも一般的な「ぶどう膜炎」という目の病気があります。ぶどう膜というのは目の一部である「虹彩・毛様体・脈絡膜」の総称で、この部分に炎症が起こった状態がぶどう膜炎です。
涙が増える、白目が赤く充血する、瞳孔が白く濁る、目の痛みなどの症状があります。犬が目をショボショボさせたり、まぶたが震えるような不自然な瞬き、涙や充血が見られたら早めに診察を受けてください。
放置すると視力の低下や失明につながることもあります。ぶどう膜炎の原因は突発性(原因不明)、感染症、自己免疫疾患、外傷由来、手術の後遺症など様々です。
この度アメリカのテキサスA&M大学薬学部および獣医学部の研究者がターメリック(ウコン)由来のぶどう膜炎治療薬を開発し、論文が発表されました。
カレーの黄色い色のスパイスとしてよく知られるターメリックは、古来からその抗炎症作用が高く評価されていますが、この治療薬の開発には先端技術が駆使されています。
安全で効果的なぶどう膜炎のための経口薬
目の治療薬なのですが、この新しく開発された薬は点眼薬ではなく経口薬です。口から摂取した薬が効果を発揮するためには、薬の成分が血流に適切に吸収される必要があります。特に眼への薬効成分の送達は、血管と眼の組織との間にある血液眼関門という障壁があるため、これを解決する有効な方法を見つけることが必要なのだそうです。
研究者はターメリックに含まれるクルクミンという抗炎症成分をナノ粒子製剤に加工することに成功しました。ナノ粒子は髪の毛の太さの10万分の1程度の非常に微小なサイズで、この加工によって有効成分であるクルクミンが障壁を乗り越えて患部に到達し、目の炎症を軽減することができるそうです。
現行の抗炎症薬が持つ副作用と対照的に、クルクミンには今のところ知られている副作用は無く、ぶどう膜炎を安全で効果的に治療することが期待されます。
犬のぶどう膜炎以外での新薬の活用
研究者は近い将来に同大学の獣医学病院で、この新しい薬剤の臨床試験を開始することを期待しているとのことです。
犬での臨床試験が進めば、人間のぶどう膜炎の治療につながる可能性もあるそうです。
また犬でも人間でも白内障の手術の後の炎症の管理は重要な課題で、この薬剤はそのような場面での使用も想定されています。またナノ粒子が全身に薬効成分を送達する可能性から、眼以外の全身性の炎症に対する療法となる可能性もあります。
まとめ
犬の目の炎症であるぶどう膜炎に、ターメリック由来の新しい治療薬が開発されたというニュースをご紹介しました。
私ごとで恐縮ですが、現在我が家の愛犬がまさにこのぶどう膜炎の治療中です。
我が家の犬が使っているのは点眼薬ですが、慣れるまでは犬に液体目薬を点眼するのはなかなかの苦労でした。経口薬ならば食事の際に一緒に投与できるので簡単ですが、副作用は常に気になるところです。ですから副作用のおそれの少ない経口薬で目の治療ができるということに感嘆しています。
今はまだ試験の段階ですが、将来このような薬が実用化されれば心強いことだと思います。
《参考URL》
https://advances.sciencemag.org/content/6/35/eabb7878