短頭種の犬の飼い主を対象にしたリサーチ
フレンチブルドッグ、パグ、ブルドッグなど鼻ペチャの短頭種の犬が呼吸障害、眼疾患、脊髄疾患など健康上の問題を持っていたり、出産時、目の怪我、熱中症など様々な疾患のリスクが高いことは多くの獣医学関係者が繰り返し発表しています。
これらの犬種の特徴的な容姿は犬の健康と福祉にとってリスクがあまりにも高いため、現在の姿の繁殖を続けることに警鐘を鳴らす獣医師もいます。
また、慢性の疾患や先天的な障害を持つ犬の飼い主は、精神的な苦痛が大きく生活の質も低下しがちだと言われています。
しかし、これら健康上のリスクにも関わらずパグやフレンチブルの人気は高いままです。イギリスの英国王立獣医科大学の研究者が、これら短頭種の犬の飼い主を対象にしたリサーチを行い、多くの飼い主は将来またこの犬種を飼いたいと考えていることも分かりました。
リサーチ結果の他の内容についていくつかご紹介して行きます。
短頭種の人気とその理由
調査対象となったのは、インターネットの犬種フォーラムやSNSを通じて募集された短頭種3犬種の飼い主2,168人で、アンケート調査もオンラインで行われました。
飼っている犬種の内訳はパグ789人、フレンチブルドッグ741人、ブルドッグ638人でした。調査した飼い主のうち93%が、今飼っている犬種を将来また飼いたいと考えており、65.5%が初めて犬を飼う人が身近にいたら自分が飼っている犬種を勧めると回答しました。
将来また同じ犬種を飼いたいという人は「犬を飼うのが初めての人」「犬との結びつきが強いと感じている人」が多かったとのことです。
他の人にも自分が飼っている犬種を勧めたい理由は「行動上の問題が少ない」「あまり活発ではないので限られたスペースでも飼いやすい」「子供がいる家庭でも飼いやすい」などが挙げられていました。
反対に、将来同じ犬種を飼わないと答えた人は「健康上の問題」「公道上の問題」を挙げています。他の人に自分が飼っている犬種を勧めないという人は「健康上の問題が多い」「(主に健康問題から)飼育費用が高額になる」「短頭種の犬を飼うことに関連する倫理と動物福祉の問題」「飼い主のライフスタイルへの悪影響」「行動上の問題」を挙げました。
なぜ短頭種の人気が高いと問題なのか
このように引き続き短頭種の犬を飼いたい人や、他の人にも勧めたいという人が多いという回答から、短頭種の飼育ブームはまだ続いていくことが示唆され、研究者を心配させています。
現在の過剰な人気が続くことは、健康上の問題を含む容姿を作り出すための繁殖が続いていくことを意味するからです。短頭種の犬の健康を取り戻すために、犬の繁殖に獣医学的な介入を行うためには犬の需要を減らしていく必要があります。
アンケートの結果からは、同じ犬種を飼わない又は人に勧めない理由に、一定数これらの犬種の健康上の問題があることがわかりました。このことは短頭種の犬の望ましくない特性と、他の犬種の望ましい特性を伝える声を大きくして、短頭種ブームを下火にするために使用できると研究者は考えています。
まとめ
イギリスの研究者が行なったリサーチから、パグ、フレンチブルドッグ、ブルドッグの飼い主の多くが将来また同じ犬種を飼いたいと思っていることから、この犬種のブームがさらに続く懸念が明らかになったことをご紹介しました。
リサーチ結果の他の回答からは、ブームに介入して抑制するためのヒントも得られたことは犬種にとっての良い兆しです。
該当するパグやフレンチブルドッグを飼っている人にとっては気持ちの良い話題ではないかもしれませんが、愛犬と同じ犬種の犬たちが苦しんでいる健康上の問題を受け入れる人が増えることが、犬種の正常化つまりこの犬種の犬たちの健康と幸せにつながっていくと知ってほしいと思います。
【参考URL】
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0237276