犬のてんかん発作予測の可能性をリサーチ
癲癇(てんかん)は犬の神経疾患の中では最も一般的なものです。およそ100匹に1匹くらいの割合で発生すると推定されています。てんかんは慢性的な疾患で、てんかん発作が繰り返し起こります。発作が起こる前に普段とは違う様子を見せる「前兆」が見られることもよくあります。
この度イギリスの王立獣医科大学の研究者を中心としてドイツ、アメリカの研究者チームが、てんかんと診断された犬の飼い主へのアンケート調査から、犬のてんかん発作の予測の可能性をリサーチし、その結果が発表されました。
飼い主へのアンケート調査から分かること
リサーチはてんかんと診断された複数の国の犬の飼い主229名を対象としたオンラインアンケートを実施することからスタートしました。
アンケートの結果では回答者の65%が、犬が発作を起こす前に何らかの変化を示すと答えています。発作前の変化として一般的だった回答には次のようなものがありました。
- 甘えたり、くっついたりする行動の増加 25.4%
- 落ち着きのない行動 23.1%
- 何かを怖がる 19.4%
回答者の43%は発作を誘発するトリガーがあると報告しています。トリガーとして最も多かった回答はストレスで39.1%でした。他には、食べ物、興奮、騒音、洗剤や芳香剤、ノミダニ駆虫薬、ワクチン接種など、トリガーとなるものは多岐に渡りました。
回答者の60%は「発作前の犬の様子の変化とトリガーの認識を組み合わせることで愛犬の発作を予測できる」と考えています。この60%の回答者のうち約半分の人々は、発作の30分以上前に予測ができると答えたそうです。
リサーチ結果は将来のてんかん研究のために
これらの結果を受けて研究者は、てんかんを患っている犬の飼い主が発作だけに目を配るのではなく、犬の行動の変化や潜在的な発作の引き金となる物事への曝露を記録し、発作のパターンを把握することがいかに重要であるかと述べています。
今後さらに客観的なデータを収集し、てんかん発作の予測管理に利用するため、王立獣医科大学ではペットのてんかんアプリを開発しています。飼い主はこのアプリを使って犬の発作や行動変化などの記録をつけることができ、アプリに入力したデータは獣医師や大学と共有し研究に利用されます。
飼い主が報告した発作前の行動の変化と発作のトリガーを組み合わせて利用することで、犬のてんかん発作予測を支援する可能性があると研究者は考えています。
まとめ
てんかんと診断された犬の飼い主の多くがてんかん発作の前の犬の行動の変化と、何が発作を引き起こすトリガーになり得るかを把握しており、半数以上の飼い主が犬のてんかん発作を予測できると考えているというリサーチ結果をご紹介しました。
犬のてんかん発作を予測できれば、犬の周辺環境の準備を整えて安全性を高めることができます。少しでも犬と飼い主さんの負担が少なくなるような研究に期待したいですね。
《参考URL》
https://veterinaryrecord.bmj.com/content/early/2020/05/21/vr.105307
https://www.vetsurgeon.org/news/b/veterinary-news/posts/new-study-may-help-dog-owners-predict-seizures