犬の攻撃性を左右する要素とは?
犬の望ましくない行動の中でも、とりわけ望まれないものは攻撃的な行動ではないでしょうか。もちろん犬が攻撃性を見せる場合、大抵は犬にとっては理由があります。しかし、その理由は人間が考える基準とは違っていたり、予想外のことであったりすることも少なくありません。
また、同じ状況でも攻撃性を見せる犬と見せない犬がいます。犬の攻撃性を型作るものが何であるのかを知ることは、犬が攻撃的になることを防ぐ意味でも大切です。スロヴェニアのリュブリャナ大学の動物科学の研究者が、犬と飼い主の両方の性格と犬の攻撃性との関連性、犬と人間の感情的な結びつきの度合いが、犬の攻撃性にどのような影響があるかという研究を発表しました。
犬の攻撃性と、飼い主の性格や関係性との関連を調査
犬の性格と攻撃性、飼い主の性格及び犬と飼い主の感情的なつながりが犬の攻撃性に及ぼす影響を調べるリサーチは、飼い主へのアンケートと行動テストの2つを組み合わせて行われました。
リサーチに参加したのは犬と飼い主のペア40組です。飼い主への事前の聞き取り調査で犬の攻撃履歴のデータが集められ、犬たちは3つのカテゴリーに分類されました。
- 攻撃の履歴のない犬 14匹
- 人間に対する攻撃の履歴がある犬 13匹
- 犬または他の動物への攻撃の履歴がある犬 13匹
犬の性格や行動については飼い主が回答するC-BARQテスト(犬の行動解析システム)と、見知らぬ人や見慣れない物体への反応を見る行動テストによって評価されました。飼い主の性格や犬と飼い主の感情的なつながり(愛着スタイル)については、飼い主へのアンケート調査によって分析されました。
飼い主として考えさせられるリサーチ結果
犬の性格で、犬の攻撃性で分類した3つのグループ間で違っていたのは社会性でした。攻撃の履歴のない犬たちは他の2つのグループの犬たちよりも社会性のスコアが高かったことがわかりました。これは従来から言われている犬の社会化の重要性とも一致しますので、予想できる結果です。
飼い主の性格では「神経質な傾向」が3つのグループ間で違っていたものでした。攻撃の履歴のある犬の飼い主は、そうでない飼い主よりも「神経質な傾向」のスコアが高かったそうです。
さらに犬の攻撃的行動に強く関連していたのは、犬と飼い主の感情的なつながり(愛着スタイル)でした。愛着スタイルは「安定型」と「不安定型」に分けられます。さらに「不安定型」には「不安型(不安のため過剰につながろうとする)」「回避型(親密なつながりを避ける)」が有ります。
見知らぬ人に攻撃的な犬の飼い主は不安型愛着スタイルのスコアが、飼い主に対して攻撃的な犬の飼い主は回避型愛着スタイルのスコアが高くなっていました。つまり、飼い主の神経質な傾向や、犬と飼い主の感情的なつながりが不安定である場合、犬の攻撃性に関連していたということです。大変興味深く、飼い主として犬との関係性を改めて考えさせられるような結果ですね。
まとめ
犬の攻撃的な行動と、犬自身の性格、飼い主の性格、犬と飼い主の感情的なつながりに関連が見いだされたという研究の結果をご紹介しました。飼い主の神経質な傾向が強い場合、飼い主が犬との感情的なつながりに不安があったり、犬との感情的なつながりを回避したりしようとする場合、犬の攻撃的な行動に関連していたということです。
もちろん、ここで挙げた要素が犬の攻撃性の要因の全てではありません。しかし、犬の行動の潜在的な危険を検出する助けになる可能性があります。犬との暮らしは精神の修行のような面があるなあと常々感じているのですが、この研究の結果からも「やっぱり修行だなあ」と改めて思いました。
《参考URL》
https://www.mdpi.com/2076-2615/10/2/315/htm