熱中症になりやすい犬のタイプをリサーチ
地球温暖化の影響は毎年肌で感じられるほどに大きくなっており、特に夏の暑さはしばしば致命的なダメージを作り出しています。イギリスのノッティンガム・トレント大学の研究チームは、イギリスの犬の「暑さに関連する疾患の発生率」「暑さに関連する疾患からの死亡率」「暑さに対する犬の危険因子」をリサーチし、そのレポート結果を発表しました。
リサーチに使用されたデータはイギリスで2016年に動物病院で診察を受けた90万匹以上の犬の臨床記録です。これらの記録のうち、熱中症など暑さに関連する疾患での受診は395件でした。これは全体の0.04%に当たります。暑さに関連する疾患での死亡率は14.18%でした。
熱中症など暑さに関連する疾患のリスク要因とは?
研究者がサイエンティフィック・リポートに発表したところによると、一般的に最も熱中症のリスクが高いのは体重が50kgを超える犬と、パグやブルドッグなどの短頭種の犬です。
熱中症のリスクが高いと特定された上位9種は次の犬種でした。
- チャウチャウ
- ブルドッグ
- フレンチブルドッグ
- ボルドーマスチフ
- グレイハウンド
- キャバリアキングチャールズスパニエル
- パグ
- ゴールデンレトリーバー
- イングリッシュスプリンガースパニエル
やはり顔が平らな犬種が多く名を連ねています。短頭種の犬は頭蓋骨の形状のせいで呼吸に障害がある場合が多いこと、ハアハア言うパンティングで鼻腔内に空気を通し熱を逃がすという機能が鼻の短さのために低いことなどが熱中症のリスクを高めています。
リスク度が最も高いとされるチャウチャウは、ラブラドールと比較して熱中症になる可能性が約16倍だということです。
短頭種と対照的なグレイハウンドがリストに入っているのが意外な気がしますが、グレイハウンドは体脂肪が極端に少なく、コートもたいへん短いせいで熱の影響をダイレクトに受けるため暑さに弱い犬種です。さらに大型犬であるというリスクも加わります。
イタリアングレイハウンドは日本で人気の犬種ですが、体のサイズを除くリスク要因はグレイハウンドと共通するため、ご注意ください。ゴールデンレトリーバーとスプリンガースパニエルは、元来は涼しいはずの英国原産であることが関連しているのかもしれません。
他のリスク要因としては、体重過多または肥満、高齢が挙げられています。
全ての犬の飼い主が心しておきたいこと
愛犬が上記の犬種や、体重オーバー、高齢などに当てはまる場合には特に注意が必要であると、研究者は警告しています。またどんな犬であれ、日中の車内での放置、炎天下の散歩や運動など命に関わる状況に置いてはいけないのは言うまでもありません。
熱中症の兆候にはどのような症状があるのか、普段から知っておくことも大切です。犬が口を開けてハアハア息をするパンティングが普段よりも激しいと感じたら、涼しい場所に移動させて室温の水を飲ませます。
このようにしても犬の呼吸が15分以内に通常の状態に戻らない場合は、病院での受診が推薦されています。
熱中症の症状としては、過度のパンティング、嘔吐、過度のよだれ、下痢、運動失調、昏睡などがあり、これらが見られたら救急の処置が必要です。
病院に行く前に症状が落ち着いたように見えても脳や内臓にダメージを受けている可能性が高いので必ず病院で診察を受けましょう。
まとめ
犬の臨床データから熱中症のリスク要因をリサーチしたイギリスの研究者によるレポートをご紹介しました。日本よりも夏の気温が低いイギリスでさえ、犬にとって夏の暑さは大きな問題になっています。
温暖化の影響で夏の気温が極端な状態になって行くことで、暑さに関連する疾患は発生頻度と重症度の両方が高くなると言われており、ヒトが熱中症などで死亡する例は2050年までに現在の約3倍になると予測されているそうです。これはもちろん犬にも当てはまります。
愛犬の夏の暑さ対策は毎年繰り返し呼びかけられていますが、改めて気持ちを引き締めて行くことが大切です。
《参考URL》
https://www.nature.com/articles/s41598-020-66015-8