ケニアで狂犬病ワクチン接種に取り組む研究者たち
日本は狂犬病清浄国であると言われ、多くの人が狂犬病ワクチン接種に対して「法律で決まっているから毎年受けなくてはいけない」と言う程度の認識で接しています。
外国で犬に咬まれて狂犬病に感染した日本人が亡くなると、たいへん大きなニュースになります。しかし狂犬病という病気は毎年世界中で約5万9千人の命を奪っています。その99%は犬に咬まれたことで感染しており、犠牲者の約半数は子供です。
アメリカの哺乳類学者らが、ケニアで人々が飼っている犬への狂犬病のワクチン接種をするプロジェクトに2015年から取り組んでおり、この度その活動についての報告が発表されました。
草の根運動で広がる狂犬病撲滅の努力
研究者チームは2015、2016、2017年にケニアで犬のワクチン接種キャンペーンを実施しました。人々が犬を連れて来ることができる医療ステーションを設置したところ、地域の人々はたいへん歓迎し、3年間で13,155匹のいぬにワクチン接種を行うという大きな成功を収めました。
農村地域では、犬にリードを付けて歩くという習慣がないためステーションの設置は難しく、チームのメンバーが一軒ずつ個別訪問して、犬にワクチン接種をしたということです。
ケニアでは毎年約2,000人が狂犬病で亡くなっているため、人々は無料で提供されるワクチンにたいへん興味を示したそうです。本来は大きな資金をかけて大規模に取り組むべきことですが、現実には資金も資源も限られています。そのような中で研究者たちは草の根運動でキャンペーンを続け、国や郡の政府との協力も取付けたそうです。
研究者は「狂犬病は100%予防できる病気です。狂犬病に命を脅かされる必要はありません。COVID-19と違ってワクチンがないとか、治療方法がわからないということがないのですから」と述べています。
アフリカでの狂犬病撲滅は野生動物の保護という観点からも重要なことです。リカオンなど野生のイヌ科動物は絶滅の危機に瀕しているからです。
日本での狂犬病ワクチン接種率
さて、ケニアとは対照的な日本での狂犬病への取り組みはどうでしょうか。
厚生労働省によると、現在日本の狂犬病予防注射実施率は犬の登録頭数に対して70%をやや超えています。かつてはほぼ100%であったのが3割も低下しているのは大きな問題ですが、予防注射実施率70%という数字は病気を撲滅するために必要なラインとされていることから最低ラインは保っているように見えます。
しかしペットフード協会が行った、登録頭数ではなく飼育頭数をベースにした調査によると予防注射実施率は約50%前後という驚きの低さになります。
日本には狂犬病はないという思い込みからの過度の安心感が、このようなワクチン接種率の低下を招いていると考えられますが、これは非常に恐ろしいことです。
すぐ近くの国の台湾では野生動物から飼い犬への狂犬病感染が起こり、被害が報告されています。日本にもかつてはいなかった外来生物が入って来ている現実、野生動物の狂犬病のチェックは実施していないことなどを考えると、狂犬病は決して日本に関係のない話ではありません。
もしも日本で狂犬病が発生した時、ワクチン接種の証明書を持っていない飼い犬は隔離措置などを受ける可能性もあります。殺処分などという極端な処置は考えにくいですが、公的な機関で一定機関ケージの中でのみ過ごすことは家庭犬にとっては大きな負担とストレスになるでしょう。
法律で定められている狂犬病のワクチン接種を受けさせないことは、大切な愛犬の命を危険に晒すことだと全ての飼い主さんに知っていただきたいですね。
まとめ
アフリカのケニアで、犬への狂犬病ワクチン接種を実施するプロジェクトに取り組んでいる研究者からの報告をご紹介しました。
ケニアからの報告を見ていると、せっかく恵まれた環境の日本にいるのに無駄にその機会を放棄して愛犬や周囲の人々を危険に晒している人々がいることに憤りを感じます。
《参考URL》
https://medicalxpress.com/news/2020-07-grassroots-dog-vaccinations-rabies.html
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/
http://nichiju.lin.gr.jp/mag/07204/a3.pdf
https://www.soumu.go.jp/main_content/000315373.pdf
ユーザーのコメント
50代以上 男性 もも父ちゃん
しかし体調が悪い時は時期を外して注射してもらいます 確かに日本には狂犬病の動物はいないと思いますが 愛犬の為ですね