犬のリードと飼い主の怪我
犬と毎日散歩することは心臓や血管の健康を増進して疾患を予防し、血圧や血糖値も改善されることは多くの研究結果が示しています。しかし一方で、犬と歩くことは思わぬ怪我を招くこともあります。どのような事例で怪我が起きているのかを知ることは予防にもつながります。
アメリカの研究者が、咬傷事故や散歩中の交通事故と区別するため犬のリードに関連した怪我について18年分のデータを分析して、その結果を発表しました。
被害は女性に多く、最も多い怪我は骨折
この統計は2001年から2018年の間に、アメリカで起きた負傷の電子データベースに報告されたケースから、全国的な負傷の推定件数を算出しました。
どのような怪我があったのかという症例の分布と、犬のリードに関連していたと思われる推定数は、怪我の状況、患者のデータ、診断などによって決定されました。
データベースに報告されていた犬のリードに関連すると思われる負傷は8,189件で、そこから全国的には18年の間に356,746件の負傷があったと推定されました。
怪我の原因は、犬の引っ張り54.2%、つまずき/リードのもつれ38.3%、その他7.5%でした。怪我をした人の88.2%が成人でした。また患者のうち女性が73%と多数を占めました。
怪我をした場所で最も多かったのは自宅(37.4%)でした。怪我の種類で多かったものは、骨折26.8%、捻挫26%、挫傷17.7%でした。
また犬のリードに関連すると思われる負傷は、2001年から2018年の間に約4倍に増加していました。
統計から考えられること
この統計の結果を見ると、犬のリードに関連する怪我の半数以上は、犬に引っ張られて起きています。別の統計でも、犬に関連する怪我では咬傷よりも犬に引っ張られて転倒しての負傷の方がずっと多いことが分かっています。
犬が引っ張らずに歩くようトレーニングすること、犬が周囲の物や人に過剰に反応しないよう十分な社会化をしておくこと、犬の衝動的な行動をコントロールするトレーニングをすること(インパルストレーニングとも言います)の重要性が改めて思い知らされます。
怪我の種類では骨折と捻挫で半数以上を占めていますが、これは転んで足を負傷するよりもリードが絡まったり引っ張られることで手首の捻挫や指の骨折が多いようです。
犬の急な引っ張りに対処できるよう、指先だけでリードを掴んだり手首に引っ掛けたりしておくのではなく、手のひらと指でしっかりとリードの持ち手を掴んでおくことがとても大切です。
リードに関連した怪我が増加しているのは、犬の飼育数が増えたことから来ていると考えられます。
まとめ
アメリカの研究者がまとめた、犬のリードに関連する怪我の内容についてご紹介しました。
リードは犬にとっては命綱とも言えるものです。その大切なものが怪我の原因になってしまうことは何としても避けたいですね。統計に出ている内容などから、日頃の行動を振り返ってリスクを減らすシミュレーションなどなさってみてください。
リードは種類や材質によって、安全性、耐久性、使い勝手などが大きく変わります。散歩中の犬と人を物理的にも心理的にもつなぐツールですから、この機会にぜひ一度リードそのものの見直しをしてみるのも良いかもしれませんね。
《参考URL》
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0735675720304460