犬の突然の反抗期についてのリサーチ
生後2〜3ヶ月の頃から子犬を飼い始めた場合、ある時点で犬が突然言うことを聞かなくなり、それまで出来ていた「おすわり」「おいで」などの合図を無視するようになるという経験は多くの人が口にしています。
このたびスコットランドのエディンバラ大学獣医学部の研究チームによって、人間のティーンエイジャーの反抗期と同じように、犬も子犬と成犬の中間くらいの時期に飼い主に対して反抗的になることが記録され発表されました。このリサーチは、以前から言われていた「犬の反抗期」が本当にあるのだということが、正式に発表された初めてのものです。
犬の「10代」に相当する時期の反抗的な態度を記録
人間が15〜6歳の子供でも大人でもないという頃、些細なことでイライラしたり親に対して反抗的な態度を取ることは、自分自身が経験したという人、自分の子供のそういう態度に苦労しているという人の多くが知っています。犬で言えば、この時期は生後8ヶ月齢の頃が相当します。
研究チームは93匹のラブラドール、ゴールデンレトリーバー、この2犬種のミックスを、生後5ヶ月齢の時点と8ヶ月齢の時点で観察して、その行動を記録しました。
8ヶ月齢の犬は5ヶ月齢の時よりも「おすわり」などの合図への応答が遅く消極的でした。けれど同じ合図を犬にとって知らない人が出した場合、反応は5ヶ月齢の時と同じように素早く従順に応じました。
研究者チームはさらに、285匹のラブラドール、ゴールデンレトリーバー、ジャーマンシェパードおよびそれらのミックスの犬を対象にして飼い主とドッグトレーナーへのアンケート調査を行いデータを収集しました。
犬が5ヶ月齢、8ヶ月齢、12ヶ月齢の時点での従順性や合図への応答の速さについての質問に回答してもらうというものです。
ここでもやはり8ヶ月齢の犬は5ヶ月齢または12ヶ月齢に比べて従順性が低く、合図への応答が遅くなったと報告されました。しかし同じ犬についてドッグトレーナーが評価した場合は、8ヶ月齢では5ヶ月齢の時よりも合図に素早く反応し従順だったということです。
人間のティーンエイジャーに相当する8ヶ月齢の犬は、保護者に対して反抗的になるが、あまりよく知らないよその人に対してはそのような態度を示さず従順に行動するということがデータとして記録された形です。
ティーンエイジャーの犬の保護者が知っておかなくてはいけないこと
犬の「反抗期」は人間の10代の反抗期と同じく、ホルモンの変化とそれに対して脳の活動パターンも変化することへの調整期間で、生き物として必要な期間でもあります。
そしてこの難しい時期は永遠に続くわけではなく、犬がもう少し大人になれば落ち着いていくものです。犬の飼い主はこの2点をしっかりと知っておく必要があります。なぜなら8ヶ月齢は飼い主が「手に余る」として犬を手放すピークの1つだからです。
この時期の対応が、以降の保護者との関係にとって重要であることも人間と同じです。犬が従順でなかったことに対して罰を与えることは、問題行動を悪化させる可能性が高くなります。この時期の犬には、飼い主が行動に一貫性を保ち、報酬ベースのトレーニングで良い行動を強化していくことが大切だと、研究の主導者である動物行動学者は述べています。
8ヶ月齢という人間の10代に当たる時期の犬は、飼い主を困らせるためにわざと悪い行動をしているのではなく、生物としてのサイクルの中にいるだけであると理解しなくてはいけません。
このことを犬を飼い始めたばかりの人、これから犬を飼おうと思っている人が広く一般的に知るようになれば、1歳未満で飼育放棄される犬を減らすことにもつながります。
まとめ
人間の10代に相当する犬の8ヶ月齢は、ホルモンや脳の活動の変化のせいで人間と同じく犬も「反抗期」を迎えるというリサーチ結果をご紹介しました。このようなリサーチが発表されることで、犬の反抗期は生物として自然なことで、時期が過ぎれば落ち着くということが広く知られるようになって欲しいと思います。
そして反抗的なティーンエイジャーに一方的に罰を与えるだけでは、関係は悪化し将来の問題行動の可能性を高くするという点も人間の親子関係に通じるようです。
もし今まさに愛犬の突然の反抗期に悩んでいる人がいたら、このリサーチ結果を知ることで気持ちが楽になるかと思います。愛犬の大切な成長段階の1つとして愛情を持って受け入れることが大切ですね。
《参考URL》
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsbl.2020.0097