犬の骨肉腫、抗がん剤を使わない新しい治療法

犬の骨肉腫、抗がん剤を使わない新しい治療法

数年前からアメリカで研究されている、抗がん剤などの化学療法を使わない骨肉腫の治療方法があります。人間の医療にも応用されているその内容をご紹介します。

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犬と骨肉腫という病気

病院で検査を受けているグレートデーン

犬、特に大型犬と暮らしている人にとって骨肉腫という病気は他人事ではない脅威を感じさせるものかもしれません。
この病気は人間では他のガンに比べてそれほど一般的ではありません。しかし犬では大型犬を中心に多く発生する病気で、アメリカでは年間10,000件を超える症例があると言われています。

骨肉腫は骨のガンで、治療方法は外科的手術による切除と、放射線治療や抗がん剤を使った化学療法が併用されることが一般的です。アメリカのミズーリ大学獣医学部では、数年前から化学療法を使用しない新しい治療法を研究し、成果を出しています。

患者自身の腫瘍を使ってワクチンを作る

セーターを着たグレイハウンド

研究チームが実験的に新しい治療法を始めたのは、3年以上前のルビーという名のグレイハウンドが最初でした。ルビーは骨肉腫と診断され、患部である脚を切断して化学療法を受けても余命は1年未満であろうと言われていました。しかし研究チームは飼い主の家族に対して、新しい治療法の研究に参加をしてはどうかという提案をしました。

新しい治療法とは、患者である犬自身の腫瘍を使ってワクチンを作り、それを患者に注射して抗腫瘍リンパ球を刺激するというものです。

次にそれらのリンパ球を収集して体外で処理した後、通常の輸血のように患者の体内に戻します。こうして攻撃の準備の整ったリンパ球は標的となるガン細胞を殺して行きます。このプロセス全体は約7〜8週間で終了するそうです。

この治療を受けたルビーは化学療法を使わずに寛解し、抗ガン剤のような強い副作用も無く寿命を大幅に延ばしました。治療から3年以上が経過した現在、ルビーは12歳になり元気に過ごしているそうです。

動物医療が先陣を切るプレシジョン医療

試験管を手にした科学者

ルビーが受けたようなワクチン治療や細胞治療など、個々の患者に最適な治療法を分析・選択して行うことはプレシジョン医療(日本語で言えば精密医療)と呼ばれます。もう少しわかりやすくオーダーメイド医療と呼ばれることもあります。
ミズーリ大学の研究者は、骨肉腫の他にも治療するガンの種類を拡大していく予定だそうです。

ルビーをはじめとした犬のガン治療で学んだことは、人間のための治療にも応用されています。アメリカ食品医薬品局では、ある種のヒトのガンを治療するためのプロセスを軌道に乗せたと報告しています。

断脚や抗ガン剤という負担の大きい治療法に替わって、患者の体への負担が少なく効果の高いガン治療には大きな期待が寄せられます。ミズーリ州では2021年秋に動物と人間のためのプレシジョン医療の研究所がオープンする予定だそうです。

まとめ

獣医師とゴールデンレトリーバー

犬の骨肉腫の治療に、プレシジョン医療と呼ばれる細胞レベルで患者それぞれに合わせた方法が施され、良い結果を出しているという報告をご紹介しました。骨肉腫以外の他のガンの治療も研究が進められているそうです。

ガンのような重篤で治療の負担が大きいと考えられていた病気にも、新しい画期的な治療法が開発されているというのは心強いことですね。また、他の様々な病気の治療と同様に、ここでも犬を治療することが人間の医療の発展に貢献しているというのも嬉しいことだと思います。

《参考URL》
https://showme.missouri.edu/2020/precision-medicine-treatment-saves-family-pet/

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