生活の中で影響を受けている化学物質の研究を犬が助ける?
私たちは毎日の生活の中で様々な環境化学物質に曝されています。それらが長期的に健康にどのような影響を与えるかリサーチすることは重要です。
アメリカのノースカロライナ州立大学とデューク大学の研究者が、毎日の化学物質への曝露に関する情報を収集するのに犬が重要な役割を果たしてくれるという研究結果を発表しました。
家庭で飼われている犬は人間と同じ環境で暮らしているため環境化学物質に対しても人間とほぼ同じように曝露しており、化学物質が健康に与える長期的影響を調査する時の指標になると言うのです。
犬も人間もシリコンのモニターデバイスを着用
環境化学物質の影響を調べるのに犬が役立ってくれるとは具体的にどのようなことをするのでしょうか?
犬がすることはとても簡単、カラーにシリコン製のタグを付けるだけです。そして犬と一緒に暮らしている人間も手首にシリコン製のリストバンドを付けます。実験の参加者がすることはたったこれだけです。研究者は30匹の犬とその飼い主に2018年7月の5日間、そのシリコン製のタグとリストバンドを着用するよう依頼しました。
シリコンという物質の表面は生き物の細胞とよく似た構造になっており、生活の中で曝露した化学物質を吸着するのだそうです。5日間着用したシリコン製のモニターを分析することで、それを付けていた被験者がどのような化学物質の影響を受けているかがわかるということです。
犬と人間の曝露結果を比較してわかること
犬と人間が5日間着用していたタグとリストバンドを回収し、人の血液と尿によく見られる化学物質への曝露を分析しました。その化学物質とは、農薬、プラスチック製品や繊維などの素材に添加して燃えにくくするための難燃剤、プラスチックのパッケージなどに含まれるフタル酸エステルです。
研究チームは飼い主と犬の曝露レベルに高い相関関係があることを発見しました。つまり飼い主と犬は同様の生活の中で同じ種類の化学物質に同じように曝されていたということです。
しかし同じ種類の化学物質に曝されていても、健康への影響は人と犬が同じ時期に出てくるわけではありません。人間では数十年かかって健康への影響が現れて来ることに対して、犬ならば1〜2年で発生する可能性があります。
犬の病気と時間の経過に伴う曝露を相関させる方法を開発すると、人間に換算するとどのくらいの年月で健康に影響が出るかを推測したり、化学物質への曝露そのものを軽減できる可能性があるということです。
まとめ
犬と人間の両方が、生活環境の中でどのくらいの化学物質に曝されているかをシリコン製乗るツールで測定し分析したという研究をご紹介しました。
人間よりもライフサイクルが短い犬は、人間よりもずっと短いスパンで化学物質の影響が出て来るため、犬の測定をすることで人間ではいつ頃このような物質の影響が出始めるのかを推測できるとのことです。
犬と人間は運命共同体なのだということを改めて感じさせる研究ですね。
《参考URL》
https://news.ncsu.edu/2020/06/dog-environmental-sentinel/
https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acs.est.9b06605