同じ家庭内で仲の悪い犬と猫への対策
日本語では仲の悪いことの表現として「犬猿の仲」という慣用句がありますが、英語では「犬と猫のように喧嘩ばかり」という言い方をします。一般的に犬と猫は仲が悪いものとされているようですね。
この度イギリスのリンカーン大学の動物行動学者が、同じ家庭内で暮らす犬と猫が争わずに穏やかにいられるための対策について研究結果を発表しました。
イギリスの世帯の約7%が犬と猫の両方を飼っているそうです。多くの飼い主は犬と猫はお互い快適に暮らしていると報告していますが、仲が悪い場合にはそれぞれの動物の福祉に深刻な影響をもたらします。
例えば食べ物、水、トイレといった生活の重要な部分へのアクセスが制限されることでの肉体的な影響、心理的なストレス、そこから発展した喧嘩による怪我のリスクなどです。
もちろん人間にとってもこれらの負担は大きいものとなりますので、これは動物と人間の両方にとって重要な研究と言えます。
2つのフェロモン製品で観察を開始
この研究のためのリサーチに参加した34人のペットの飼い主は、6週に渡って毎週アンケート形式の行動記録をつけました。犬と猫の間の望ましくない行動10種類、望ましい行動7種類について、それぞれどのくらいの頻度で発生したかを報告します。
飼い主は2つのグループに分けられ、それぞれに違う種類の市販のペット用フェロモン製品を使用するよう指示されました。
1つのグループは猫用製品を使用します。これは母猫が授乳する時に分泌するフェロモンを再現したものが、コンセントに挿したディフューザーから室内に放出されるというものです(お部屋の芳香剤と同じ仕組みです)猫の気持ちを落ち着ける効果があります。
もう1つのグループは同じタイプの犬用の製品を使用します。どちらのグループにも製品はラベルなしのパッケージで提供されました。各家庭でどの製品が使用されたのか参加者も研究者もわからないように設定されました。
実際にどの家庭でどちらの製品が使われたのかは、統計を取る時のために特定のスタッフが記録していました。
フェロモンがもたらした効果とは?
研究者は事前の調査から、猫の快適性が犬と猫の関係に強い影響を与えていると見なしていました。そのため、この2つの製品を使ったテストでは猫用製品を使った家庭で、より高い効果が出るだろうと予測されていました。
参加者が報告した結果は、2週目から6週目の間で猫用製品を使った17人のうち5人、犬用製品を使った17人のうち8人が、望ましくない行動スコアが50%以上減少したというものでした。
また両方のグループで約7割の人が、望ましくない行動が30%以上減少したと報告しました。
このようにどちらの製品も犬と猫の関係改善に効果を示したのですが、予想に反して犬用製品の方が高い効果が報告されました。
研究者はこれについて、リラックスした犬は猫の邪魔をすることが減り、その結果猫のストレスが軽減され、猫が犬と何らかの社会的なつながりを持とうとするために両者の関係が良くなるのではないかと推測しています。
犬と猫の関係の質において、主な決定要因は犬の行動であると言えるようです。研究チームは、これらフェロモン製品の効果を個別に調べて、互いに組み合わせて使用することについてもさらに調査して行きたいと述べています。
まとめ
犬と猫の両方を飼っている家庭において、市販のフェロモン製品が両者の関係改善に効果があったという研究結果をご紹介しました。
大切な愛犬と愛猫の仲の悪さに悩んでいる飼い主さんにとっては、市販の製品ですぐに利用できる点でもありがたい研究ですね。
また犬と猫の関係において、犬の行動が重要であるという点が明らかになったことも多くの飼い主さんの参考になるのではないでしょうか。
《参考URL》
http://dx.doi.org/10.3389/fvets.2020.00399