柑橘類の致命的な被害を解決するための研究
ミカンやオレンジなどの柑橘類の農作物を襲うカンキツグリーニング病(緑化病)と呼ばれる細菌性の病気があります。この細菌に感染すると葉や枝が変形し、果実は小さく緑色のままで苦くなり商品として全く価値がなくなります。木は最終的に枯死します。今のところ病気から回復させる方法はなく、世界中の柑橘類農家で恐れられている致命的な病気です。対策は病気のある木をできるだけ早く排除して広がりを防ぐことで、細菌の早期発見が非常に重要です。
米国農務省の省内研究機関である農業リサーチサービスは、グリーニング病の早期発見の効果的な方法を研究しており、このたび最も効率的であるとされる方法が論文として発表されました。その方法とは、特別に訓練された犬を使うことでした。
非常に高い精度で病原体を検出する犬たち
グリーニング病を発見するための従来の方法は、人間が目で見て評価するという効率が悪い上に精度の低いものか、農作物をサンプリングして研究室でDNAベースのテストをするという時間も費用も人的資源もコストのかさむものという両極端な状態でした。そして、どちらもあまり効果的とは言えません。
この問題を一気に解決したのは、探知犬を使うという方法でした。研究者はベルジアンマリノア、ジャーマンシェパード、この2犬種のハイブリッド、スプリンガースパニエルの19匹の犬の訓練を始めました。
犬たちの訓練は爆発物探知とよく似た方法で行われました。特定の臭気を認識し、その臭気のソースを発見するとその隣に座るように教えられます。成功すると報酬としておもちゃで遊ぶ時間が与えられます。
実際に探知を始めると、犬たちの能力は素晴らしいものでした。950〜1000本の木を探知したうち間違ったのは4〜15回。しかしそれらのケースは、病原体の付いていない木に対して「付いている」というジェスチャーを示したのですが、すぐ前の回のテストで使われた病原体の付いた木の匂いが残っていたせいであることが分かっています。
つまり、犬たちはカンキツグリーニング病の病原体を99%以上の精度で検出することができたのでした。さらに、犬たちは他の様々な柑橘類の細菌、ウイルス、真菌、スピロプラズマなどと区別することまでできました。
探知犬が柑橘産業を救う
現在、探知犬たちはカリフォルニア州とフロリダ州で9か月間任務に就いています。アメリカの柑橘産業に対する最大の経済的脅威である、カンキツグリーニング病の問題に対処するために探知犬を使うモデルを実行すると、今後10年間に渡って柑橘産業が経済的に持続可能であると研究者は述べています。
犬たちにとっても、爆農場の広い環境で働くことは空港などで爆発物を探すよりも心身ともに負担が少ないことは喜ばしいですね。米国農務省の科学者が正式に論文として発表したことで、カンキツグリーニング病探知犬は正式に認可される可能性が高く、今後需要が増えることは間違いありません。日本のミカン畑でも、探知犬の姿が見られるようになるかもしれません。
まとめ
アメリカの農務省が、柑橘類の致命的な病気カンキツグリーニング病の病原体を探知するのに、犬を使うことの成果について研究結果を発表したというニュースをご紹介しました。
私たち人間は本当に多岐に渡る方法で犬たちに助けてもらっています。農業分野での犬の活躍はまだ発展途上ですが、犬にも人にもwin-winの例が多い分野の研究には、今後さらに期待したいと思います。
《参考URL》
https://www.ars.usda.gov/news-events/news/research-news/2020/trained-dogs-are-the-most-efficient-way-to-hunt-citrus-industrys-biggest-threat/
https://www.pnas.org/content/early/2020/01/28/1914296117