犬は人間に手を貸してくれるだろうか
盲導犬や牧羊犬などの働く犬たちは様々な形で人間のお手伝いをしてくれています。けれど彼らはそれぞれに特別なトレーニングを受けた、言わばプロフェッショナルの犬たちです。
そのようなトレーニングを受けたことのない犬たちが、人間が何か困っているのを目にした時に自発的に手を貸してくれるかどうか(正確には前足を?いや、口を貸してくれる、でしょうか)実験をしてその結果が検証されました。
この研究を行ったのはオランダのアムステルダム大学の心理学者の研究チームです。
一般的な家庭犬でも飼い主などよく知っている人間のジェスチャーを読んでコミュニケーションを取るのが得意ですが、例えば人間が落とした物を拾いたい時に助けを求める要求を理解するかどうかは不明です。ちなみにチンパンジーはこのような人間の要求を理解して応えることができるそうです。
犬の自発的な支援を観察するための実験
実験に参加したのは51匹の家庭犬で、年齢は1歳〜14歳、犬種はミックスも含めて様々でした。
人間が落とした物体を自発的に拾ってくれた犬とそうでなかった犬の違いを分析するために、犬たちの性格はあらかじめ定型質問を使って飼い主からの評価測定が行われています。また犬たちの行動も継続的に観察してスコアが付けられています。
実験の中で物体が落ちた状態にはいくつかの異なるパターンが用意されました。
- 物体がアクシデント的に「偶然」床に落ちた
- 犬がよく知っている人間(飼い主)が物体をわざと床に落とした
- 犬が知らない人間が物体をわざと床に落とした
人間は落ちた物体に手が届かず助けを求めているという状況を犬に見せて反応を観察するというものです。
実験の結果は?
気になる実験の結果はどのようなものだったのでしょうか。
実験は51匹の犬全体で510件試行されて、そのうちの26件で犬が人間を助ける行動が観察されました。支援行動を示した犬は51匹中6匹でした。
この6匹の行動を観察すると、物体をわざと落としたときよりもアクシデント的に落ちた時の方が、支援する行動が多く見られました。落とした人間が飼い主であるか、知らない人間であるかによる犬の行動の違いは観察されませんでした。
人間を支援する行動をした6匹の性格特性については、他の犬との顕著な違いは認められませんでした。6匹の犬種はオーストラリアンシェパード、ベルジアンシェパード、ラブラドール、ポデンゴ(地中海地方のサイトハウンド)2匹のミックス犬とバラバラでした。サンプル数が少ないので犬種特性によるものかどうかはわかりません。
支援しなかった大多数の犬たちは実験の目的や支援する方法を理解していないようでした。
この実験の結果からは、大多数の犬は自発的に支援行動をしないことが示されていますが、個体差、犬種差、実験方法、犬の過去の経験などを考慮して今後さらにリサーチすると述べられています。
まとめ
特別な訓練を受けていない犬が、自発的に人間を手助けするかどうかの実験と考察をご紹介しました。
この結果だけで犬が自発的な支援行動をしないともするとも結論づけることはできませんが、個人的には「訓練をすれば驚くほど人間を助けてくれる犬たちが存在し、大多数の犬は特別なことはできなくてもただ人間に寄り添ってくれる、それだけで十分」だと感じます。
皆さんはどのように思われますか。
《参考URL》
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0168159120300162#!
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20代 男性 匿名